日本企業のマレーシア進出支援で感じたこと

長期に渡ってマレーシアで仕事をしてきたこともあり、日本企業向けにマレーシアの市場調査や事業支援を行っています。マレーシアは事業を行うにおいて安定していること、そして高所得国家を目指した政策によって著しい成長途上にあることなど、多くの要因によって注目されています。

確かに、マレーシアには日本企業が多く進出していることもあり、現地の日本流のビジネス慣習に対する理解は高く、信頼もされています。日本企業とのビジネスは概ね歓迎されますし、政府も民間も高いプライオリティーで対応してくれます。

それでも、現地の企業にとって日本企業の鈍重な動きに対して、結構批判がの声が聞かれます。特に、私自身が感じるのは、欧米や韓国、中国などの企業は、『構える』、『撃つ』、『狙う』というプロセスで事業展開を行っているのに対し、日本企業は旧来の『構える』、『狙う』、『撃つ』のプロセスを重視しているため、判断力の遅さや慎重すぎる姿勢に対して違和感を感じることが多々あります。

リスクの最小化という意味では、日本企業のやり方は優れていると言えますが、事業機会の損失などの弊害を招くこともあります。何より、一緒に仕事をしようとする現地企業に混乱が生じ、徐々に離れていくことさえあります。また、全てのピースが揃わなければ事業判断ができないというのも、日本企業の特徴だと感じます。

例えば統計情報一つとっても、日本では様々な統計が政府機関や協会、或いは民間から開示されていますが、マレーシアではそのようなデータが作成されていることが稀であり、存在してもあくまで参考資料程度の信頼性しかありません。そのため、日本ではこのような情報が出ているのに、なぜマレーシアには存在しないのかという話になり、この説明だけでかなり時間を費やすことになります。統計情報が存在しないことを証明することさえ求められることがあります。本来の目的に及ぼす影響がかなり低い場合でも、重箱の隅に固執し、それがなければ全体のパズルが完成しないので満足できないという印象がします。

また、政府ガイドラインや規制、各種申請についても、日本やシンガポールではワンストップ窓口でA to Zの情報を容易に取得できますが、マレーシアだといくつもの機関が複雑に関与しており、相互に連携していないこともあり、事前に全てを把握することが困難となっています。さらに、こうした情報の取り寄せさえ、ウェブページで開示されていない、政府機関に電話を掛けても誰も出ない、メールを出しても返信がないというのが当たり前に起こり、結局は担当機関にまで出向くことが求められます。更に、政府資料は英語よりマレー語の方が多いので、ここでも苦労することに。こうした事情に対してフラストレーションを感じるのは日本人だけでなく、隣国のシンガポール人からもよく耳にします。

こうした事情もあり、マレーシアでの事業においては100%の情報を求めず、70%~80%程度の情報で事業を判断することが必要とされるでしょう。更に、リスクヘッジのためにもまずは小規模な内容から事業を開始し、実際のビジネス活動でどのようなことか発生し、どのようにして対応するのか、費用はどのくらい掛かるのかなどを実際の経験から把握した上で、本事業の判断を行うべきと思います。日本以外の企業の場合だと、パズルのピースが揃わなくても、ある程度の輪郭が確認できればそこで判断や決定を行っているように感じます。

マレーシアは『Doing Business』で世界6位であったり、世界経済フォーラムの『国際競争力ランキング』が世界24位と上位に位置していることからも、期待値が高いと思われます。ただ、マレーシアはまだ発展途上国であり、ビジネス効率や合理性、情報開示など多くの部分において日本とかなり異なる環境と言えますし、日本と同じことを求めるのは無理があると理解する必要があるでしょう。

とは言え、これらはあくまで私個人の経験からの見解ですので、こうしたやり方が当てはまらないケースも多々あると思います。また、日本企業が世界的にも優秀なのは疑いの余地のないところですし、マレーシアのビジネス慣習を尊重しながら、日本企業がその高い能力を現地で発揮することを期待しています。

以上、今日は私が日本企業向けにマレーシアの市場調査や事業支援した経験から感じたことを書いてみました。ご参考になればと。

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サークルK、マレーシアのコンビニ市場へ参入

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11月19日、サークルKサンクスがKumpulan Mofaz Sdn Bhdと連携し、マレーシアでの第1 号店を 2013 年 11 月 20 日(水)にグランドオープンすると発表(プレスリリース:マレーシア第 1 号店舗 スカイパーク店 スバン空港ターミナル内に 11 月 20 日グランドオープン)。

サークルKマレーシアのFacebookページ

第1号店はスルタン・アブドゥル・アジズ・シャー空港に開設、年内にクランバレー内に10店舗、来年は100店舗以上を開設予定としている。また、2018年までに500店舗を開設し、上場を視野に入れていることが示されている。

現在、マレーシア国内のコンビニエンスストアーの分野で圧倒的な強さを見せているのが、ベルジャヤグループ傘下にあるセブンイレブン。1984年から営業を開始し、いまではマレーシア国内で1,453店舗を展開している。クランバレー内で最近よく目にするKK Super Martは2010年末で62店舗だから、その差はかなり大きく、セブンイレブンの独擅場とも言える。そうした状況においてサークルK は500店舗体制を目指しているのだから、セブンイレブンにとってはかなりの脅威だろう。

