ニールセン、アジアのスマホ実態調査

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9月13日、ニールセンがアジア太平洋地域のスマートフォン普及や利用実態に関する報告書『スマートフォンインサイトレポート』を発表:(プレスリリースニールセン アジア太平洋地域のスマートフォン最新利用動向を発表)。

アセアン域内において、こうした調査データは中々出てこないこともあり、大変興味深いと言える。ここでは、アセアン5カ国と中国のスマートフォン事情に焦点を当て、データを比較してみた。

まずスマートフォン普及率については、シンガポールとマレーシア、中国、タイの4カ国はスマートフォンの普及率が非スマートフォンを上回っていることが示されている。マレーシア国内で見ると、その比率は80%にも達しており、シンガポールと7%しか違わない。実際、街中の携帯ショップを見ても、スマートフォンの比率が圧倒的に多く、非スマートフォンを探す方が難しい印象がする。また、スマートフォン価格が大きく下がったことも、国内の普及率上昇に寄与しているのだろう。逆に、インドネシアやフィリピンはまだ非スマートフォンが圧倒的なシェアを占有しており、アンアン域内で差が生じる結果となっている。

[スマートフォンと非スマートフォンの比率]
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次に、複数台持ちに対する質問では、なんとマレーシアが47%と他国を大きく引き離す結果が出ている。確かに、私の周りでも複数台の携帯電話を利用している人は多いだろう。特に、クランバレーなどの都市部においてこの傾向は顕著と感じるし、仕事用とプライベート用を使い分けているのだろう。それでも、47%と言う数字はにわかに信じがたいが…。

[携帯電話複数台持ち]
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前年比でのタブレット端末所有率については、シンガポールと中国、そしてマレーシアが40%超という高い成長を示している。マレーシアの国民性は、シンガポールや中国に劣らず新しい物好きだし、こうしたモノへの出費に対しては積極性が高い。タブレット端末の人気はiPadやGallaxyだが、最近は聞いたことのないブランドの安価なタブレット端末が店頭に並んでいたりするし、低所得者や若年層にも普及が進んでいると思われる。

[タブレット端末所有率(対前年比)]
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「1日のうち、スマートフォンに費やす平均時間」はアセアン4ヶ国だけの調査となっているが、概ね3時間以上とかなり長い。なかでも、マレーシアは4時間以上と域内で他を圧倒している。一日のうちでこれだけ長い時間をスマートフォンに費やしているとなると、逆にパソコンなどの端末を利用する時間は短くなっているだろう。
[1日のうち、スマートフォンに費やす平均時間]

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面白いところでは、スマートフォン機器の選択基準というものが調査されている。マレーシアの消費者嗜好の特徴としては、やはり価格が最重要視される傾向にあり、OS、ブランドがそれに続いている。確かに、スマートフォンに限らず、マレーシアではあらゆるものがまず価格で選択される傾向にある。とは言え、iPhoneやGallaxyの上位機種の販売も好調であり、スマートフォンに関しては結構財布が緩いと感じられる。

[スマートフォン機器の選択基準 トップ3]
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過去1か月間の携帯動画利用率については、マレーシアはシンガポールに肉薄する37%。やはり、国内の高速通信網が充実し、データ通信もある程度安価なパッケージ料金が出てきたことも影響している思われる。あと、シンガポールとマレーシアはSNSの利用率が高く、そこで動画が視聴される頻度も高いだろう。

[携帯動画の利用率(過去1か月間)]
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また、過去30日間に携帯広告を受け取った/クリックした割合を見ていくと、マレーシアは域内で中国に次いで2番目の高さ、アセアン内だと第1位となっている。こうした携帯広告に対する利用頻度が高いこともあり、マレーシア国内ではSNSなどを通じた広告戦略に注目が高まっており、セミナーなどもよく目にする。ただ、何でもクリックする国民性からか、オンライン詐欺による金銭的被害を経験している人の割合は米国に並ぶ20%という。

[携帯広告を受け取った割合(過去30日間)]
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[携帯広告をクリックした割合(過去30日間)]
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ニールセン以外にも、ほぼ同時期にEricsson ConsumerLab(太平洋東南アジア)からも似たような報告書がリリースされている。

