『Malaysia National Education Blueprint 2013-2025』年次報告書

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6月17日、ムヒディン・ヤシン副首相兼教育相より『Malaysia National Education Blueprint 2013-2025』の年次報告書『PPPM Annual Report 2013』が発表された(MAJLIS PELANCARAN LAPORAN TAHUNAN 2013 PELAN PEMBANGUNAN PENDIDIKAN MALAYSIA 2013-2025)



スピーチ全文がマレー語のため詳細は把握できないが、新聞記事などを読むと、昨年に25のイニシアチブが導入されたこと、そして就学前教育の就学率が2012年の80.05%から2013年には81.7%に達し、2020年の100%達成が視野に入ってきていることが示されていた。具体的な情報はほとんど開示されてこなかったが、政府として既にアクションを起こしているらしい。

経済改革プログラムにおいても、教育関連では10のエントリーポイントプロジェクトが進められており、教育環境の充実に重点が置かれている。また、政府改革プログラムでも、『ASSURING QUALITY EDUCATION(質の高い教育)』をコンセプトとして政策が進められており、National Education Blueprint 2013-2025はその中核を形成している。

2020年の高所得国家入りを目指しているマレーシアが長期の発展を維持する上で、最重要とされるのが教育だろう。マレーシアが人件費で周辺環境と競争するのは難しく、コスト性についてはこれまで外国人労働者に依存してきた背景がある。だが、最低賃金制度導入によって状況は大きく変化してきている。これからは、知識に基づいて付加価値をいかに最大化するかが鍵になると思われる。

マレーシア国内の就学率は高く、先進国と比較しても大差ない状況にある。また、就学前教育から多言語を勉強する環境にあり、3ヶ国語を話す幼稚園児も珍しくない。幼稚園に通う私の子供も、必要に迫られて4ヶ国語を使い分けている。漢字も、日本だと小学校高学年で学ぶような難しい漢字の書き取りをしている。最近のトレンドとしては、中国語を修得させようとするマレー人の両親が多く、その人気は年々高まっている。

ただ、小学校からの教育環境を見ていくと状況は大きく異なり、マレー人が優遇される環境にある。例えば、全国統一学力到達度試験UPSRにおいて、マレー人は試験の結果に関係なく中等学校へ進学できるが、それ以外はマレー語で C 以上の成績を修められなければ、1年間のマレー語教育を余計に受けなければならない。また、マレー人が国立大学へ優先的に入学できたり奨学金を受けられるシステムも不満視されており、最近だと理数科教育がマレー語へ変更されることも大きな問題となっている。国立大への進学も、SPMの結果に応じて教育省が一方的に進学先の大学を決める制度になっており、個人の意向は無視されている。こうした公正でない教育システムを続けていると、国全体の教育水準を高めることは難しいと感じる。

マレーシア政府は、『National Higher Education Strategic Plan』の一つとして、2020年までにマレーシアから少なくとも3つの大学をQS 世界大学ランキングの100位以内にランクインさせ、更にその内1つの大学は50位以内とすることを目指すと言及している。これはかなり野心的な数字だと思う。しかし、先日発表された『Times Higher Education Asia University Rankings 2014』において、マレーシアの大学は100位以内に1校も入ることができていない。アセアン国内においても、タイの後塵を拝している結果に…。理由の一つとして、マレー系以外の優秀な頭脳は機会を求めてシンガポールやオーストラリア、台湾、北米などの大学を選ぶ傾向であることが挙げられるだろう。

[アジアの大学上位100校、国別でのランクイン数]
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いまのマレーシア政府の政策では、こうした諸問題については踏み込んでいないし、ブミプトラ政策が足枷になっているように感じる。日本の教育基本法では、「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」とされているが、将来的にマレーシアがこうした方向性に向くことができれば、教育水準は大きく改善されると期待する。

Malaysia National Education Blueprint 2013-2025




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マハティール元首相、プロトン会長に就任


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5月21日、プロトンホールディングスから5月16日付けでマハティール元首相がプロトンの会長に就任したことが発表された(PROTON ANNOUNCES THE APPOINTMENT OF YANG AMAT BERBAHAGIA TUN DR. MAHATHIR MOHAMAD AS CHAIRMAN)。88歳という高齢での会長職就任は驚きだが、政府関係者や業界関係者からは、この人事はプロトンの再建にとって好意的に受け止められている。

プロトンは2012年にDRBハイコムの傘下に入り、自動車メーカーとして改革が期待されていたが、これまで明確な戦略が示されておらず、市場シェアも下降傾向を続けていた。過去には、国内市場において50%以上の市場シェアを誇っていた同社だが、昨年は18%にまで低下しており、年々厳しさを増している。

