KPMG調査報告、マレーシアの不正・賄賂・腐敗

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1月13日、KPMGマレーシアより『KPMG Malaysia Fraud, Bribery and Corruption Survey Report 2013』という報告書がリリースされた。この報告書、マレーシア国内の不正や汚職、腐敗についてまとめたもので、マレーシアでビジネスを行う人達にとって大変興味深いものとなっている。

マレーシアは、事業を行う上でよく不正や汚職、腐敗というものが指摘されてり、それらが大きなコストとして台頭している。政府においても腐敗が深刻な状況にあり、昨年行われた総選挙でもこのことを野党陣営から激しく追及されていた。

報告書では、主に企業の不正行為についての調査内容が纏められている。以下では、個人的に興味を持った調査項目をいくつか列挙している。

調査では、89%が過去3年間で不正行為が増加し、さらに94%は不正行為が巧妙化したと回答。ここ最近は、企業におけるコンプライアンスが強化されてきていると感じていたが、実際には反対のことが起こっているらしい。

また、組織内での不正行為は主要問題として捉えられているかとの問いに対し、はいと回答したのは52%と少ない。これは、不正行為が常態化していることも影響しているのだろう。しかし、不正行為がマレーシアのビジネスにとって主要問題だと認識しているのは83%にまで達しており、やはりマクロレベルではマイナスの印象がもたれている。

そして、90%が不正行為がビジネスを行う上で不可避のコストであると回答。つまり、マレーシアでビジネスを行うのであれば、不正行為から逃れることはほぼ不可能ということになる…。先進国から見ると、これはかなりショックな数字だと思う。

[不正行為に関する質問]
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不正行為の加害者を見ていくと、件数ベースと金額ベース共に、顧客と従業員が半数を超える結果に。

[不正行為の加害者割合(件数ベース)]
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[不正行為の加害者割合(金額ベース)]
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こうした不正行為は、概ね内部管理と内部監査、そして社員による告知で発見されている。

[不正行為が発見される方法は?]
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そして不正行為の動機は、ほぼ個人的な欲求に依存していることが分かる。

[不正行為の動機は?]
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これほど深刻な状況にも関わらず、不正行為の調査に費やす金額は驚くほど少ない。結果を見ると、調査費用がないとの回答が60%と最多で、結局は何もしていないことが分かる。実際、ある大手小売店では、毎年膨大な数の商品が盗難・紛失しているにも関わらず、それがどこで発生しているのか分からないと言っていた。で、棚卸しの際に大きく数字が合致しないことで、そうした状況が明るみになっているらしい。多分、多くの企業が似たような状況に陥っているだろう。

[不正行為の調査に費やす金額は?]
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こうした状況に対し、私自身はRFID技術の導入を推奨し、システム設計を行ったこともあるが、結局は初期投資費用が高いとの理由で導入に至っていない。初期投資費用は年間の盗難・紛失被害額よりも低く、またシステムによって商品の流れが可視化され、どこで商品が紛失しているのかといった問題点が明確化されることが確実ではあったが、クライアントはより安価なセキュリティーの人員を増やすことで対応することを決定…。ただ、マレーシアの場合だと、内部の人間が組織として結託し、商品の盗難や不正流通させるケースが多々あり、こうした人に依存した対策だと効果が長続きしないと思われるが。

次は、賄賂と汚職についての調査結果。65%が事業において賄賂と汚職が主要懸念事項であると答え、さらに90%はマレーシアの事業の主要懸念事項であると認識している。更に、賄賂なしでマレーシアで事業ができると考えるのは32%しかおらず、71%は賄賂と汚職が不可避なコストであると答えている。

[賄賂と汚職の実態]
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賄賂や汚職の状況、東南アジアの中だとマレーシアはタイやインドネシアなどの周辺諸国と比べるとまだまともだと思われるが、それでもマレーシアでビジネスを行うのであれば、賄賂や汚職から逃れることはできないことが示されている。

また、ナジブ政権が推進する政府改革プログラムにおいては、賄賂や汚職に対する取締りが強化され、成果が現れていることが政府報告書で示されていたが、今回の調査では80%が過去3年間で賄賂と汚職が増加傾向にあると認識しており、政府報告書との間に乖離が見られる。多分、賄賂や汚職といった行為が巧妙化していることによると考えられる。実際、政府案件などにおいてはこうした賄賂や汚職が今後もゼロになることはないだろう。

