国民車メーカーのプロトン、スズキと提携

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6月15日、国民車メーカーのプロトンはスズキとの提携を発表、スズキがエンジンやトランスミッションなどの主要部品を供給し、来年夏頃にはCKDでの完成車もリリースする予定とのこと。プロトンからは同社会長のマハティール元首相が調印に出席、マレーシア国内でも驚きをもって伝えられている。

プロトンニュースリリース:『PROTON, DRB-HICOM AND SUZUKI INKED STRATEGIC PARTNERSHIP COLLABORATION』
スズキニュースリリース:『スズキ、マレーシアのプロトン社と協業』




2007年に企業再建に向けたフォルクスワーゲンとの提携が不調に終了した後、プロトンは日系企業との提携に舵を取ってきた。2008年12月には、三菱自動車との間で新車の開発・生産に関する契約を締結し、三菱ランサーをベースとするインスピラを、また2012年10月にはホンダと技術開発や新製品で協力する機会を探る契約を締結し、ホンダアコードをベースとするペルダナを連邦政府向けに販売している。

ただ、市場からは日本メーカーの既存車種のエンブレムを変えただけであり、そんなことに巨額の開発費が必要なのかといった批判もされている。プロトンは、マレーシアの環境に適した仕様へ変更するなど、決してエンブレムを変えただけではないとしているが、こうした新車リリースに対する評判は芳しくない。

また、こうした日系メーカーとの提携後も販売台数は伸び悩んでおり、今年4月には販売台数でホンダとトヨタを下回る結果に。店頭ではかなりの値引きを行うなどのプロモーションを展開しているが、それでも販売が不調なのはやはり魅力的な車種がないということだろうか。プロトンを乗っている人に話を聞いても、おおむね価格が他メーカーより安いことが購入の意思決定要因となっている。

[マレーシアの自動車販売台数(2015年4月)]
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スズキにおいては、軽自動車で日本市場やインド市場で強く、欧州ではスイフトが根付い人気を誇っており、マレーシアでもスイフトに対する評価は高い。ただ、価格的にアドバンテージのあるプロドゥアのMyViが競合であることから、市場シェアは1%未満にとどまる結果に。排気量は異なるが、価格だけを見るとMyViがRM4万~6万程度であるのに対し、スイフトはRM10万前後とほぼ2倍の価格差となっている。さすがにこれだけの差が生じると、収入によほどの余裕がなければ手が出ないだろう。

そのため、今回の提携はスズキにとってマレーシア市場での売上拡大を期待できるものであり、販売網もまだ小規模であったことから、マレーシア国内での戦略転換が容易となっていたと感じる。さらに、プロトンは来年夏頃にスズキとの提携で完成車1車種を市場に投じるとしており、対象車種は『エルティガ』と言われている。このカテゴリーだと、プロドゥアのAlzaが競合になるのだろうか。

今回の提携で、プロトンは小型車に重点を置こうとしてるように感じる。これまで、プロトンは国民車メーカーとして幅広い車種を取り揃えてきたが、マレーシア市場での売れ筋はMyViに代表される小型車『Bセグメント』であり、そこに経営資源を集中したいのだろう。そうした意味において、スズキとの提携は面白い組み合わせだと思う。

ただ、単純に車種を増やしたり、外国メーカーとの提携だけで回復できるほど、プロトンが抱える問題は簡単ではないだろう。国内市場において、プロトンは価格面での優位性を持ち、膨大な販売網と修理ワークショップ、政府支援、そして国民車としてのステータスなど、競合他社に比べて恵まれた環境にある。消費者が魅力を感じる車種がないのも問題の一つだが、車両品質やサービス品質、そして顧客の声に耳を傾け、貪欲に改善を続ける姿勢が重要だと感じる。
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ナジブ首相、第11次マレーシア計画を発表

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5月21日、ナジブ首相から第11次マレーシア計画(2016年~2020年)の概要が発表された。概要の発表と言いながらも、総ページ370ページにも及ぶ報告書だけに、興味深い情報が数多く掲載されている。
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マレーシアの経済開発政策は、1966年から5ヵ年計画を基本として進められており、今回で第11次を迎えるに至っている。また、2020年に高所得国家入りという目標を挙げていることから、第11次マレーシア計画がその成否に大きく影響するだろう。規模そのものも、前回の10MPのRM2,300億から11MPではRM2,500億に拡大する見通し。

概要が示された報告書では、まず第10次マレーシア計画の実績が示されている。主な実績は以下の内容。

【第10次マレーシア計画実績】
マクロ経済
実質GDP成長率:5.3%
一人当たりの年間所得:RM36,937
月の平均世帯所得:RM6,141
民間消費成長率:7.1%
民間投資額:RM1,620億
国際収支の経常収支:2.0%
財政赤字:3.2%
多要素生産性:29.8%
インフレ率:2.5%
失業率:2.9%

