最低賃金見直し

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人的資源省のリチャード・リオット大臣は、今年中に最低賃金制度の見直しを行う予定であることを発表。新聞各紙は、最低賃金額が半島部でRM1,000、サラワク州でRM900、サバ州・ラブアンでRM850になるとの見通しを伝えている。

この最低賃金制度、本来の目的は安価な外国人労働者に依存せず、国内労働者の雇用機会拡大を狙ったものである。しかし、私の周りにいるマレーシア人においては、この最低賃金制度が足枷になっている人達もいる。つまり、同じ最低賃金を支払うのであれば、勤労意欲の高い外国人労働者を雇用する会社もあり、なかなか仕事を得られないマレーシア人も存在している。

他方、インドネシアなどから密航してくる労働者も依然として多く、そうした労働者は最低賃金を無視している状況にある。私がよく利用するホッカーセンターで働いているインドネシア人は船で密航し、マレーシア国内で職を得ているらしい。取り締まりも袖の下で何とかなるのだろう。因みに、密航船で里帰りもできるので、頻繁に往来している。

とは言え、最低賃金制度の恩恵を受けているマレーシア人労働者の方が圧倒的に多く、貧困層の縮小に大きく貢献していると思う。私の知人も以前はRM600程度の月収だったが、今では最低賃金を保証されている。こうした低賃金労働者の多くは定期昇給が期待できない状況にあり、苦しい生活を余儀なくされていた。

マクロ的に捉えれば、マレーシアの賃金は上昇を続けており、域内での競争力を維持する上でも、労働集約型から知識集約型への移行が求められている。つまり知識集約型の下で生産性を高め、周辺諸国との差別化を図ることは、マレーシア経済成長のために必須とされている。

しかし、多くの企業は安価な外国人労働者を雇用することで、知識集約型への移行を遅らせている。インフラ建設、ビル・住宅建設、レストラン、製造業、プランテーション、農業などの産業は外国人労働者によって支えられており、企業は依然として労働コストをいかに抑えるかを重要視している。因みに、国内労働市場における外国人労働者の比率は、2012年で13.5%に達している。

そうした背景もあり、マレーシア生産性公社はマレーシア人の労働時間が長い割に、生産性が高くないと警鐘を鳴らしている。実際、最近の労働生産性成長率は鈍化しており、伸び悩んでいる状況に置かれている。マレーシア政府としての目標は、2020年に生産性をRM8万7,500に引き上げることとしている。

マレーシアが高所得国家入りする上でも、この労働集約型の構造から脱却することが求められていると言えるだろう。ただ、外国人労働者に依存している仕事をやりたがるマレーシア人がそれ程多くなく、魅力を感じていないと聞く。そのため、こうした不一致を解決することは、かなり難しいように思われる。

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9月より、マレーシアでゴミ分別実施

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4月20日の紙面において、Solid Waste Corporationが今年9月から、ジョホールとマラッカ、ヌグリ・スンビラン、パハン、ペルリス、ケダの6州と連邦直轄領において分別ごみを実施すると発表している記事が掲載されていた。セランゴール州やペナン州などの人口密集地は対象に入っていないが、セランゴール州は今年中にパイロットプロジェクトを実施するらしい。



マレーシアにおいては、これまでに何度かゴミ分別実施についてのアナウンスが行われてきたが、いつも延期されてきた。ただ、今回は明確な時期と対象地域が示されているので、スケジュール通りに実施されるだろう。

今回対象としているのは家庭ゴミで、違反すると最高でRM1,000の罰金が科せられる。この金額、交通違反の罰金よりも遥かに高い。

新聞報道によると、マレーシアでリサイクルされている固体廃棄物は、現時点で10.5%ということらしい。この数字が高いのか低いのか分からないが、マレーシアとしては2020年までにリサイクル率を22%とすることが目標として挙げられている。

現在、国内のショッピングモールや公共施設などでは、分別用のゴミ箱が設置されているところも多いが、やはりリサイクルに対する意識はそれほど高くない。ゴミ箱が近くにあっても利用されず、なぜかゴミ箱の周りにゴミが溢れていたりしている。街中を見渡すと、歩道にゴミが無数に落ちているし、車からのポイ捨てもよく目撃する。

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またゴミ処理に関しては、うちの近所では小規模のゴミ収集業者がいくつか営業しているが、そこでは低賃金の外国人労働者が手作業でゴミを分別している。コストパフォーマンスを考えると、マレーシアではこの方法が効率的なのかも知れない。

