マレーシアの外国人労働者事情

2016年2月と3月は、マレーシアの外国人労働者に関して大きな動きがあり、それをプレゼンテーション形式でまとめてみました。特に、連邦政府の決定は二転三転し、労働者市場が混乱する事態になっています。最終決定が発表された後も会社経営陣から不満が出ており、更なる見直しが行われることも予想されます。



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楽天マレーシア、マーケットプレイスを閉鎖

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3月1日、楽天マレーシアのショッピングポータルサイトが閉鎖となった。2012年11月に開設してから3年4ヶ月という短い期間で、マレーシアでの事業にピリオドが打たれた。



私自身、楽天マレーシアに商品を出店するために申し込みをしたことがあるが、ポータルサイト上に価格体系が開示されていないし、出店申し込みはメールか電話のみの対応など、現地の競合企業に比べて煩わしいという印象があった。確か、出店費用も現地の他のサイトよりもかなり割高だった記憶が。また、ショッピングポータルサイトのデザインも日本国内ほど洗練されておらず、使い勝手が良いとは言い難かった。その結果か出店企業数はかなり少なく、ショッピングサイトとしてはかなり物足りなさを感じた。

マレーシア人消費者は所得水準の上昇から購買意欲が高く、高齢者もスマートフォンを使いこなす環境にあり、オンラインショッピングの需要は高まると期待されている。携帯電話の所有率は145%と高く、早い時期から航空券やホテル予約をオンラインで利用していたため、ショッピングサイトの利用に対してもあまり抵抗がない。Alexaが発表しているマレーシアのアクセスランキングの上位50サイトを見ても、多くのオンラインショッピングサイトがランクインしている状況が分かる。

11. Lazada.com.my
12. Mudah.com
14. Amazon.com(米国)
26. Lelong.com.my
32. Alibaba.com(中国)
37. Taobao.com(中国)
37. 11street.my(韓国)

とは言え、マレーシア国内のショッピングポータルサイトが優れているかと問われると、決してそうでもない。マレーシアで絶対的人気を誇っているのがmudahだが、ここは食品や日用品から自動車、不動産まで幅広く扱っており、第一印象はカオスのような状況。ポータルサイトの操作性やデザインも洗練されているとは言い難い。しかし、取り扱い商品が多く、価格も比較的安いものが揃っていることから、長期にわたって人気を誇っている。また、最近はLazadaの人気も高く、アクセス数ではmudahと競り合っている状況が続いている。

また、楽天のように海外のオンラインショッピングサイトが同じ土俵で競うことができないのかというと、ランキングを見るとそうでもないと言える。例えば中国のオンラインショッピングサイト『陶宝』はマレーシアでも絶大な人気を誇っている。個人での利用も多いが、私の知人はビジネスとして陶宝の商品を大量に購入し、マレーシア国内で販売する事業を行っている。また、ファッションに特化した韓国発の11street.myやシンガポール発のzalora.com.myもアクセスを伸ばしてきている。多民族国家だけあって、中国や米国のサイトが上位に入っているのもマレーシアらしいところだろう。

さらに、こうした上位にランクインしているサイトはfacebookなどのソーシャルメディアにおいて頻繁に広告を目にすることができるのが特徴と言える。残念ながら、マレーシア国内で楽天の知名度はかなり低く、広告などでのブランディング展開が不十分だったと思われる。私の周りのオンラインショッピング利用者に聞いても、楽天という企業名はほぼ知られていない。

私個人の見解としては、マレーシアのオンラインショッピングサイトはまだ発展途上にあり、日本のサービスが入り込む余地はかなりあると考える。例えば美容院やフェイシャルといった美容業界では、マレー系、中国系、そしてインド系全てにおいて人気が高い。料金も決して安くないが、予約はいまだ電話での受付が主流となっている。しかし、電話を掛けても誰も取らないことがよくあり、利用者の不満となったりしている。ウェブページを持っているところも少ない。だから、ホットペッパービューティーのような予約システムを連動したポータルサイトであれば、マレーシア国内でも需要が期待できるだろう。あと一般的なマレーシア人、中でも中国系は価格に対してかなり敏感であることから、商品価格を比較したしたサイトとして価格.comは面白そうだと思う。競合としては、SmartShopper Malaysiaという会社があるが、商品数が少なく、コンテンツそのものもかなり貧者なので、後発としても十分に需要を喚起できるだろう。