そして、賄賂や汚職に関与する動機としては、やはり企業としては事業の成功や維持が大きなウェイトを占めている。政治力が事業の行方を大きく左右するだけに、マレーシアでは賄賂や汚職からは逃れられないシステムになっていると言える。あとマレーシアらしいのは、各種許認可についても賄賂が必要な点。通常の方法だと必要以上に時間を要したり、途中で処理が停滞、担当者が処理を忘れるということがよく発生する。最悪の場合、認可申請そのものが紛失されることもある。こうした事態を回避するために、許認可担当へ賄賂を支払い、申請を最優先で処理してもらうこともよく行われている。

[賄賂や汚職の動機は?]
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その賄賂の形態だが、最も多いがやはり現金で、接待、贈答がそれに続いている。

[一般的な賄賂の形態は?]
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マレーシアでビジネスを行う場合、不正や賄賂、汚職といった負の要素が避けて通れないことが、今回の報告書で改めて如実に示されている。マレーシアの人件費などは日本より安価であるが、企業としてはこうしたリスクによって負担すべきコストや時間を考慮する必要が常に生じることになる。

それでも、周辺諸国よりマレーシアはまだまともとの声もあるが、2020年の高所得国家入りを目指すのであれば、こうした状況は改善しなければならないだろう。ビジネス以外でも、警察に交通違反で捕まってもその多くが現金を手渡すことで全てが解決してしまう環境は、マレーシアがまだ成熟していない国家であることを表している。

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国家自動車政策2014

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1月20日、国際通商産業省のムスタパ大臣より『国家自動車政策2014(NAP2014)』が発表された。この政策、当初は2013年中、最悪でも2014年度予算案には発表されることが期待されていたが、結局は今年1月にまで発表がずれ込んでしまった。







今回発表された国家自動車政策の要旨は以下の通り。

国内自動車産業に影響を与える構造的な問題に焦点を当て、グローバルな品質、コスト、納期の要件を満たすための対策の概要を説明。

国連の自動車安全規制に合致。

消費者に影響する問題を見い出し、これらの問題を扱うためにメカニズムを提示。

目標としては、

  • 国民車メーカーを含む競争力と持続可能な国内自動車産業を促進

  • エネルギー効率の良い自動車(EEV)でマレーシアを域内ハブとする改革

  • 高付加価値活動の促進

  • 自動車と部品の輸出を強化

  • 国内自動車産業のバリューチェーン全体におけるブミプトラ企業の参加を奨励

  • 競争力のある価格で、より安全、より良い品質の製品を提供し、消費者の興味を維持

  • NAP2014は約RM200億の財政パッケージを提供

  • NAP2014では、2020年に最低でも20万台の自動車輸出、RM100億の部品輸出を目標

  • 政府は財政状況に応じて、徐々に物品税を軽減する可能性があるが、現時点では物品税の減税なし

  • 自動車輸入許可証(AP)について、政府は自動車産業におけるブミプトラ参加終了の影響を評価するため、より深く調査することを決定し、詳細は中国正月明けの発表(NAP2009では、オープンAPは2015年12月31日、フランチャイズAPは2020年12月31日までに終了としていた)


更にNAP 2014の実装を補完するため、6つのロードマップとアクションプランを策定。

  • マレーシア自動車技術ロードマップ

  • マレーシア自動車サプライチェーン開発ロードマップ

  • マレーシア自動車人材開発ロードマップ

  • マレーシア自動車再製造ロードマップ

  • 自動車認定処理施設フレームワークの開発

  • マレーシア自動車ブミプトラ開発ロードマップ


今回の発表で目立ったのが、EEVでマレーシアが域内のハブとなることを目指しており、全ての自動車メーカーがエンジン排気量に関係なく製造ライセンスを得られるという点。そして、2020年にはマレーシアで製造される車両の約85%がこうしたエネルギー効率の良い自動車になるとしている。とうことは、国民車メーカーがハイブリッド車などのEEVへ重点を移すことになるのだろう。

ただ、輸入ハイブリッド車に対する優遇措置については延長されないことが決まった。輸入ハイブリッド車に関しては、2011年から施行された優遇措置によって国内の人気を集め、急速に市場を拡大してきた。それに伴い、消費者嗜好も環境に対する意識が高まり、環境車両に対する認知が高まりつつある状況だったと言える。今回の優遇措置廃止に伴い、そうした感覚が停滞することが懸念される。特に、マレーシア人は価格に対してかなり敏感であるため、優遇措置が適用されないのであれば市場は急速に縮小していくだろう。この決定については、個人的にも残念…。

[マレーシアのハイブリッド車販売台数推移]
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自動車メーカーにおいては、ホンダマレーシアがハイブリッド車生産で積極的な姿勢を示しているものの、トヨタなどは厳しい見方をしている。確かに、タイやインドネシアと比較するとマレーシアでハイブリッド車を製造することのメリットがそれ程高いとは思えないし、マレーシアで製造されるハイブリッド車が充実するまで国内市場は停滞することになるだろう。