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こうした意識の下で、一般家庭でゴミの分別が実施できるかどうかは大いに疑問がある。また、マレーシアでは資源ゴミを集めて現金収入を得ている低所得者も少なくなく、そうした人達が分別ゴミを回収していく可能性も想定できるだろう。

まだガイドラインが出ていないのでなんとも言えないが、日本のような複雑なシステムは受け入れられないと感じる。いずれにしても、政府としての啓蒙活動、そして効率的な管理監督システムが成否の鍵になるだろう。

あと、資源ゴミをリサイクルする施設の能力・容量も考慮する必要がある。環境問題に対する意識が高まっているので、グリーン技術や再生可能エネルギーに対しては活況を呈しているが、リサイクル施設に関してはあまり話題になっておらず、処理能力が不足しているような印象を受ける。

個人的には、このゴミ問題が改善できれば、都市部で発生している洪水問題の改善にも繋がると期待する。都市部で発生する洪水の原因の一つに、排水溝に詰まったゴミが挙げられており、遅々として改善ができずにいる。特に、テイクアウトに利用される容器は自然分解されないので、深刻な問題となっている。こうしたゴミが投棄されなければ、排水溝は本来の機能を果たすことができるのだが。

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いずれにしても、市民のゴミに対する意識が変わらなければ、ゴミ分別の政策は成功しないだろう。私の経験から、オフィスでは目の前にゴミが落ちていても無視するローカルスタッフがかなり多い。彼らの主張は、そのゴミを拾うのは清掃業者の仕事であり、私達には関係ないというもの。うちの前の道路も、市役所が雇っている外国人労働者が清掃をしているためか、道路上に平気でゴミを投棄している光景をよく目にする。

また、日本のリサイクル技術においては、今回の政策実施により、マレーシア国内での事業機会を期待できそうな感じがする。一般のマレーシア人は、ペットボトルからシャツが製造できることを知らないし、日本のリサイクル技術はインパクトを与えられると思う。

マハティール元首相、ナジブ首相を批判

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4月2日、マハティール元首相がブログに投稿した記事『UMNO dan PRU 14』が大きな波紋を広げている。

マハティール氏は自身のブログにおいて、ナジブ首相のモンゴル人女性殺害への関与、そして1MDBが抱えるRM420億の負債問題、そして国民に負担を強いる中、高価な政府専用機を購入したことを取り上げ、第14回総選挙でUNMOが勝利するためにもナジブ首相は退陣すべきとの見解を示している。



マハティール氏によるナジブ首相への批判は昨年から顕著になっており、低所得者向け一時給付金、ジョホールバルとシンガポール間の連絡橋建設、TPP、GST導入などでも意見の不一致が見られていた。また、中国系からの評価は以前から低かったが、最近はインド系とマレー系においてもナジブ政権を支持しない層が徐々に拡大している。実際、ムルデカセンターの調査データによると、昨年11月以降はナジブ首相に対する不満が満足を上回っている結果に。多分、GST導入以降は個人消費に与える影響が明確になってきていることから、不満がさらに拡大していると思われる。

[ナジブ首相支持率推移]
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[民族別のナジブ首相支持率推移]
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マハティール氏の批判に対して、ナジブ首相とムヒディン副首相はテレビやプレスを通じて沈静化を図ろうとしている。ただ、UMNO主要幹部においてもナジブ首相支持が多数を占めるため、大きな変化はないと思われる。とは言え、マハティール氏が述べるように、2018年に予定されている次回の総選挙、個人的にも与党にとってはかなり厳しい内容になると予想している。特に、中国系の支持はほとんど期待できないだろう。ナジブ首相が辞任するとしたら、首相候補はムヒディン副首相かヒシャムディン内務省といったところか。



更に、絶大な人気を誇った前首相の発言だけに、メディアの注目はこれまで以上に高い。主要紙The Starだけを見ても、かなりの数の動画がアップされている。

























89歳の高齢とはいえ、PASのハッド刑についても自身の見解を述べるなど、いまだ政界に対しての影響力は強い。マレーシアを成功に導いた実績があるだけに、国民からの理解も得やすいだろう。私がマハティール氏と仕事をさせてもらったのが首相辞任前だったが、その時よりもバイタリティーに溢れているように感じる。政界に対する発言、そしてプロトン会長職就任など、とても89歳には見えない。また、マハティール氏が常に念頭に置いているのはマレーシアの発展であり、国民生活を豊かにすることを最重要視しており、この点はぶれていない印象が強い。