個別事業
地方の舗装道路カバー率:2009年の45,905kmから2014年に51,262km
地方の電気カバー率:2009年の93%から2014年に98%
地方の水道供給:2009年の81%から2014年に94%
就学前入学:2010年の72.4%から2014年に90.7%
学力の低い学校:2010年の380校から2014年に55校
家庭でのリサイクル率:2010年の5%から2015年に15%
森林被覆:2010年の56.6%から2014年に61%
2010年から2015年の道路総延長は68%伸長、新規に93,100km
2010年から2014年のKLIA利用者数46%増加
2010年から2014年の都市部での鉄道利用率32%上昇
2014年の世帯別ブロードバンド普及率:70%
2014年の清潔な処理水提供:95%
追加発電容量:5,458MW
13,483の行政サービスのオンライン化:77%
2014年における政府ウェブ、及びポータルサイトで3つ星以上:98%
建設許可手続き低減:37→15
連邦レベルでの事業ライセンス数低減:717→448
地方レベルでの事業ライセンス数低減:1,455→449

興味深い点としては、道路インフラの拡大を続ける中、鉄道利用率が32%上昇している点。2010年の利用者数は1.71億人だったが、2014年には2.26億人へ拡大している。マレーシアの首都圏も通勤時は慢性的な渋滞に悩まされているが、連邦政府としてはいかにして公共交通機関の利用を高めるかを重要視している。現在はパークアンドライドの利用促進などを進めているが、やはり公共交通網が十分に発達していないことが問題となっている。11MPにおいては、MRT及びLRT延伸が完了し、より利便性が高まることから、鉄道利用率は大きく高まることが予想されている。

[マレーシアの鉄道利用]
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次に、第11次マレーシア計画では、以下の6つの戦略が中核に据えられている。

【第11次マレーシア計画戦略】
-公平な社会に向けて包括性を高める
-全国民の福祉改善
-先進国に向けた人的資源開発を加速
-持続可能性と回復力向けグリーン成長の追及
-景気拡大をサポートするインフラ拡大
-一層の繁栄に向けたリエンジニアリング経済成長

ここでは、グリーン成長を中核戦略の一つとして捉えているのが特徴的と思われる。報告書内では、2014年の再生可能エネルギー発電容量が243MWであったが、2020年には2,080MWへと大きく拡大することを目指している。この他にも、自動車産業や消費財、リサイクルなどの分野においても拡大が見込め、日本企業がアドバンテージを発揮できると思われる。特に、グリーン技術の普及に度合いにおいて、マレーシアはまだまだ発展途上であり、新規参入の余地はかなりある。

[2014年のマレーシアの再生可能エネルギー]
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[2020年のマレーシアの再生可能エネルギー]
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こうした基本戦略の下、連邦政府が目指す主要な目標値は以下の通りとなっている。

【第11次マレーシア計画の主要目標値】
年間実質GDP成長率:5~6%
労働生産性:2015年のRM77,100から2020年にRM92,300
一人当たりのGNI:2020年までにRM54,100
月の平均世帯所得:2014年のRM6,141から2020年にRM10,540
対GDPの雇用者所得:2015年の34.9%から2020年までに40%
マレーシア人の幸福指数:年1.7%上昇

民間投資成長率:9.4%
民間消費成長率:6.4%
公共投資成長率:2.7%
公共消費成長率:3.7%
総輸出の平均成長率:4.6%
2020年までの失業率:2.8%
2020年までの貿易収支:RM573億
対GDPの財政赤字:45%以下

各メディアを見ていていると、全体の40%を占める低所得者層『B40』をいかにして中間所得層へ引き上げるかが、11MPの成否を左右するといった内容が多数を占めている。実際、2014年におけるB40の平均世帯収入はRM2,537であり、政府は11MPにおいてこれをRM5,270へ引き上げることを狙っている。あとは財政赤字の圧縮であるが、GST導入によって今後5年間でRM1,570億の税収が期待され、同時に石油・ガス産業への依存度を15%にまで引き下げることが示されている。

個別事項で興味深かったのが、人口密集地におけるブロードバンドカバー率を95%とすることが言及されている。具体的には、2020年までに主要都市部の全ての世帯でで100Mbpsが利用可能に、さらに地方都市においても50%の世帯が20Mbpsを利用できる環境整備を目指している。また、割高だと指摘されている固定ブロードバンド料金についても、オーストラリアの水準にまで持っていくことが目標として定められている。

参考までに、以下は2020年以降のマレーシアの見通し。
【2020年以降のマレーシアプロフィール】
人口:2020年=3,240万人、2030年=3,600万人
都市化率:2020年=75%、2030年=80%
GDP:2020年=RM1.5兆、2030年=RM2.6兆
一人当たりのGDP:2020年=RM54,890、2030年=RM117,260
世界貿易:2020年=US$26兆、2030年=US$44兆

マレーシアは、東南アジア諸国内においてベトナムやミャンマーなどのように高い注目浴びているわけでもなく、進出先企業として見た場合でも、労働コストの高騰や急激なリンギ安、ブミプトラ保護政策による不平等競争、野党躍進による政治不安といったネガティブな要素も抱えている。ただ、5ヵ年計画を基礎として着実な経済発展を続け、2020年の高所得国家入りが視野に入るまでになっている。なにより、マレーシアという国が5年後に目指そうとしている目標値や方向性が明確に示されていることで、企業としては事業展開しやすい環境であると感じる。個人的にも、2020年にマレーシアが11MPで掲げた数値目標をどれだけ達成できるか楽しみである。

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