そういえば、一昨年にムスタパ大臣が2014年中にプロトンがハイブリッド車を市場にリリースする計画であると言っていたが、国内市場でプロトンが販売しやすい環境とするために、輸入ハイブリッド車に対する優遇措置廃止に至ったとの見方もされている。

あと気になったのは、ブミプトラ企業保護の政策。まず、2014年~2019年まで競争力向上のための財政的支援、そしてアフターセールにおけるブミプトラ企業参加の監督、そしてAP廃止猶予措置などが示されている。この辺は、政治的な絡みがあったものと想像する。

また車両価格では、予算案で示された5年間で20~30%以上の価格低減を実行すること、そして現時点で、Saga SVやPersona SV、Viva、Alza、MyVi S Series、Jazz、Almera は既に3~17%ほど安価になっていることが示されている。とは言え、物品税については現時点では維持されることになり、国民車保護が継続されることになっている。

そしてこの政策により、マレーシア政府は2020年までに15万人の雇用創出と、80%の外国人労働者を国内の労働者へ置き換えることを見込んでいる。

国内消費者や外国メーカーは、今回のNAPによりドラスティックな内容を期待していたと思われ、実際に発表された政策に期待外れの声も聞かれる。個人的には、EEV製造や輸出などかなり高い目標値が示されており、実現化が困難なようにも感じる。ただ、域内でのハブを目指すのであれば、こうした数字は必達なのだろう。自動車産業では、保護政策の影響もあり、周辺諸国と比べて見劣る部分も多くあるが、それでも消費者嗜好は旺盛であり、環境技術に対する意識もまだ高いこともあり、今後の展開が楽しみでもある。また、日本の自動車メーカーは確かな技術と信頼性を背景に、NAP2014の中で存在感を示すことができると期待している。

経済自由度、マレーシアは37位に大幅上昇

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1月14日、米シンクタンクのヘリテージ財団と米経済誌ウォールストリートジャーナルより、『2014 Index of Economic Freedom』が発表された(プレスリリース記事:「HONG KONG STILL THE WORLD’S FREEST, BUT SINGAPORE NARROWS THE GAP, 2014 INDEX OF ECONOMIC FREEDOM SHOWS」)。



今年も香港が総合評価で首位、そしてその地位は20年連続となっている。2位はシンガポールで、こちらも定位置となっている印象。

次にアセアン諸国を見ていくと、タイ以外は大きく順位が上昇していることが分かる。特に、マレーシアは総合評価で37位となり、前年の56位から19もランキングが上昇している。

[日中アセアンの経済自由度ランキング推移]
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マレーシアの個別評価を見ていくと、『政府の支出』と『貿易の自由』が前年よりもスコアーを落としているものの、全体的に改善の方が目立つ。特に、『ビジネスの自由』は35位から21位へ、『労働の自由』は50位から35位、『通貨の自由』38位から21位、『投資の自由』113位から96位『金融の自由』70位から41位となっている。

あと目立った部分としては、全項目のスコアーがアジア太平洋地域平均、及び世界平均を上回っているという点。アジア域内でこれを満たしているのは香港とシンガポール、そしてマレーシアの3カ国だけ。バランスに優れているということで、これはかなり評価できると思う。

逆に最も評価が低かったのが、いつも通りで『国の腐敗からの自由』となっている。先日、KPMGマレーシアが発表した『KPMG Malaysia Fraud, Bribery and Corruption Survey Report 2013』においてもその深刻さが示されている。マレーシア自体、賄賂などがなければビジネスとして成り立たない土壌がまだ多く残っており、この部分の改善は最も時間を要すると言える。国内でもこうした政治の腐敗や汚職はかなり問題視されており、昨年の総選挙においても大きな話題とされているが、あまり大きな改善は見られていない。

『貿易の自由』においても、輸入自動車において高額な関税などの参入障壁が報告書で指摘されている。参入障壁は国内の企業・技術を保護するためではあるが、それが長期化すると怠慢を生み、結果的に競争力を削ぐことになってしまう。そうした意味において、自動車産業における保護政策はもはや本来の目的に合致していないように感じるし、最近はその弊害が目立ってきているように見える。



[マレーシアの2014年経済自由度項目別評価内容]
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*赤字はアジア太平洋平均に満たないスコアー

いずれにしても、今回の報告書を見ると、マレーシアの経済自由度が今後どれだけ向上していくのか期待を持たせる内容だった。


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