GST導入

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4月1日より、マレーシア全土で物品サービス税(GST)が導入された。ナジブ首相による正式発表が2013年10月の予算演説だったから、そこから1年半の準備期間が設けられたものの、やはり市場は混乱に見舞われた。新聞記事によると、初日は関税局のGSTホットラインに3,000件の問い合わせがあったとされており、一部店舗ではGST対象外の商品にもGSTが加算されていたとの報道もある。



国民においても、事前にどれがGST課税対象で、何がGST課税対象外であるのか把握することは困難を極めた。さらに、自動車などはGST導入によって安くなるとされたが、4月1日にならないと販売価格が分からないなど、日本ではあり得ない状況を目の当たりにした。私自身、生活必需品となる日用品や食品はGST課税対象外と認識していたが、トイレットペーパーが課税対象であったりと、当日になって課税対象品目が多いことに気づかされた。

こうした状況から、政府機関からGST関連のQ&A冊子やスマホ向けアプリが提供されたものの、リリースされたのがGST導入直前のこと。対応が後手に回っていることは否めない。知人の企業アカウント向けソフトウェア会社においても、政府からGST対象のフルリスト提出待ちが続き、GST対応ソフトウェアの導入がギリギリだったと聞く。更に、3月26日という時期になって、医薬品や医療サービス、書籍、職業訓練、住宅管理費などにおいて、課税対象外とする品目が追加されており、混乱に追い討ちをかけている。



また、関税局のウェブページに開示されているGSTアイテムのフルリスト『List of Sundry Goods』は2015年1月9日時点の内容であり、最新情報を反映できていない。同局のGST専用ホームページを見ていると、2015年1月開設予定のページがそのまま放置されていたり、いきなりマレー語のページに飛ばされたりとしており、完成度が高いとは言えない内容となっている。ナジブ政権では最重要の税制改革のはずだったが、担当部署がこの対応では寂しすぎる。

昔からそうだが、マレーシアは法案や政策など決断することは早いが、計画通りに履行するためのプロセス策定や準備は不得手だと言える。特に、今回は国民への情報開示が十分ではなく、消費者が理解するに至っていない。十分に時間はあったはずだが、GST課税対象外の品目を巡る攻防にかなり時間を要したように感じる。結果、直前にならないとGST対象品目が分からないので、企業の対応も後手に回ってしまっている。

あと、実際に買い物に行ってみると、結構GSTの負担が大きいと感じる。所得税が引き下げられるものの、私自身も自動車保険やメディカルカードなど、結構負担が増えていることを実感しているし、逆にSST撤廃による安さは実感できていない。

ナジブ首相は、GST導入は国民の負担にならないものになると言及していたが、現時点ではそれに反発する声の方が大きいと感じる。導入前から、延期や導入反対を表明する業界団体が相次いでいるし、たぶん、混乱の収拾には数ヶ月を要するだろう。低所得層においては、所得税を支払っていなかった分、税負担はかなり大きくなるのではないだろうか。また、中国系からはGST課税対象外品目がマレー系中心になっており、公平性に欠けているとの意見も聞くことができる。例えば、医薬品の多くはGST課税対象外だが、中国ハーブ・漢方などは課税対象とされていることもその一つになっている。

マハティール元首相も、GST導入による医療費上昇が国民にとって大きな負担になるとに懸念を示し、GST導入後はナジブ首相の退陣を求めるまでに発言が過激化している。いずれにしても、国民の大半が反対する税制改革を履行したナジブ政権の風当たりは今後更に強くなるだろうし、次の選挙で与党は前回以上に厳しい状況に追い込まれることが予想される。



ただ、連邦政府の財政を考えると、ナジブ政権としても選択肢が限られていたと思われる。連邦政府の歳入の30%超をペトロナス関連が占めているが、石油価格の下落によって大きく減少することが予想され、ペトロナスに依存した体質を改めることの必要性が以前から指摘されていた。また、法人税を支払っている企業は全体の11.0%、所得税を支払っている労働者は全体の14.8%でしかない状況で、公的債務の対GDP比率は政府が設定した上限である55%に近づいている。今回の税制改革によってどれだけ財政に寄与するのか、成果が見えれば国民からの理解も得られやすいだろうか。

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