今回、楽天マレーシアがショッピングポータルサイトを閉鎖することになったが、うまくローカライズできれば日本企業にも新規参入の余地はあると思う。楽天にしても、無理して現地法人を設立せずにRakuten Global Marketの知名度を高め、事業内容を差別化できれば、まだ面白いことになるように感じる。事実、マレーシア人の知人からは日本でしか買えない健康食品や健康グッズ、アクセサリー、ファッション関連を買ってきて欲しいといつも帰国の度に要望されるし、私自身も楽天で調達しており、日本からの商品に対する人気はまだ衰えていない。

マハティール元首相、ナジブ首相への対決姿勢強める

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ここ数日、マレーシアの政局が大きく動いている。まず、2月26日に開催された統一マレー国民組織(UMNO)の最高評議会は、元副首相で党副代表であるムヒディン氏を職務停止とすることを全会一致で決定。この決定を受けて、2月29日にマハティール元首相が「いまのUMNOはナジブ党であってUMNOと呼ぶことはできない」として離党することを発表。そして3月4日、マハティール元首相は野党指導者や幹部と会談、ナジブ退陣で共闘するとした『国民宣言』に署名するに至っている。会談には、野党党首の他にもムヒディン元副首相やケダ州首相を辞任させられたムクリズ・マハティール氏のも出席。更に、政敵であるアンワル氏も「マハティール氏を含む人々の立場を支持する」と表明。今月27日(日曜日)にはナジブ首相退陣を訴える大規模な集会が計画されており、大きな変化が起ころうとしている。これに対し、ナジブ政権は反政府的な集会として抑え込みを図るだろうが、国民は既に現政権を見限っている状況にある。



一昔であれば、こうした政府関係者の不正資金疑惑は情報統制することでもみ消すことが可能であっただろう。実際、ナジブ首相は不正資金に関する証拠を掴んだとしていたサラワクレポートへのアクセスを遮断し、1MDB関連の報道を繰り返したThe Edgeを3ヶ月の発行停止処分に、そして最近では疑惑に関して十分な証拠を得たとしたマレーシアン・インサイダーが一般からクレームが入ったとしてMCMCからアクセス不能とされている。ソーシャルメディアでは、政府や首相を批判する内容の投稿を行ったことで告発されるユーザーもいるらしい。司法においても司法長官が突如交代、そして指名されたアパンディ司法長官はナジブ首相の個人口座に振り込まれたUS$6.81億はサウジアラビア王室からの合法的な寄付であり、不適切なことは何もないとして捜査終結を宣言、事態を強制終了させようとしている。しかし、いまは野党支持が拡大しており、ソーシャルメディアによって情報が一気に拡散する時代にあって、この情報統制はナジブ首相にとって不利に働いている。





マレーシアは2020年までに高所得国家となることを目指しているが、政治絡みになるとやはりまだ発展途上国なのだろうか?国民の間でも、ナジブ首相の不正資金疑惑解明が最大の関心ごとであり、政府発表には不信感を抱いている。昨年の独立記念日前にマレーシアン・インサイダーが行った世論調査でも、国家に望むことは『政権交代(67%)』であり、解決すべき問題は『ナジブ首相の1MDB疑惑(33%)』との結果が出ている。また、こういった時にこそ、ムルデカセンターが行っている世論調査でナジブ首相支持率を見たいのだが、1MDB問題以降はデータが発表されておらず、こちらも現政権の影響が及んでいるように感じられる。