[マレーシアの自動車総需要量とプロトン市場シェアの推移]
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現在、プロトン購入の主理由はコスト競争力であり、政府の保護政策によって競合よりも有利な環境にある。品質は悪いが、外国メーカーよりも割安というのが市場の認識だろう。こうした背景から、マハティール元首相は会長就任に当たって、プロトンを安売りの自動車メーカーから世界標準メーカーへの脱却し、輸出に注力するといった方向性を示している。また、プロトン再建のために日本の自動車メーカーと交渉していることも示されている。

ただ、実際に国際基準からしてプロトンが安売りの自動車メーカーなのかは疑問がある。例えば、1.6LエンジンのSuprima Sだと販売価格がRM8万前後、日本円で240万円前後となっている。この価格帯、日本だとトヨタのアリオン1.8Lやウィッシュ1.8Lが手に入る。同じ価格帯ではあるが、装備や性能は雲泥の違いが見られる。

マレーシア国内では、プロトン車は安いから低品質であるとされているが、実際に販売されている価格帯を見ると決して安いとは感じないし、日本市場を知っているだけに私自身は割高で低品質と感じさせられる。それでも、Sagaは低所得者でも新車を手にする事ができる価格帯に仕様設定されており、こうした低価格車がマレーシアの自動車市場を押上げてきた事実もある。

また、マハティール元首相は連邦政府が十分な国民車メーカー保護を行っておらず、それがプロトンの競争力低下に反映されているとしている。ただ、プロトンの市場シェア低迷は、外国メーカー優遇に向いた結果だけとは思えない。確かに外国メーカーの自動車価格は政府政策によって徐々に安くなってきているが、政府公用車はプロトン、新しいタクシーもプロトンのExoraが採用されるなど、相変わらずプロトン保護は続いている。

逆に、ここ数年は国民所得が大きく上昇し、購入可能な自動車の選択肢が広がった結果、国民がより良い商品を選べるようになり、結果として品質や性能、デザインに優れた海外メーカーの需要が高まてきているとも感じられる。私の周りの20代に話を聞いても、プロトンやプロドゥアといった国民車は品質や性能において満足を得られていない傾向にあり、もし余裕があれが海外メーカーの自動車を選ぶという声の方が多い。つまり、プロトンは消費者が魅力を感じる自動車を作れていないことが大きいだろう。

私自身、プロトンの再建には数多くの問題を解決する必要があり、自力での再建は難しいと感じているし、問題の多くは政府保護政策の強化で改善されるとは思えない。

例えばJDパワーの調査では、自動車品質やサービス品質では常に国民車メーカーが最下位を争っており、逆に日本車メーカーが上位を占有している状況にある。技術力についても、業界関係者からは早急に改善すべきとの声が多い。最近の自動車販売を見ると、三菱自動車との提携でリリースされたインスピラ、ホンダとの提携でリリースされたペルダナといったように、消費者からはいずれもエンブレムをプロトンに変えたリバッジ車と揶揄され、リバッジのために膨大な開発費を費やしているのかとも批判されている。

また、プロトンではブミプトラ優遇のためのベンダーシステムが採用されており、結果、競争が生まれないから技術力や品質で劣っているベンダーが部品供給を続けることになっている。グローバル市場で熾烈な競争をしている海外の自動車メーカーや部品ベンダーとは明らかに環境が異なる。以前には、プロトン再建のためにフォルクスワーゲンやGM、プジョーとも提携交渉が行われたが、マレーシア側がこのシステムに固辞したことから交渉が頓挫したとも言われている。

日本の自動車メーカーの場合、1秒でも生産効率を高めるにはどうするか、1円でも安くするにはどうするか、同時にどのようにして性能や品質を高めるか、こうした改善が日々行われており、ベンダーにも徹底されている。私自身、以前に日本の自動車メーカー向けエアバッグ用部品の開発・製造に関わっていたので、こうしたモノづくりの意識の高さを経験として持っているし、それが日本メーカーの強みだと思う。

モノづくりにおいては、技術開発や改善など日々の積み重ねが重要なのであって、会長が交代したからと言ってすぐに成果が出ることはないだろう。また、マハティール元首相の年齢を考慮すると、長期的にプロトンの経営に関与できるとは思えない。

プロトンが輸出によって海外市場での競争に挑むのであれば、自動車メーカーとして競える環境を整備する必要があるだろうし、多分、既存の海外メーカーとは違う土俵を狙うなどの市場の差別化が必要だと感じる。マハティール元首相は幅広いネットワークと豊富な経験、そしてアイデアマンであることから、今後どのような具体策が出てくるのか期待したい。


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