新聞記事に示された数字によると、マレーシアのスマートフォン所有率は前年の47%から今年は63%に上昇。更に、タブレット端末は前年の14%から39%と大きく成長している。成長率だけを見ると、スマートフォンよりもタブレット端末に勢いがあることが分かる。確かに、安価なタブレット端末が街中溢れており、PC端末よりも気軽に使えること、そして外出先でも無料WiFiに結構接続できる環境があることなど、色々な要因が考えられるだろう。

[マレーシアのスマホ、タブレット所有率]
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アプリ利用については、昨年は54%が毎日利用しているとのことだったが、今年は76%にまで上昇。モバイルデータサービスでは、インスタントメッセージ、SNS、そしてビデオストリーミングの利用が高まっているという。報告書では、こうしたサービスの利用がデータ通信サービスを更に押上げるだろうと推察されている。

マレーシアは、所得水準ではシンガポールよりも低いものの、スマートフォン事情に関してはそのシンガポールに劣らない程の内容となっている。ブロードバンド事情についても、現在はスマートフォンやタブレット端末が牽引役となっており、急速に成長していることが実感できる。通信インフラの整備や通信端末の普及がある程度進んだこともあり、今後はアプリ面でのビジネスが期待できると考える。特に、これまで電子商取引については海外のサイトが中心であったり、現地向けでも内容が貧弱であったりとしていたが、これらの分野において成長が期待できると思う。

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Celcomの市場シェア、Maxisに肉薄

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先日、CIMB Researchはマレーシアの携帯キャリアーの市場シェアに関する報告書を発表。それによると、マレーシア最大手の携帯電話キャリアーであるMaxisの市場占有率が低下しており、今年中にCelcomが逆転する可能性があると予測されている。

実際、過去の市場占有率を見ていくと、Maxisが年々市場シェアを下げ、Celcomが徐々に伸びていることが鮮明となっている。この他にも、最近はUmobileやTune Talkといった携帯キャリアーも健闘している。

2007年の時点で、Maxisの市場占有率はほぼ50%と他を圧倒していた。私自身も、2000年代初頭はMaxisの強さを実感している。企業イメージそのものが先進的であり、積極的な事業戦略などは高く評価されていた。対してCelcomは、国営の通信会社テレコムマレーシアの子会社として設立された背景もあり、膨大な設備投資によって通信品質には定評があったものの、動きが重く鈍いという印象が強かったようにも。

しかし、近年はCelcomによる事業展開に積極性が見られ、サービス内容や商品ラインナップも充実している。Celcomのサービスは利用していないので詳細は分からないが、私の周りであまり苦情を聞くことはない。私自身は、携帯電話と家庭ブロードバンドはMaxisと契約しているが、ここ数年はカスタマーサポートの品質低下がかなり目立つと感じられる。問題の対処でたらい回しにされたり、的確な対応を受けられなかったりと、苛立ちを何度も経験した。対して事業展開の積極性そのものは、iPhoneをマレーシアで初めて取り扱ったり、LTEを他社に先駆けて運用開始するなど、やはりマレーシアの携帯電話市場を牽引する存在だと思わせてくれるが、カスタマーサポートになるとあまり改善が見られず、掲示板なども苦情の書込みで溢れていたりする。結果、Maxisから他の携帯キャリアーへ移行する顧客も増加しているのではないだろうか?

そして、Maxisの市場占有率は37%にまで落ち込み、逆にCelcomは35%にまで伸ばしてきている。売上高でも、Celcomは2013年第2四半期でRM20億超を記録。因みに、Maxisの第1四半期売上高はRM23億。

[マレーシア携帯電話キャリアー大手3社の市場シェア推移]
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現在、マレーシアの携帯電話契約者数は4,200万人、普及率143%と成熟産業の域に達している。Maxisの売上構成を見ても、主力事業は携帯電話だが、成長はほぼ横ばいの状況が続いている。こうなると、既存の顧客の満足度を高めることで、他社へ乗り換える顧客を防ぐことも重要な戦略となってくるだろう。

[Maxisの売上高構成]
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私としては、大手3社が競争していく中で、新商品やサービス品質だけでなく、カスタマーサポートにも力を入れることで、高い満足度が得られることを期待したい。

