マレーシアのブロードバンド価格、大幅見直しへ

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先月、通信・マルチメディア大臣より、国内のブロードバンド価格を大幅に引き下げることが発表された。Ahmad Shabery Cheek大臣によると、全てのブロードバンドサービスにおいて10~57%の値下げとなる見込みで、例えば、3Gのモバイルブロードバンドだと月々1GBのパッケージでRM25、有線では1Mbpsの通信速度で1GBのパッケージはRM38となるらしい。現在、TMが提供している1Mbpsの有線ブロードバンドがRM88なので、RM38だと57%も安くなる計算。RM38だと、低所得者層も手を出せる価格帯ではないだろうか。また、UniFi 10Mbps triple-playパッケージは、現在の月額RM199からRM179へ値下げされる。通信各社とも、1~2ヶ月で新料金体系を適用するとのこと。

[マレーシアの代表的な有線ブロードバンド]
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また、通信・マルチメディア省のJailani Johari副大臣によると、昨年12月末時点での世帯数ベースでのブロードバンド普及率が70.2%に達したことが示されれており、人口密集地域では83.7%に達している。都市部で生活する人にとって、インターネットは生活する上でも、ビジネスをする上でも必需品となっているので、ほぼ全ての世帯でインターネットが活用されていると言える。

マレーシア政府としては、2020年までにブロードバンド普及率100%を目標としているが、ここ数年の伸び率は減速気味の傾向を示している。実際、昨年第1四半期の普及率が67.3%だったのに対し、昨年末の普及率は70.2%程度と3%程度の伸びにとどまっている。政府としても目標達成に向け、HSBBフェーズ2とSuburban Broadband Project(SUBB)を推進、高速ブロードバンド利用可能地域を拡大しており、今回のブロードバンド料金値下げも普及率改善策の一環と思われる。

とは言え、大幅な値下げが実施されるのは低速なブロードバンドサービスのみで、高速通信になるほど値下げ幅は小さい。また、以前からマレーシアのブロードバンドサービスは周辺諸国より低速且つ割高であることが指摘されていたが、通信・マルチメディア省の見解としては、マレーシアのブロードバンドはシンガポールに次ぐ品質であることを強調、利用者との認識に乖離が見えていた。ただ、Asean Briefingが昨年発表した数字だと、マレーシアのインターネット速度はタイの17.7Mbps、ベトナム13.1Mbps、カンボジア5.7Mbpsを下回る5.5Mbpsとの結果が出ている。Mbps毎の料金を見ても、マレーシアがシンガポールやタイの料金を大きく上回っていることが分かる。

[主要国のブロードバンド速度 (Mbps)]
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[ブロードバンド価格比較]
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これだけの数字を見ると、マレーシアのブロードバンド環境がかなり貧弱であることは否めない。マハティール氏が首相の時代には、マルチメディアスーパーコリドーを立ち上げ、世界に先駆けサイバー法を成立、サイバージャヤをIT集積地とすることで世界各国から注目を集めていた。いまでも、サイバージャヤには世界的なIT企業が集積しているし、ITアウトソーシングではインドと中国に次ぐ規模を誇っている。スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、モバイルブロードバンドの利用が活発化、SNSの利用急増によってビジネス仕組みも大きく変化したと感じる。ただその反面、ブロードバンド接続環境はゆっくりとしか改善されていない印象が強い。クランバレーで生活していてこの印象なので、地方都市だとより一層強く感じられるだろう。

あと、マレーシアのブロードバンド普及の課題の一つが、都市部であってもHSBBを利用できない地域が結構あること。KL中心地であっても、低所得者層向け住宅はHSBBを引き込めず、低速のDSLか、ワイヤレス接続を選ぶしかない。どこでも高速の通信環境を適正な価格で享受できるのが理想だが、それにはまだ時間を要するだろう。

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マレーシアの自己破産件数増加傾向に

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ETP/GTPの中間報告でも示されたが、近年、マレーシアの所得水準は大きな伸びを見せており、発展途上国とは思えない様相を呈している。国民の多くはハイエンドのスマートフォンを所有し、道路には綺麗な自動車が溢れている。外食産業も活況を見せており、日本食レスランは現地の客で賑わっている。住宅においても、次々と新規の一戸建てやコンドミニアムが建設され、飛ぶように売れている状況が続いている。