今回、日本のコンビニエンスストアーがマレーシアで事業を展開するということで、これまでのコンビニエンスストアーの在り方に大きな変化が訪れることが期待できる。日本に行ったマレーシア人から話しを聞いても、日本のコンビニエンスストアーの品揃えやサービスの高さが結構話題になるし、国内での需要や期待は高いと思う。

実際、マレーシア国内のコンビニエンスストアー、日本と比較すると内容的にはかなり貧弱。利便性が優先されており、必要最低限の商品しか販売されていない。当然、日本のように楽しんだりくつろいだりする要素はほとんど見られない。また、セブンイレブンの一人勝ちであることから競争が生まれず、業界内になかなか変化や改善が生じなかった環境も問題だろう。

マレーシア国内では、国民所得も年々増加を続けており、生活そのものが豊かになってきている。結果、消費者はコスト性以外の付加価値を求める傾向にあり、それが日本車やiPhoneなどの需要増加に反映されている。食においても、安さの追求から健康や安全へと消費者の視点が移りつつある。そうした変化の中にあって、サークルKのマレーシア市場参入はちょうど良いタイミングだし、日本式のコンビニは現地の消費者に受け入れられると思う。

懸念としては、日本のコンビニ品質を長期に渡って維持できるかという点。マレーシアだと、どうしてもいつも持続性において弱さが露呈してしまい、最初は日本品質でも数年もするとマレーシア品質に陥ってしまうことがよくある。店舗の見た目さえ、数ヶ月もするとボロボロという光景をよく目にするし、修繕もせずに放置されている。

いずれにしても、私自身は近くにサークルKが開設されたら絶対に足を運ぶし、開設が待ち遠しい。

Kuala Lumpur International Motor Show 2013

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11月15日~24日、3年ぶりにPWTCにてKuala Lumpur International Motor Showが開催された。私自身は2006年のモーターショーに行って以来なので、実に7年ぶり。今回、スポンサーであるメイバンクのクレジットカードを提示すると入場料が無料とれさており、うちはそれを適用することができた。

Kuala Lumpur International Motor Show 2013のFacebookページ







出展は自動車メーカーからアクセサリー関連、そして個人がドレスアップした自動車のコンペティションが行われていたりしていた。マレーシアはイスラム圏の国だが、こうしたショーではキャンペンガールが日本と同様に配置され、多くのカメラが向けられていたのも印象的。あと面白いところでは、タミヤによるRCレースも開催されていた。ただ、11月23日~12月1日まで東京モーターショーが開催されることも影響してか、各メーカーとも出展規模はかなり縮小されている印象。2006年のモーターショーと比べても、明らかに規模が小さくなっており、出展メーカーも減っているように。それと驚いたのが、今回は国民車メーカーであるプロトンが出展していないこと。せっかく地元で開催される3年ぶりのモーターショーなのだが…。

自動車メーカーのブースでは、トヨタとホンダは環境が意識したブース作りとなっており、ハイブリッド車や電気自動車の説明が行われていた。また、フォルクスワーゲンやフォードも燃費効率をアピール。国民車メーカーのプロドゥアは、コンパクトセダンのコンセプトカーを出展、注目を集めていた。

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個人的には、モーターショーの案内板にQRコードとNFC対応のアプリが付けられていたのが興味深かった。さすがに誰も利用していないようだったが、スマートフォンで従来とは異なるアプローチをしようとしていることは理解できる。

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マレーシアの年間自動車販売台数は2010年から60万台を超えており、更に年々増加を続けている。Jalopnikが発表した『The Ten Most Expensive Places To Buy A Car』では、マレーシアは世界で2番目に自動車所有コストが高いと言われているが、国民所得も上昇し、自動車への出費は惜しまない国民性もあり、路上を走っている自動車は発展途上国とは思えないほど充実している。現在は価格的にも国民車メーカーのプロトンとプロドゥアが優位を保っているが、日本車メーカーに対する人気も高く、ハイブリッド車も急増している。

次のモーターショーは、多分2016年開催。ちょっと期間が開くが、マレーシアにいればまた行ってみたい。

Tourism Industry in Malaysia (Year 2013)

観光案件向けに作成したプレゼンテーションスライドの一部を抜粋しました。マレーシア観光産業の基本的な情報や政府政策が中心になっています。

来年は『Visit Malaysia Year 2014』の年、外国人旅行者数2,800万人が目標です。外国人旅行者誘致のため、数多くのイベントが開催されると思います。


英語力、マレーシアはアジア圏で首位に

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11月6日、Education Firstより非英語圏の英語力を評価した『THE EF EPI 2013 REPORT』が発表された。順位を見ていくと、首位スウェーデン、2位ノルウェー、3位オランダとスカンジナビア圏が強いのが印象的。