マレーシア教育相、Malaysia Education Blueprintを発表

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9月6日、ムヒディン・ヤシン副首相兼教育相から『Malaysia Education Blueprint 2013 – 2025』がようやく発表された。昨年から幾度となく新聞でその動向が注目されてきたが、発表が遅れていたことから批判の的にもされていた…。



記者発表を見ていると、グローバル社会で通用する人材育成に焦点が置かれている印象。また、報告書そのものは全268ページと膨大な内容。これだけのボリューム、果たして全て読んむ人がいるのか疑問にも思われるが、それでもかなりの時間を費やしたことが理解できる。

今回発表された『Malaysia Education Blueprint』では、まず5つの目標が設定されている。

アクセス:2020年までに就学前教育から高等学校までの就学率を100%
品質:15年以内にPISAやTIMSSなどの国際評価で上位3ヶ国
公平:2020年までに学力格差を50%低減(地方と都市部、社会経済的や性別)
調和:多様性を受け入れるこで、子供達が価値観や経験を共有できる教育システム
効率:現状の予算内で生徒の成果を最大化できるシステム


あくまで目標値とのことだが、かなり高い目標値を掲げているというのが第一印象。特に品質については、2011年のTIMSSの報告書では、マレーシア(中学2年のみ)は数学26位、理科30位という結果にあり、ここ最近は理数共に低下目立っている状況にある。これを15年以内に上位3カ国にまで押上げるというのだから、普通のやり方では到達できないだろう。

また、今回の発表を受け、マハティール元首相はTIMSSで上位3カ国を目指すのであれば、英語での理数教育は必要との考えを改めて示している。対してムヒディン・ヤシン副首相兼教育相は、英語の授業を大幅に増やすこと、更にSPM合格の必須科目に英語を加えるとしている。一般的に、保護者たちは理数教育の英語廃止に対して反対意見が多いが、英語だとついていけない生徒が多いのも事実。

この他に、政府が『Malaysia Education Blueprint 2013 – 2025』で掲げている主なイニシアチブとしては、以下のようなものがある。

学生が経験を共有できる機会と団結するための基盤を構築することを目指す。
創造的思考やイノベーション、問題解決やリーダーシップなどの知識とスキルのバランスのため、中等教育標準カリキュラムの立ち上げ、2017年には初等教育標準カリキュラムを見直す。
生徒と親が学校教育の各年の期待進捗を理解できるよう、明確な学習基準を示す。
全国統一試験や学校に基づいた評価を段階的に改善する
2013年末までに、キャリアカウンセリングサービスを構築する。
2025年までに、オランアスリやその他の少数民族、そして物理的或いは学習障害を持った学生が就学できる環境を保証する。
2025年までに、グローバル化する労働市場に対応するため、追加言語の学習を奨励することを保証する。
フランス語や日本語、スペイン語などの重要言語の提供を拡大するほか、学生の需要に合致するため中国語やタミール語、そしてアラビア語の教師幹部の構築に注力する。
ブループリント中の各イニシアチブの進捗を年次報告にて公表する。


これら以外にも、多くのイニシアチブが報告書で言及されているが、私自身は日本と比較して学校での勉強量が絶対的に少ないと感じる。例えばKL市内の公立校の場合、生徒の数に対して学校の数が不足していることから、午前と午後のクラスが存在している。その為、学校での学習時間は実質半日しかないことになり、学習量に大きく影響している。この状況は直ぐにでも改善すべきと思うが、新規に学校を設立したり教師を増員したりしなければならないので、時間を要することになるのだろう。

また最近顕著に感じられるのが、若い世代のモラルの低下。このモラル、会社勤めにおいては結構大きな影を落とすことになり、実際、社員のモラルハザードに悩まされることが結構ある。以前、公立の中等学校に通う生徒に聞いた事があるが、マレー人の場合はイスラム教でモラルを教えられているため、学校ではその学習が免除されていると聞いた。つまり、中国系とインド系の生徒だけが、学校でモラルの授業を受けていることになる。ただ、私の家の周りでは、授業を抜け出してインターネットカフェに通っていたり、ノーヘルでバイクを乗りましているマレー系生徒の姿を頻繁に目にするが…。