[国家に対し望むことは?]
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[独立記念日を前に解決するべき問題は?]
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政策面では、ナジブ首相は国内の汚職・不正対策を強化する方向で動いていた。2009年1月には独立性の高いマレーシア汚職防止委員会(Malaysia Anti-Corrouption Commission)が設立され、汚職や賄賂に関して毅然な態度をアピール。政府関係者や政府系企業企業の賄賂や不正などを厳しく取り締まり、大きな案件としてはクラン港を巡る不正請求で存在感を示していた。しかし、その委員会もナジブ首相の影響下にあり、今回の1MDB問題ではナジブ首相寄りの決定を下している。

この状況を見ていると、フィリピンのマルコス政権が思い起こされる。絶対権力である指導者とその影響力を駆使して贅沢を尽くしていた夫人という構図だが、ナジブ首相の最近の強権発動はそれに近いように感じる。反ナジブ政権のデモは違法として、親ナジブ政権のデモは合法扱いされるなど、公平性に欠ける対応が見られる。また、ロスマ首相夫人の贅沢な買い物に対しても国民から度々批判されており、今後更に問題視されるだろう。

ただ、今の反ナジブ政権を牽引しているのは90歳という高齢のマハティール元首相であり、もし倒れてしまうとたちまち求心力を失う状況にある。ムヒディン元副首相はマレー人から信頼があるようだが、中国系からの人気はほとんどなく、マハティール氏に代わる人物がいないと言える。国民も1MDB関連の解決には最大の関心を払っているが、これまで政府が強権を振るってきた事から、次回総選挙までは諦めのムードもある。

財政健全化のため、政府は砂糖の補助金撤廃でRM4.5億、高速道路賠償金回避でRM5.6億、燃料補助金撤廃で年間RM210億という負担減を成し遂げ、それと同時に国民に負担を強いてきた。対して、ナジブ首相の個人口座に振り込まれたUS$10億超(約RM40億)、そして1MDBの借入金RM273億の使途不明金は、2016年の予算規模がRM2,672億のマレーシアにとっても決して小さな額ではない。何より、こうした疑惑が急激なリンギ安の引き金の一つとなり、いまもマレーシアへの直接投資減など経済全体に影響を及ぼしている。

今年も、1MDB関連が国内の主要問題としてクローズアップされるのは間違いなさそうであり、マレーシアが高所得国家として相応しい対応を示すことができるか注目される。

マレーシア政府 、バングラデシュからの労働者受け入れを凍結

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2月8日、マレーシア政府は今後3年間で150万人の外国人労働者をバングラデシュから受け入れる計画であると発表。そして18日、両国政府はMoUを締結。これが実現すると、外国人労働者の総人口が800万人(不法労働者含む)に達し、中国系マレーシア人の人口を上回ることになる。総人口3,100万人の国家にあって、外国人労働者が800万人という数字はかなり多い。ただ、国内の反発が予想以上に高かったためか、その後、政府は全ての外国人労働者の受け入れを凍結すると発表している。







マレーシアの労働市場を見ると、工場や建設現場、プランテーション、メイド、清掃といった仕事で外国人労働者が多く登用されている。国内の市庁舎においても、街や道路の清掃には外国人労働者を採用しているところが多い。私が住むAmpang地区においても、清掃業務を担っているのは外国人労働者で、ごみを散らかすのがマレーシア人となっている。2014年の政府の発表では、正規の外国人労働者が約200万人、不法の外国人労働者が約450万人、合わせると650万人にも達し、ある意味マレーシア経済の根底を支えている存在になっている。また、マレーシア人労働者もこうした仕事を3D労働(Dirty、Dangerous、Difficultの意味で、日本の3Kに該当)として敬遠している傾向にあり、特に若い世代になればなるほど、こうした3K労働の仕事が敬遠されている。

