セランゴール州政府、水道資産買取で合意

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2月26日、連邦政府とセランゴール州政府は同州の水道資産をセランゴール州が買い取り、公有化することで合意、MoUが締結された。





セランゴール州はマレーシア国内で最大の人口を擁する州であり、2010年の資料では約540万人が暮らしている。また、同州では多くの企業が事業を行っており、数多くの日系企業を目にすることができる。州内の人口は拡大を続けており、不動産建設も凄い勢いで進んでいる。

これだけの大都市において、3月1日から給水制限が実施される事態に陥っている。期間は3月末までだが、セランゴール州とクアラルンプールという都市で水が制限されることによる経済損失はかなりの額になると想像できる。

連邦政府と水道会社のSyabasは、以前からセランゴール州とクアラルンプールにおいて将来的に水不足に陥る可能性を示していた。そこで、連邦政府は2008年に『ランガット2浄水場建設計画』を提案、パハン州からセランゴール州へ水を供給し、2015年の操業でクランバレー内の水需要を満たすことが計画されていた。

この計画に対し、野党連合が政権を握るセランゴール州政府は、一貫してダムの水は十分に足りており、連邦政府とSyabasの主張には根拠がないとしてきた。昨年も、セランゴール州では設備の老朽化や貯水量減少などの影響から断水が発生し、市民の生活や企業の経営活動に大きな影響を及ぼしたが、総選挙が行われていたこともあり、水不足は連邦政府と結託したSyabasが故意に水を供給していないなどの噂も流されていた。セランゴール州政府が常に連邦政府やSyabasの発表に対して真っ向から対立していた事情を見ると、マレーシアの水不足は政治的な駆け引きの道具として使われてきた印象も強い。

しかし、今年の中国正月明けの日照り続きからダムの水位が低下し、給水供給が制限される事態へ発展、実に43万世帯に影響が及ぶことになった。こうした状況を受けてか、突如セランゴール州のカリド・イブラヒム首相はマキシマス・オンキリ エネルギー・グリーン技術・水相と水道資産買取に関するMoUに署名、『ランガット2浄水場建設計画』が進展する見込みとなっている。

因みに、清水建設と西松建設、UEMB、IJMによるジョイントベンチャーにより、東南アジア最長の「パハン・セランゴール導水トンネル」が2月19日に貫通するなど、パハン側の方は着実に進展している様子。

ただ、マレーシアにおいてもっと深刻なのは、無収入水の存在だろう。トイレや水道の蛇口が壊れて水が漏れている光景を頻繁に目にするが、それ以上に水道管からの漏水はかなり酷く、国内平均は40%程度、損失額はRM16億にもなる。水道水事業による収益がRM39億であることを考えると、どれだけの水が無駄になっているのかが分かる。

マレーシアの水道インフラ普及率は90%にも達しており、世界平均の87%を上回っている(日本は97%)。この数字だけを見ると、先進諸国程度の普及率と言える。しかし、漏水率に目を向けると事情が大きく異なり、周辺の発展途上国と同じ水準になってしまう。

[アジア主要都市の上水道漏水率]
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つまり、それはインフラの適切な維持管理ができていないことを意味しており、マレーシアの特徴を示している。マレーシアでは、世界初や世界水準というものを取り込むことにはかなり高い意識が働き、そのためには積極的に予算が割かれてきた。しかし、一度導入されてしまうと維持管理はなおざりにされてしまい、とりあえず壊れたら直すという場当たり的な対応が行われ、深刻な事態に陥ったら次の新しい技術やシステムに置き換えてしまう傾向にある。日本が予防的な維持管理において極端に優れているという見方もできるが、明らかにマレーシアはこの維持管理や改善に対する意識が低い。結果、長期的には期待しただけの効果が得られず、費用対効果に乏しい事態にも発展する。

こうした予防措置的な部分の改善が進めば、マレーシアのインフラはより優れたものになるだろうし、こうした分野は日本企業にアドバンテージや事業機会があると感じる。ただ現時点では、どのようにしてマレーシア国内に予防措置的な維持管理の考え方を定着させるかが、最大の課題のように感じる。


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マレーシアへの直接投資動向 -製造業-

今年に入り、企業の投資先が中国からアセアン諸国へシフトしつつあるとの記事を頻繁に目にするようになった。そうした傾向は日本企業だげでなく、他の先進諸国にも及んでいるらしい。

まず日本貿易振興機構が日本企業3,471社を対象とした海外事業の調査においては、75%がアセアン諸国への投資を拡大すると回答。2011年の56%から数字が大きく拡大し、ここへきて関心が高まっていることが分かる。逆に、中国への投資を考えている企業は2012年の68%から2013年には57%へと減少しており、投資先がアセアン諸国へシフトしてきている。中国での事業縮小理由としては、コスト高騰や為替リスク、環境汚染が主要な要素として挙げられている。

このように注目されているアセアン向け投資だが、それがマレーシアへの直接投資を加速化するのかというと、そうでもないようだ。投資先として検討されているのは、主にインドネシアやベトナムといった国らしい。個人的にも、これまでマレーシア経済を牽引してきた製造業は年々厳しさを増していくと感じている。

マレーシアはタイのような政情不安のリスクが低く、比較的高スキル労働者を確保しやすい環境にはあるが、最低賃金制度導入によって労働コストが高騰していることが理由として挙げられている。国内製造業者においても、当初は外国人労働者を雇用することで域内でのコスト競争力を維持してきたが、最低賃金制度の導入によってベトナムなどより賃金の安い国へ拠点を移す動きも見られる。

MIDAの発表では、マレーシアへの海外からの直接投資は拡大傾向にあり、2013年は過去最高のRM387.7億を記録しているものの、製造業の伸びは他に比べて低いものとなっている。製造業はどうしても優れた労働力を安価に調達することが優先されてしまうため、マレーシアにとっては厳しい状況だと言えるだろう。実際、日系企業の進出状況を見ても、製造業者は年々減少傾向にあり、製造拠点としての魅力を失いつつあると感じる。

[マレーシアのFDI流入額推移(RM100万)]
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[マレーシアのFDI流入額業種別(RM100万)]
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[マレーシアの日系企業数推移]
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また、昨年の国別の製造業への投資額を見ていくと、日本はシンガポールに次ぐ金額となっている。因みに、2012年は日本が首位。

[マレーシアFDI流入-国別、製造業(RM100万)]
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ただ、こうした状況はマレーシアが国家として次のステージへ移行することを意味していると感じる。製造業においては、単なる労働コストの優位性だけでは長期的な発展を維持することはできない。政府が進める経済改革プログラムでは、2020年までに高所得国家入りすることを目標としており、それは従来のコスト優位性を主体とした事業環境で達成できるものではなく、知識労働者の比率を高ることで仕事の質を向上し、周辺国にはない付加価値を提供することが求められるだろう。

結果、国内製造業はコストセンターとしての役割ではなく、高度な技術が集積する地域としての役割を目指していくことになるだろうし、製造業以上にサービス業に対する投資が今後は加速していくものと思われる。

ビジネスを行う上で、マレーシアは政治的不安が比較的少なく、英語でのコミュニケーションができること、高度な教育を受けた労働者の存在、充実したインフラなど、アセアン域内においては優れた環境を提供している。更に多民族国家であることも、マレーシアが海外からの投資を惹き付ける要素となっている。また、個人所得の向上と共に国民生活が豊かになり、市場としての魅力も増してきている。今後、マレーシアに対する海外からの投資の質の変化に注目していきたい。


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