こうした中、4月9日に議会で首相府のNancy Shukri大臣は、2008年から今年1月31日までの間で132,543件の自己破産を記録したことが示された。特に、25歳から34歳のグループでの自己破産件数が 27,701件と最も高くなっている。今回、詳細の統計データは示されなかったものの、発表された数字を見ていくと、まず男女比だと自己破産の7割方は男性となっている。また民族別では、マレー人が48%で最大、中国系31%、インド系13%、その他8%となっている。民族別の人口構成比を考慮すると、中国系の比率が高いことになる。中国系の場合、面子を重んじる傾向が強く、物に対する欲求も高いことが影響しているのだろう。

[2014年男女別自己破産]
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[2014年民族別自己破産]
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また破産局の発表によると、25歳以下での自己破産件数が増加しており、2011年は171人だったのが、2014年には635人へと3倍以上も増加している。全体を見ても、2011年が1万9,167人だったのに対し、2014年は2万2,351人となっている。ただこの数字、日本の自己破産件数が毎年10万件以上であることを考えると、それほど大きな数字とは感じられないが、マレーシア政府としては増加を続ける自己破産件数に対して警鐘を鳴らしている。

特に若い世代に多いのが自動車ローンに対する自己破産であり、ここ数年はその傾向が続いている。確かに、若い世代だと各民族とも自動車に対する関心が高く、私の周りでも収入に見合わない自動車を持っていたり、車両改造に対してかなりの出費をしている知人が多い印象を受ける。住居は低所得者向け住宅でも、乗っているのトヨタやホンダの新車という人達も結構見かける。日本だと、若い世代における自動車に対する関心の低さが言われているが、ここマレーシアでは、当面そのような状況には陥らないと言えるだろう。

いずれにしても、国民生活が豊かになっていくに従い、高い購買意欲を背景に自己破産件数は増加していくことになるだろうし、既存の破産法の欠陥も指摘されている。ただ、こうした消費者行動は同時に国民の嗜好が価格から品質や性能、希少性といったものへ変移してきていることを意味しており、そうした分野での事業機会が拡大していくものと思われる。

GTP/ETPの2014年報告

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4月28日、ナジブ首相によるGTP/ETPの報告が行われた。2010年10月から始まったGTP/ETPも4年が経過し、マレーシア経済を牽引する中心的役割を果たしている。

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今回の報告書におけるキーポイントは以下の5点。

1. 国民1人当たりの所得(GNI/capita):2009年のUS$7,059から2014年にはプラス47.7%でUS$10,426へ上昇。
2. 投資額:2009年のRM1,420億から2014年にはRM2,280億へ上昇。2007年から2010年のCAGRが5.6%であったのに対し、2011年から2014年のCAGRは13.9%。また、民間投資が全体の64%を占有。
3. 雇用:2010年から2014年にかけて、NKEA:National Key Economic Area(主要経済分野)で150万人の新規雇用を創出
4. 地方都市の500万人以上が、電気や水道などのサービスを享受
5. この5年間で、約17万人が所得向上によって貧困層から脱出

まず、国民一人当たりの所得に関しては、2009年からの6年間でUS$3,300も上昇している。低成長の日本の感覚からするとかなりの上昇率だが、政府目標であるUS$15,000まではまだUS$4,500必要となっているので、今のままでは目標達成は厳しい感じもする。

[マレーシア国民一人当たりの所得]
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投資額については、2011年以降の投資額増加率が明らかに拡大しており、民間投資の比重が年々大きくなっているのが特徴的だろう。一昔前までは、投資といえばほぼ政府系案件であり、多くの企業がそれに群がっていたが、構造が変化していると言えるだろう。

[マレーシア投資額推移]
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[民間投資と公共投資の比率]
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[マレーシアの雇用市場]
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また、首相のスピーチ中で言及された主要プロジェクト、及びプログラムの進捗は下記の通り。

