ナジブ首相、2015年度予算案を発表

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10月10日、ナジブ首相は2015年度予算案を発表(ナジブ首相スピーチ全文)。発表資料によると、2015年度の予算規模はRM2,739億4,000万となり、前年度からRM98億増加、一般歳出はRM2,234億、開発支出RM505億、歳入はRM2,352億を見込む。2015年の経済成長としては5~6%の堅調な成長が見込まれており、財政赤字はGDP比3.0%にまで下がる見通し。

また、来年度予算では、以下の7つを主要戦略として進めることが示されている。
第1戦略:経済成長強化
第2戦略:政府財政強化
第3戦略:人的資本と起業家精神の開発
第4戦略:ブミプトラアジェンダ促進
第5戦略:女性の役割促進
第6戦略:国家ユース改革プログラム開発
第7戦略:市民の幸福を優先













今回の予算案で特に注目されていたのが、来年4月より施行されるGST。これまで非課税対象が不明確であったり、所得税減税など国民生活にどのような影響が及ぶのかが不明瞭であったが、今回の予算案発表で具体的な説明が行われている。主要な予算案内容は以下の通り。

GST
RON95ガソリン、ディーゼル油、LPG、果物、白パン、全粒パン、コーヒー、茶、ココアパウダー、イエローミー、クエチャオ、ラクサ、ミーフン、2,900の薬ブランド(心不全、糖尿病、高血圧、癌、不妊治療)、子供用の塗り絵、参考書、教科書、辞書、宗教書籍、新聞は免税。
家庭の消費電力量が300ユニットまではGST対象外
冷蔵庫、洗濯機、織物、バケツ、皿、靴、スリッパ、家具、オムツ、石鹸、肉、鶏卵、食用油、シーフード、米、野菜など532品目・サービスは最大4.1%まで減税見込み。
354品目・サービスは5.8%以下で価格上昇。
GST導入企業向けにRM2.5億のインセンティブと助成に割り当て
政府はGST導入前と導入後の比較をしたショッパーガイドを提供

教育
2015年末まで12ヶ月連続でPTPTN(国家高等教育基金貸付金)の返済者に対して10%の払い戻し
2015年3月31日までに一括返済向けに20%の割引
公立高等教育機関への入学はMUET(Malaysian University English Test) band 2以上
政府は公立学校の電気料金・水道料金に対して最大RM5,000支払い
130万人の生徒にRM250の1Malaysiaブックバウチャー配布
540万人の初等学校・中等学校生徒にRM100支援

生活費
RM49億を支援プログラムを通じて市民へ配布
月の世帯所得がRM4,000以下は所得税を免除
個人所得税を1~3%減税
法人税を1%引き下げ25%から24%へ、中小企業は20%から19%へ
障害者の子供、配偶者、両親を持つ人々への減税をRM6,000に引き上げ

健康
トレンガヌとペラに新規州立病院
Kuala LipisとKluang、サイバージャヤに20の診療所と4つの歯科、更に国内全土へ30の1Malaysiaクリニック
国立病院・診療所の635台の血液透析入替えにRM3,000万
デング対策へRM3,000万
血液透析治療向け薬品の提供でRM4,540万
癌、腎不全、心臓発作の患者向け減税をRM6,000に引き上げ

BR1M
月の所得がRM3,000以下の世帯に対してRM650~RM950を支援
貧困世帯、子供、高齢者、障害者向け財政支援でRM12億
就労障害者の手当てをRM350に引き上げ、無就労障害者の手当てをRM200に引き上げ

人的資源
より柔軟な勤務形態や退職手当のためにEmployment Act 1955の見直し
タレントコープはWoman Career Comebackプログラムをセットアップ
政府は民間部門への保育所を奨励

インフラ
Sungai besi – Ulu Klang高速道路へRM53億
Damansara – Shah Alam高速道路へRM42億
Eastern Klang Valley ExpresswayへRM16億
Bandar utama - Shah Alam - KlangのLRT3プロジェクトへRM90億
Selayang - PutrajayaのMRTラインへRM230億
Eeast coast railway lineのアップグレードにRM1.5億
クランバレー水不足対策としてAir Langat 2浄水場建設を促進
漏水パイプ補修へRM1.12億

観光
Malaysia - Year of Festivals 2015向けにRM3.16億

女性
GLCと民間セクターにおける女性の取締役125人を目指す
若いプロフェッショナル女性起業家開発プログラム下で5,000人の女性プロフェッショナル向けにRM5,000万

ビジネス
小規模スタートアップ事業向けSME投資パートナー基金にRM3.75億
協同組合の所得税を1~2%引き下げ
Secretarial feeとTax filing feeの控除

農業
65のファーマーズマーケットと50の魚市場の設立
サバ州とサラワク州の農家向け補助金でRM7,000万
Farmers' Organisation Authority Loans向け補助金でRM1億
初めての沿岸漁業漁師へ月RM200の手当て、及び漁業且つどの促進にRM6,000万割り当て
パーム油小自作農向けにRM4,100万インセンティブ
パーム原油の輸出関税免除の延長

