ナジブ首相、ETPとGTPの2012年成果発表

logo_malaysia.jpg

3月19日、ナジブ首相より経済改革プログラム(ETP)と政府改革プログラム(GTP)の2012年の年次報告が行われた。当日は国営テレビでの生放送だけでなく、オンラインサイトでもライブ映像が視聴できる体制が整えられるなど、今回はかなり用意周到の印象。

ただ、ナジブ首相のスピーチは全てマレー語であったため、私自身はなにを喋っていたのか分からず…。マレー語が国語の国だから仕方がないが、ちょっと残念(The Presentation of GTP/ETP Annual Report 2012スピーチ)。あと、ETPとGTPのサイトを見ると、今回の成果報告ではプレゼンテーションスライドはなく、報告書のみが公開されている。プレゼンスライドの方が分かりやすかったのだが…。とは言え、報告書は英語で構成されており、マレー語が分からない私にとってはかなり助かる。

ETP Full Annual Report 2012
GTP Full Annual Report 2012




成果報告においては、全体を通してETP、GTP共に概ね目標値を達成、2020年の高所得国家入りに向けて順調に進んでいることが示されている。まず国民総所得について、2011年はUS$6,700(RM2万290)であったが、2012年は48.8%増となるUS$9,970(RM3万1,131)という数字。2020年の目標値がUS$15,000(RM4万5,750)だから、あと7年でUS$5,030押し上げる必要がある。また世帯収入も2009年はRM4,025であったのが、2012年にはRM5,000とプラスRM975となっている。これらの数字だけを見ると、マレーシア経済がETPとGTPによって順調に成長しているように見えるが、逆にこれだけの急成長は怖い気もする。

これまで、マレーシアの産業は低賃金・低コストを優位としていたが、今後は高品質やイノベーションを主体とした国家へ移行することで、国民所得を大幅に向上することを目指している。いまはその過渡期にあると言えるだろうが、まだまだ先進諸国のような高品質やイノベーションは定着していないと感じる。

また、ETPではこれまでに152件のエントリー・ポイント・プロジェクトが進められ、159件のプロジェクトが発表、投資額はRM2,113.4億に達している。いくつかプロジェクトは業界や国民の反対によって頓挫したものの、Mass Railway Transitなどの大規模プロジェクトは急ピッチで工事が進んでおり、期待の高さが伺える。

GTPについても同様に高い成果が報告書で示されているが、犯罪の項目では路上犯罪が41.3%減少、犯罪率も7.6%減少との数字が紹介されていた。結果として、刑事犯罪の発生率はシンガポールよりも低い位置づけとされている。昨年は、ショッピングセンター駐車場における強盗被害が多発したりしていたはずだが、全体的には減少傾向にあるのだろうか?

あと、このタイミングで2012年の年次報告がされたことは、選挙前に政府が進める政策が順調に進んでいることを数字で示し、国民の生活に良い効果を及ぼしていることを強調しているようにも感じられる。ETPとGTPの成果が選挙戦にどのような影響を与えるかは分からないが、2020年の高所得国家入りという目標に向けて、今後マレーシアがどのように発展していくのか楽しみな内容だったと言える。

スポンサーサイト

最低賃金制度導入

logo_malaysia.jpg

今年1月1日より、マレーシア国内で最低賃金が導入されて3ヶ月が経過。一部猶予期間を申請した企業もあるが、概ね半島部でRM900、サバ・サラワク州、そしてラブアンでRM800が適用されている。これはマレーシア人だけでなく、家政婦を除く外国人労働者も対象。

これまで、外国人労働者は低賃金でマレーシア経済を支えている状況にあった。工場だけでなく、工事現場やプランテーション、ゴミ回収等々、マレーシア人が嫌う仕事を一手に引き受けている。工事現場などを見ると、運び込まれたコンテナに外国人労働者が住み込みで働いている姿をよく目にする。こうした外国人労働者、新聞を読むとジョホール州の家具工場勤務の外国人労働者はRM 700程度の月収で働いていたらしい。

最低賃金制度は、そうした外国人労働者の収入が大幅に増加することを意味する。経営者の側からすると、これだけの大幅な賃金の引上げは確実に経営に影響を及ぼすことになり、特に中小企業は厳しい局面に立たされている。また、制度の内容の曖昧さが指摘されており、外国人労働者への適用も一部で遅れている。そうしたこともあり、ジョホール州では3万人~4万人ものネパール人労働者がストライキを計画するなど不満が鬱積、労働者が暴徒化したの報道もあり、緊迫した状況が続いていると言える。こうした事態を受け、政府は外国人労働者については、最低賃金の適用を年末まで延期することを閣議で決定したと伝えられている。

ただ、最低賃金制度による問題は外国人労働者と経営者だけでなく、マレーシア人の低賃金労働者にも及んでいる。私の周りでも、マレーシア人で年明け前に会社から解雇を通達された方がいる。明らかに、最低賃金制度導入による影響だが、多くの低賃金労働者が同じような境遇に置かれたと思う。

1990年代、マレーシア経済は勤勉な労働者を低賃金で提供することで外資を誘致、工業化を協力に推し進めることで成功を遂げてきた。しかし、近年は国内賃金の上昇から、域内におけるコスト競争力は衰え、品質や付加価値などで競争優位を高める必要に迫られている。また、国内の産業構造についても、これまでは製造業がマレーシア経済を牽引してきたが、いまではそれがサービス業へ移行しつつある。

ナジブ政権下においては、2020年までにマレーシアを先進国入りさせ、多くの知識労働者が国家経済を支え、マレーシア人の更なる雇用創出を推し進めている。しかし、マレーシア労働市場は前述のように、マレーシア人が敬遠する仕事を外国人労働者に依存する構造にあり、なかなかここから脱却できないと感じる。そのため、先日もバングラディシュ政府と外国人労働者受入れで合意に至っている。

いずれにしても、マレーシアはコスト性で競争力を発揮できる構造にはない。周辺諸国と比べても賃金水準は明らかに割高だし、人口が少ないことから労働者不足に陥り、結果国内労働者の賃金上昇に拍車が掛かる。そして、不足する労働力は外国人が担うことでバランスを取ってきた。最低賃金制度の導入によって混乱は生じているが、マレーシア経済が次のステップへ進むために、この制度の導入は避けて通れないのだろう。

ただ、個人的には労働者の能力が賃金上昇率に追いついていない印象もある。マレーシア国内においては、転職を繰り返すことで所得上昇が見込めることもあり、転職率は日本よりも高い数字となっている。必要な能力が身につかないうちに転職するのだから、なかなかスキルの向上も見込めないのではないだろうか。


| ホーム |
Page Top↑
▲ Page Top