更に、マレー系以外の優秀な学生が奨学金を得られなかったり、希望する国内の大学に進めないシステムも見直すべきと思う。このシステムによって、多くの優秀な頭脳が海外へ流出、国内の教育水準低下にも拍車を掛けている。

今回の報告書においては、具体的な施策は描かれておらず、目標値を定めた内容となっている。とは言え、教育改革は今後のマレーシアにとって重要な問題であり、政府が何を達成しようとしているのかを示す上では有意義だと思う。『1Malaysia』のように、もう少しシンプルに分かりやすく示すことができれば、より効果的だっただろう。

現在、マレーシアは労働者コストが高まり、製造業などにおいては周辺諸国と比べて競争力を失いつつある。その為、多くの企業は外国人労働者を雇い入れることでコスト競争力を維持しようとしてきたが、最低賃金制度導入によってそれも難しくなりつつある。同時に、政府は低賃金の単純労働ではなく、知識集約型の産業へ力を入れることで、マレーシアの底上げを進めている状況にある。こうした底上げには、高度な労働者を豊富に雇用できる環境が必要であり、そうした意味において今回の報告書の内容は評価できると感じる。外国人労働者に対しても、優秀な頭脳や経験豊かな専門家に対しては、TalentCorpが10年間有効なビザを発行するなど、政府の意気込みを感じることができる。今後、教育改革に対してどのような具体策が出されるのか、大いに期待したい。

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国際競争力、マレーシアは24位に上昇

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9月4日、世界経済フォーラムは『国際競争力レポート 2013-2014』を発表(プレスリリース:強靭なアジアの虎たちと活発な ASEAN 諸国、SAARC 諸国には遅れ:競争力の面では混迷状態にあるアジア)。



上位3カ国は前回調査と同じで、スイス、シンガポール、フィンランドという顔ぶれ。また、概ね東アジア諸国は前回より評価が高まっており、順位を上げていることが分かる。



マレーシアは、前回の25位から一つ順位を上げて24位に。また、今回は韓国が大きく評価を下げたこともあり、マレーシアが韓国よりも上位に位置している。これを受け、国際通商産業省のDatuk Seri Mustapa Mohamed大臣は、マレーシアがアジア太平洋地域25ヶ国中7位に改善されたことを記者会見で強調。

[アジア主要国の国際競争力ランキング推移]
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また新聞報道では、「政治に対する国民の信頼」が25位から17位に、そして「政府政策の透明性」も26位から17位へと大きく改善されていることに注目している。報告書でも、汚職や官僚主義に悩まされる地域にあって、経済改革と政府改革の2つに取り組んで成功している数少ない国と評価されている。ただこの2つ、マレーシア国内ではかなりネガティブな見方がされており、特に今年実施された総選挙では主要トピックとされてきたのだが、国際機関の評価は違う様子。私自身、「政府政策の透明性」はナジブ政権で大きく改善されてきていると感じるが、「政治に対する国民の信頼」はやはりそれ程高くない印象。

総合的に、マレーシアは効率性や競争力が高く、ビジネスフレンドリーな国家として評価されている。特に高く評価された項目としては、政府規制負担8位、投資家保護4位、インフレーション1位、農業政策コスト2位、賃金と生産性2位、現地株式市場からの資金調達9位、融資へのアクセス5位、ベンチャーキャピタル7位、法的権利1位、高度なハイテク製品の政府調達4位となっている。個人的には、賃金と生産性の4位は意外な印象がある。マレーシアは、周辺諸国と比べても賃金水準が高く、外国人労働者に依存していることから、競争力はかなり低下していると思っていたが、それを覆す結果となっている。

逆に低評価だったのは、政府予算バランス103位、政府負債105位、中等教育入学105位、余剰コスト(週給)110位、女性労働力121位が目立つ。中でも、中等教育入学は69.1%とされており、今後のマレーシアにとって深刻な問題として台頭している。先日、教育相から『Malaysia Education Blueprint 2013 – 2025』が発表されており、今後の改善が期待されている。

[マレーシア国際競争力項目別ランキング]
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マレーシアは、高所得国家入りを目指して政府改革プログラムと経済改革プログラムを推進中だが、目標の2020年において国際競争力がどれだけ改善されるのか楽しみ。


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