洪水被害に見るマレーシアの保全と維持管理

昨年末、マレー半島東海岸を襲った豪雨により、実に5万5,000人が避難生活を余儀なくされ、21人が亡くなる事態に陥っている。今回の災害に対しては政府支援だけでなく、民間からも多くの支援が集まっている。テスコやイオンなどの小売店は救援物資を提供し、航空会社は輸送を担っている。大学も組織を作り、学生による被災地の瓦礫撤去作業が行われるなど、復旧に向けた動きも活発化している。

毎年のことだが、東海岸一帯は雨季に大規模な洪水が発生しており、かなり以前から対策が求められてきた。クランバレーにおいても、概ねいつも同じ場所で洪水が発生し、車が水没している記事を目にする。今回は10年に一度の規模であったことから、被害はこれまで以上に大きくなっている。



とは言え、自然災害に対して関連機関を横断した包括的な対策が講じられないまま、現在に至っていることも問題であると感じる。今回の大規模被災を契機として、政府は洪水軽減や災害管理を目的とした研究に、RM2,000万の助成金を割り当てることを決定、ようやく包括的な対策に取り組もうとしている。



ただ、マレーシアでは、インフラやシステムが導入されても、不具合が生じて放置されたりしていることが多く、本来の機能を果たさないことがよく見られる。保全や維持管理、設備更新といった面のプライオリティーが低く、新しいハードウェアや新しいソリューションの方に重きが置かれることが一因として挙げられる。また、人命が失われるなど致命的な事態に陥って、ようやく重い腰を上げる印象が強い。

例えば上水道インフラだが、以前から無収入水は40%程度に達していることが指摘されていたが、長年放置されてきた。政府年次予算を見ても、地方都市の新規上水道インフラ整備には巨大な予算が割り当てられているが、こうした不具合に対してはほとんど注目されてこなかった。しかし、2014年の渇水によってマレーシア全土に給水制限が行われたことから、今はその無収入水をどのように解決するか、本格的な対策が検討されるにに至っている。

ただ、維持管理の原則としては、初期不具合の時に対策を講じる方が、致命的な事態に陥って対策するよりコスト的にも有利であるはずだが、こうしたロジックは少数でしかない。また、適切な維持管理は設備の長寿命化にも繋がるなど、多くの利益を享受できる。だから、日本の上下水道の無収入水は10%以下を維持しているし、当初の耐用年数を超えて運用されている。

マレーシアの政府系案件においては、新しい技術に興味を持ち、比較的積極的に導入する傾向にある。しかし運営に目を向けると、適切な保全や維持管理が行われず、致命的な事態に陥ってから全てを新しいものに入れ替えるといった非効率的なことも行われている。こうしたことを見ていると、新しい技術を導入することが目的となっており、こうした技術を導入したら全て解決といった印象を受ける。

こうした状況に陥る背景には、マレーシアのビジネスのやり方が大きく影響していると思われる。全てではないが、対象の政府案件に対して、企業は海外から製品やソリューションを輸入し、そのまま政府へ納入するといったビジネスが行われている。その中には、維持管理やアフターサービスといったことは考慮されておらず、近視眼的な対応が目立つ。通常であれば、企業は取り扱う製品やソリューションに対して責任を持つため、人材育成や体制整備にかなりの労力を要するが、そうしたことはスキップされている。そのため、そうした面倒なことはアウトソーシングされるか、放置されることになる。更に、そうした企業は極めて政治力が強く、政府案件を獲得しやすいポジションにいる。

多分、今後マレーシアにおいては、洪水被害軽減を目的としたインフラ整備が大きな事業機会として注目され、多くの費用が投じられるだろう。その時には、整備されたインフラや導入されたシステムが適切な保全と維持管理によって、災害時に本来の機能を果たすこと期待したい。そして、こうした分野は日本企業の得意とするところであろうし、 存在感を発揮できると思う。

スポンサーサイト

| ホーム |
Page Top↑
▲ Page Top