住宅供給
14万3,000戸の低コスト住宅建設
25~40歳の既婚者で世帯収入が1万未満の最初の住宅ローンは最大RM50万
PR1MA住宅の取得適格世帯の所得上限をRM1万へ引き上げ

IT
1,000の新規通信塔建設、及びインターネット海底ケーブル向けにRM27億

防衛
ESSCOM: Eastern Sabah Security CommandとESSZONE: Eastern Sabah Security Zoneの強化にRM6.6億
ESSZONEのオイルリグ修正にRM2.3億
Sempona とSandakanの水上集落再配置
年金制度のない5,000名の退役軍人にRM5,000万

警察
警官隊へRM91億、11,757名のオフィーサーを雇用
新規に14の警察本部・警察署設立
巡回向けに1,000台の白バイ
海上警備のために業務改善と巡視船7隻購入でRM3.93億
マレーシア人民奉仕隊にRM1.17億

地方都市開発
トレンガヌ、ケランタン、ヌグリ・スンビラン、ペルリス、ケダへ地方改革センター設立にRM3.56億
漁村の住宅プログラムへRM2.5億
サバとサラワクの道路建設にRM9.43億
サバとサラワクの15,000世帯へ電気供給、及び7,500世帯の水道供給にRM15億

クリエイティブアート
映画、デザイン、アニメーション産業向けMycreative VenturesへRM1億(2012年のRM2億に追加)

中小企業
ブミプトラ起業家へRM3.5億
5,000名の若いインド人起業家向けにRM5,000万
女性の専門家向けにRM5,000万
退役軍人の事業にRM5,000万
中国系中小企業向けにRM5,000万、ホッカーと小商人向けにRM3,000万

スポーツ
サッカー、サイクリング、バドミントン、セパタクロー、水泳、陸上、及び国内フィットネスプログラム向けにRM1.03億
11月第一土曜日をNational Sports dayに定める
Fit Malaysia Programmeにより健康促進

交通
Rawang、Klang、SerembanからKLへ通勤で使用するバス料金を月額30%割引
Ipoh-Butterworthルートの電車サービスを2015年4月より開始
電気バス50台を導入

やはり注目はGSTの内容だが、結構細かいというのが第一印象。マレーシアにあって、これだけ複雑だと円滑に導入できるとは思えないし、導入時にはかなりの混乱が生じるだろう。面白いところでは、イエローミー、クエチャオ、ラクサ、ミーフンといった麺が免税扱いになっていること。では、同じ麺類の伊麺や板麺の取扱はどうなるのだろうか?GSTについては、こうした不可思議な部分が結構出てくると思われる。
このGST導入によって、政府税収はRM232億が見込まれている。ただ、免税対象がRM38億、更に売上・サービス税のRM138億が廃止されるため、結果的にはRM56億の税収となるらしい。

減税に関しては、月の世帯所得がRM4,000以下は所得税を免除とするなど、これは市民生活にとって大きなインパクトがあると感じる。ただ、法人税については思った以上の減税には踏み込まれていない印象。

個人的に興味深かったのが、返済率の低かった国家高等教育基金貸付金に対して払戻しや割引が適用されること、そして漏水率40%というパイプの補修へRM1.12億が割り当てられたこと。特に、漏水率の高さは以前から指摘されていたが、中々本格的に対策されることはなかった。ただ、今年の旱魃による水不足の反省からか、今回は結構予算が割かれている。

いずれにしても、2015年はマレーシアにとって大きな変化の年になるだろうし、高所得国入りに向けてどれだけ前進できるのか楽しみでもある。

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コンパクトカー競争

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9月に入り、国民車メーカー2社からコンパクトカーがリリースされた。まず、9月15日にプロドゥアがAxia(Perodua Axia launched with 13,500 bookings received and with better price!)を、9月25日にはプロトンがIRIZを発表。

[プロドゥア Axia]






[プロトン IRIZ]






プロドゥアは自社のVivaとMyViの中間である1L車を投入、1リットル当たり21.6kmという燃費の良さを前面にアピールしている。対してプロトンはSavvyの後継モデルとして1.3Lと1.6Lのコンパクトカーを投入、価格の割りに装備が充実している印象を与えている。また、明らかにプロドゥアのMyViを意識したデザインと価格構成であり、競合する存在となっている。

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これまで、マレーシア国内ではコンパクトカーはプロドゥア、小型セダンはプロトンといった感じで棲み分けがされていたが、IRIZ投入によってコンパクトカー市場が活発化しそうな感じがする。消費者も最近のガソリン価格値上げ、更にはガソリン補助金政策見直しを念頭において、燃費性能に優れたコンパクトカーに対する人気が高まるものと思われる。