今回、評価対象となったアジア圏の国は13ヶ国で、マレーシアが総合11位でアジア圏トップの評価。12位のシンガポールよりも上位にきており、この2カ国が唯一『英語力が高い』のカテゴリーに入っている。

[アジア主要国の英語力]
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[アジア主要国の2013年英語力スコア]
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[マレーシアの英語力スコア推移]
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マレーシアがアジア圏で最も英語力が高いと評価されたことには嬉しさを感じるが、シンガポールよりも高い評価内容には疑問も感じられる。確かに、ビジネスは英語だけで不便を感じることはないし、都市部であれば生活していく上でも困ることはない。たまに屋台のレストランやタクシードライバーなど、英語でのコミュニケーションが難しいこともあるが、基本的には英語で全て完結している。

それでも、最近は会社の雇用においては英語力の低さが結構ニュースになっているし、学校における英語教育レベルも問題視されている。現政権は『Malaysia EducationBlueprint 2013 – 2025』において英語授業を増やし、SPM合格の必須科目に英語を加えるとしているが、英語での理数科目廃止についてはマハティール元首相が反対意見を表明、さらに非マレー人の保護者達も見直しを訴えている。私の住んでいる地域でも、中国系の住民たちが英語での理数科目廃止に反対する署名が集められている。それだけ、マレーシア国内での英語力低下が懸念事項とされているし、英語力の重要性が認識しているのだろう。

マレーシアは多民族国家であるがために、基本的にどこでも複数の言語が飛び交っている。国語はマレー語とされているが、会社内でのコミュニケーションは英語が共通言語として使われている。共通言語である英語と各民族の言語が自由に使える環境であるがため、国際ビジネスにおいてはそれが強みとなっている。ただ、公共機関や政府内ではマレー語が主要言語となっており、こうした部分を見るとシンガポールより英語力が高いとは感じることができない…。

あとアセアン全体を見ていくと、マレーシアとシンガポールが『英語力が高い』とされているのに対し、インドネシアとベトナムは『標準的』、そしてタイは『非常に低い』のカテゴリーに。特に、インドネシアとベトナムの英語力に対する評価が高くなっており、逆にタイの英語力は周辺諸国から大きく引き離されている。

また、先進諸国である日本と韓国の英語力も低い評価で、日本はインドネシアよりも下位に…。日本では小学校からの英語教育や、一部企業では英語を共通言語とする動きがあると聞いていたが、この結果は寂しい。

Doing Business、マレーシアが6位に躍進

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10月29日、世界銀行より『Doing Business 2014』が発表された(プレスリリース:『Singapore Continues to be Most Business-Friendly Economy in the World, Philippines among the Top Ten in Improving Business Regulation 』)。今回の調査対象は189ヶ国・地域で、ビジネス環境について評価されたものとなっている。



上位陣を見ると、首位はシンガポールで2007年からその位置を維持している。それに香港が続き、こちらも2011年から4年連続となっている。今回、上位10ヶ国内にアジア諸国から4ヶ国が入っており、競争力の高さを示している。

そして今回、マレーシアは前年の12位から6位に大きく評価を伸ばし、韓国よりも上位となっている。他のアセアン諸国では、フィリピンも前年の138位から108位へと大きく順位が上昇している。

ただ、アセアン諸国全体を見てみると、シンガポールとマレーシア、タイに対する評価が高い一方で、フィリピンとインドネシアはかなり順位が開いている。

[アセアン+日中のDoing Businessランキング推移]
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次にマレーシアの評価内容(評価内容詳細)を見てみると、起業と建設許認可取得、そして事業閉鎖に対する順位が大きく改善されていることが分かる。そして、資金調達と投資家保護については、以前と同様に高い評価が続いている。

まず起業に関しては、コストが大きく改善されていることが報告書で示されている。建設許可取得は、マレーシア国内で不動産開発が活発化しており、中央政府も重要視していることから、同項目にて多くの改善が見られるのだろう。例えば、手続き数は37から15へ大きく減少し、日数も140日から130日へ短縮されている。あと、報告書ではマレーシアのオンライン納税システムにページが割かれており(報告書中ページ64)、企業負担軽減として評価されている。

逆に、大きく評価を下げたのが納税。報告書では、Total tax rate (% of profit)が2013年報告書では24.5%だったのが、今回は36.3%と税率が大きく増加しており、結果、順位は前年の15位から36位へと大きく後退している。

[Doing Business 2014、マレーシア評価内容]
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今回の報告書の内容を受け、Mustapa国際通商産業相は、「マレーシア政府が経済改革プログラムと政府改革プログラムを推進してきた結果」としている。実際、マレーシアがビジネス環境で上位10ヶ国以内に入る評価を受けたことは素晴らしいと思うし、それだけの勢いを感じることができる。経済改革プログラムと政府改革プログラムは着実に成果を上げているし、高所得国家入りも視野に入ってきているだろう。今は国家そのものにダイナミズムを感じることができるし、こうした好材料から海外からの直接投資も増加傾向にある。個人的にも、マレーシアがまだ順位を上げることができるのか興味深い。


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