2019年までにPengerang Integrated ComplexへUS$270億を投資、4,000名の雇用を創出
242kmの道路建設、6,000戸が水道供給を受け、13,00世帯へ電気を供給、5,500戸の新規住宅建設
2010年以降、307の1マレーシアクリニックが設けられ、登録件数は1,580万
700万世帯が1マレーシア・ピープルズ・エイドを享受
2010年以降、161店舗の1マレーシアショップを出店
2010年から地方都市における500万人以上が道路や清潔な水、電気などのサービスを享受
2010年から2014年の間に4,553kmの地方道路建設
2015年6月、Prasarana Malaysia BerhadによってBus Rapid Transit、又はBRT Sunway Lineが提供され、Subang Jaya とBandar Sunwayの50万の住民が恩恵を享受
2015年10月までにAmpang LRT延長フェーズ1が完了し、Sri PetalingとBukit Jalil、Puchongの住民が恩恵を享受
貧困撲滅プログラム、或いは1AZAMによって170万人の低所得者が利益を享受し、6万5,000世帯が能力・スキル開発支援を受ける
低所得世帯の就学前の生徒13万人に対して、RM1億以上の支援を提供
民間保育所の3,000人以上の子供が約RM750万の授業料支援を受ける
2014年に13校が高パフォーマンス校に認められ、総計が128校に
GTP下において、5年間で国家犯罪指数が40%低下
2014年の自動車盗難が20%減少
腐敗認識指数、2010年のレベル44から2014年はレベル52に上昇(152ヶ国中)
2014年のGDP成長率、世界銀行予想を上回り、且つASEAN諸国内で最大の6%
2014年の総投資額の64%が民間からの投資
MRT Sungai Buloh Kajangルートプロジェクト、2014年時点で59%完成、2017年7月の業務開始を目指す
MRTプロジェクト、マレーシア技術者2,800名の雇用創出
Sungai Kelang、Sungai GombakのRiver Clean-upプロジェクトが53%完了(8つの河川浄化プラント、4つの排水処理プラント)
2011年以降、卸・小売NKRAの下で進められている小売店改革プログラム(Tukar)において、約2,000の小売店経営者が利益を享受
2014 Visit Malaysia Year期間中、マレーシア訪問の観光客数が6.7%上昇して約2,800万人に
政府はKLIA近くの大型プロジェクト『Mitsui Outlet Park』を承認、今年中旬までに業務開始
高付加価値生薬製品イニシアチブにより、製品価値上昇。例えばプロセス標準化により、Tongkat Ali原材料価格がRM2/kgからRM2,800へ大幅に上昇
2020年までに熟練労働者が総労働者数の50%にまで増加
2015年末までに女性労働力が55%に増加
約RM480億がプミプトラの事業機会、スポンサーシップ、教育に
NKEAの重要業績評価指標が110%を達成
世界銀行のDoingビジネス指数、マレーシアは20位から18位に上昇
IMDの世界競争力、マレーシアは15位から12位へ上昇

いずれもポジィティブな数字となっており、GTP/ETPの成果が出ていることが示されている。この他の注目は、1MDBが進めていた金融センター建設プロジェクト『Tun Razak Exchange 』だろう。同社は巨額の負債を抱え、経営難に陥ったことから『Tun Razak Exchange』は別会社へ切り離されることが計画されているが、これについては報告書内で言及されていない。そのため、報告書がポジティブな情報で埋め尽くされている印象は拭えない。

私見として、マハティール首相の時代は海外からの技術移転を進めることで国内の技術力を高め、輸出によって国内経済を潤すことに重点が置かれていた印象が強い。実際、マハティール首相は日本の中小企業を自ら訪問し、マレーシアへの技術移転を促したり、優遇政策を展開してきた。また、当時は政府が強かったこともあり、民間企業の多くが政府系案件に集中するのが特徴的でもあった。それに対してナジブ首相はETPを中心とし、民間投資によって国内のインフラ充実など内需拡大に重点が置かれているように感じる。これにより、立ち遅れていた公共交通網の拡充や、地方都市のインフラ改善が際立っている。ただ、両者とも2020年を一つのターニングポイントと設定し、マハティール首相はビジョン2020でその方向性を明示、ナジブ首相はGTP/ETPという手段で2020年の高所得国家入りを目指している。

いずれにしても2020年まであと5年、今回の報告書である程度目標値の実現可能性が見えてきたと感じる。国内から批判の多いナジブ首相だが、数字だけを見るとかなり健闘していると思うのだが、1MDBの巨額の負債については説明責任が生じるだろうし、国民も明確な説明を望んでいるだろう。


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