プロトンにおいては、会社再生に向けて今年5月にはマハティール元首相が同社の会長に就任、そして今回はコンパクトカー市場への参入と積極的な動きが続いている。第一国民車メーカーでありながら、Wira以降はヒット商品に恵まれず、市場シェアではプロドゥアの後塵を拝する時期が続いている。今年上半期の市場シェアを見ても、プロドゥアが28.4%、プロトン18.9%となっており、両社の差は10%近くも開く結果に。さらに、第3位のトヨタが15.3%、ホンダ11.2%と続いており、プロトンを脅かす存在になっている。実際、6月時点での市場シェアは17.2%にまで縮小しているので、かなり危機的な状況と言えるだろう。

[マレーシア2014年上半期の自動車メーカーシェア]
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また、消費者からは価格優位性だけと揶揄され、最近では三菱自動車のランサーとホンダのアコードのエンブレムを付替えただけの車種投入と批判が集中していただけに、IRIZに対する印象は良い感じがする。デザインもこれまでのプロトン車よりも市場トレンドに合致した内容。さらに印象的なのが、ショールームに多くの中国系スタッフが配置されていたこと。近所にあるプロトンのショールーム、普段はマレー系スタッフしかいないが、IRIZ発表後は中国系スタッフ数人が常駐し、来客対応をしていた。こうした対応を見ても、いままでのプロトンとは姿勢が変わってきていると感じる。

あとは、国民車メーカーの自動車品質と顧客サービスが向上すれば、国内における競争力は向上するだろう。現時点では、JDパワー調査の顧客サービス指数、販売満足度指数共にプロトンは業界平均を下回っており、いつも下位に位置している。今後、国民車メーカーが競争によってどれだけ改善されていくのか楽しみな状況になってきている。

[2014年の顧客サービス指数]
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[2014年の販売満足度指数]
SSI_2014.png

それと気になるのが、プロトンのハイブリッド車生産。今年3月には、今年中にハイブリッド車を生産すると言及していたが、この新車にも注目したい。

2014年のマレーシア人所得

9月と10月、マレーシア政府より国民所得に関する数字が示された。経済改革プログラム推進によって著しい発展が注目されているマレーシア国にあって、どの程度国民所得に反映されているのかを推し量ることができる。

まず、9月にはマレーシア首相府より『2014年の世帯収入調査』の予備調査結果が発表されている。新聞記事によると、世帯あたりの平均月収がRM5,900超となっており、2012年のRM5,000から18%増加の結果に。地方においては平均月収がRM5,000以下であるものの、40%はRM5,000超となっている。

この結果を受け、一人当たりの国民氏所得は2019年までにUS$1万5,000に到達すると見られており、政府目標であった2020年より前に高所得国家入りできるとしている。

ただ、この数字に対する国内の反応は懐疑的であり、数字そのものが嘘だと指摘する声も多い。実際、一時給付金であるBR1Mが含まれている点、さらに最低賃金制度によって低所得者の賃金が大きく上昇していることが大きく影響しており、中央値だと世帯所得はRM4,258になっている。そのため、確かに国民所得は上昇しているものの、今後も同様の増加率を維持できるかは疑問が残る。

次に、『Khazanah Megatrend Forum 2014』において、Datuk Seri Wahid Omar首相府相よりマレーシア人労働者の月収が示されている。新聞記事によると、RM2,000以下の労働者が2012年の57%から2014年には47%へ減少、RM2,000以上はいずれも上昇している。また、ジニ係数も2002年の0.461から2012年には0.431へ改善されている。

[マレーシア人の月収]
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さらに、国内総生産における賃金の割合も、2008年に29.3%だったが、2013年には33.6%へと増加しており、高所得国家へ近づいていることが示されている。

こうした明るい数字が並んでいるものの、海外からはマレーシアは依然として中所得国家に停滞すると指摘されている。理由としては、政治システムと金融システムの成熟度が低いこと、さらに国内産業保護政策が挙げられている。確かに、高所得国家入りを目指す国にあって、いまの保護政策維持では競争力を高めることが難しくなっていくだろう。中でも、いまのブミプトラ保護の政策は国内産業の発展において足枷となっていると感じる。政府としても舵取りが難しい政策ではあるが、まずは教育や就職において機会の均等が図られるべきだと考える。

それでも、私自身はマレーシアに10年以上滞在しているが、国民生活は年々豊かになっていることを実感できる。所得額は先進諸国よりも低いものの、新しい自動車が溢れ、住宅も凄まじい勢いで増加、多くがスマートフォンを手にしている状況を目にすると、決して貧しいとは言えない。ある部分では、日本よりも豊かさを感じることも結構ある。それでも、国民の多くは政府に対して不満を持ち、周辺諸国と比べて恵まれていないとの声がよく聞かれており、決して現状には満足していない。

ただ、こうした国民所得向上からか、最近は日本企業でも外食産業やアパレル産業といったサービス業での進出が目立ってきており、マレーシアを消費市場として捉える動きが活発化してきているように感じる。以前は製造業におけるコストセンターとして見られていたマレーシアだが、近年は状況が変化してきており、これまでとは異なる投資形態が増えていくことになるだろう。


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