[業種別外国人労働者数(2013年9月末)]
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[国籍別外国人労働者数(2013年9月末)]
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日本では、こうした3K労働も国内の日本人が担っていることから、質の高いサービスを提供でき、各々がプロフェッショナルとしての専門性を持ち、どのような分野でもイノベーションを起こすことができている。私自身、日本では工場勤務で技術開発を行っていたが、毎日作業着でメッキ作業や機械調整、カーボン粉末が舞う中での組み立て作業を行ってきた。しかし、そこで働く社員は日々の業務改善などを通じて、作業効率や品質、安全性を向上させていた。どんな単純作業でもそうしたことは可能であり、国の技術力の発展や労働生産性の向上に寄与していると思うし、それが日本の強みにもなっているだろう。

また、私の周りのマレーシア人の友人に話を聞くと、職選びのポイントは何をするかではなく、給与はいくらかといったことに重点を置いている人が比較的多いように感じられる。だから、他にもっと良い給与の仕事を見つけるとすぐに転職してしまう傾向にあるし、転職は給与アップの機会にもなっている。その結果、マレーシア国内は転職が多い状況に陥ってしまうのだろう。ただ、給与が高くとも工場勤務は嫌だという声も多く、3D関連の仕事は選択肢としてはかなり下位になっている。

マレーシアは2020年までに高所得国家となる事を目指しており、そのためにETPやGTPと呼ばれる政策を導入、知識労働へ重きを置こうとしている。最近では、最低賃金制度の導入、外国人労働者の登録徹底といった政策が出された事から、一般にはマレーシア政府は国内の雇用機会のほとんどをマレーシア人に割り当てようとしているように思われていた。しかし、今回のバングラデシュ人労働者150万人受け入れの発表により、その方向性があやふやになってきている。

一般的に外国人労働者を雇用するのは、国内労働者を知識労働のようなより高レベルの仕事に集中させることで労働生産性を高めること目的としており、マレーシア政府の狙いもそこにある。しかし、雇用する側のマレーシア人の狙いは、ただやりたくない仕事を外国人労働者に託す、或いは就労したがるマレーシア人労働者がいない、コスト競争力維持のために低賃金の外国人労働者を雇用しているなどの理由となっている。実際、私自身もエビ養殖業を営んでいるが、2つめの理由から労働者は全て外国人労働者に依存している。そのため、外国人労働者がいないとエビ養殖実務に携わる労働者を見つけることはほぼ不可能となる。同じような環境下にある産業は多数あり、外国人労働者がいなくなるとマレーシア経済は立ち行かなくなるだろう。マクロ的に見ても、マレーシアの失業率は長期にわたって3%前後で推移していることからほぼ完全雇用の状況にあり、3D労働では外国人労働者を受け入れなければならないほど労働者不足が深刻なのかもしれない。

[マレーシアの失業率推移]
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それでも、マレーシア労働組合会議の事務局長は3D労働に対して適切な賃金を払えば、若者を呼び込むことができるとしている。実際、30万人ものマレーシア人がシンガポールで3Dの職に就いているらしい。ただ、私が若い層に話を聞くと、彼らのマインドは3D労働に向いていないようにも感じる。たぶん、小さい時から3Dの仕事は外国人労働者のやることであり、自分たちは彼らよりも上の存在であると意識しているようにも思える。



とはいえ、今のマレーシアの外国人労働者への依存は労働生産性の停滞、犯罪の増加などを助長しているだろう。さらに、違法労働者は警察官や役人の汚職・賄賂の温床となっている話も聞くし、人身売買も大きな問題として国際的にクローズアップされている。外国人労働者によって国内の労働者不足を補い、自国民は質の高い仕事に就くことが理想だが、バランスを取ることはなかなか難しいだろう。

あと最近のマレーシア政府の発表見ていて気づくのが、今回のバングラデシュ労働者受け入れや外国人労働者の人頭税引き上げなどのように、突如政策を発表して結果として業界団体や国民の反発から凍結や中止に至る事態が目立つ。よく言えば、柔軟性に富んでいると表現できるのだろうが、こうも続くと本当に国会で真剣に政策が審議されているのかと疑問を感じざるを得ない。

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