2012年のマレーシアを振り返って

2012年、マレーシア国内でもいろんな出来事がありました。良いこと、悪いこと、嬉しいこと、悲しいこと、そして世界的な話題等々。全体的には、マレーシアの勢いを感じることのできる年であったと思います。

以下のスライドでは、たくさんの出来事の中から、私が個人的に印象に残った出来事をランキング形式でまとめてみました。





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マレーシアのモバイルコマース市場(2012年)

近年、マレーシアでは先進諸国並みにスマートフォンが急速に普及し、モバイルブロードバンド環境も大きく改善されてきています。それに伴い、モバイルコマース市場も年々拡大を続けており、今後、大きく飛躍することが期待されています。そして将来的には、モバイルコマースがマレーシアの電子商取引を牽引していくと見られています。

そうした背景もあり、いまのマレーシアのモバイルコマース市場をプレゼン形式でまとめてみました。まだこの市場は発展途上のため、情報量が圧倒的に少ないですが、今後数年でこの状況は大きく変わるでしょう。





国際数学・理科教育調査、マレーシアは低迷

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12月11日、国際教育到達度評価学会(IEA)は『2011年国際数学・理科教育調査(TIMSS)』を発表。オフィシャルサイトより、数学と理科共に報告書全文をダウンロードできるが、ファイルサイズ各60MB以上、各500ページ以上と凄いボリューム。













まず総合評価を見ていくと、前回の調査結果と同様にアジア勢が強さを見せている。特に、日本、韓国、台湾、香港、シンガポールが上位を独占。日本については、学習指導要領改定で授業時間が増えたこともあり、平均得点が改善に転じている。また東南アジア諸国で見ていくと、シンガポール以外のアセアン諸国はセンターポイント(500点)を下回るという寂しい結果に。

次にマレーシア(中学2年のみ)を見ていくと、数学・理科共に大きく前年から得点を落としており、数学26位、理科30位という結果。国内では、英語による理数科授業制度によって学力が低下したとの見方もあるが、この制度が導入されたのが2003年。数学の場合だと、1999年から常に下降傾向にあるので、この制度が全ての原因とはいえないだろう。ただ、地方に行くと教師の英語力が低いこともあり、都市によって教育の質に違いが生じていることが問題視されている。

[マレーシアの数学スコアー推移(中学2年生)]
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[マレーシアの理科スコアー推移(中学2年生)]
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また男女別でみていくと、概ね女子が男子の成績を上回っており、年々その差も広がりつつある。実際、最近の大学進学率を見ていくと、こちらも女子が男子を上回っており、政府も懸念を示している。私個人の経験としても、仕事において男女差が認識できるし、概ね女性の方が男性よりもまじめに働く傾向にあると感じる。

[マレーシア男女別の数学スコアー推移(中学2年生)]
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[マレーシア男女別の理科スコアー推移(中学2年生)]
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また、「あなたは理数が好きですか」との質問に対して、「好き」と答えた比率がアジア域内で最も高かったのがマレーシアとなっている。国内では、日本と同様に理数離れが進んでいるとされているから、これは結構意外な印象。全体的に見ても、東南アジア諸国が理数系に対して興味があることが示されている。

[数学への興味(中学2年生)]
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[理科への興味(中学2年生)]
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次にホームワークの時間について見ていくと、マレーシアとタイの生徒が理数のホームワークに多くの時間を費やしていることが結果として出ている(理科については、マレーシアは世界1位)。日本と同様に、マレーシアでも多くの生徒が塾に通っているし、この数字をみると結構勉強しているのだろう。でも、タイとマレーシアの生徒は理数が好きで、ホームワークへも多くの時間を費やしているにも関わらず、TIMSSの成績が振るっていないのはなぜなのだろう…。逆に、日本はホームワークの時間がアジア域内において極端に少なく、それが際立っている。

[週当たりの数学ホームワーク時間(中学2年生)]
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[週当たりの理科ホームワーク時間(中学2年生)]
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あと面白いデータとして、学校で使用できるPCについての調査データが出ていた。これを見ていくと、シンガポールでは1~2人の生徒が1台のPCを使用できる比率が68%という高い数字に対して、マレーシアはたったの2%…。PC使用不可も6%という寂しい数字が続いている。マレーシア政府は、国家としてIT先進国を目指すだけでなく、スマートスクール構想やバーチャル学習プログラムなど積極的に進めている印象が強いが、実際はかなり事情が異なる。私の知り合いの子供も言っていたが、学校にあるPCは故障してもだれも修理しないし、インターネット接続も貧弱と嘆いていた。昨年、マレーシア政府は2012年予算で就学支援金としてRM100を生徒に配布したが、このお金は個人の趣味や遊びに使われただけで、全然就学に寄与しなかったことが指摘されている。これだけの支援金を学校のICT環境の整備に使えば、かなりの改善が見込めたと思うが。因みに私の子供は私立の幼稚園に通っているが、PCとiPadが一人に1台ずつが割り当てられている。

[学校でのPC割当台数]
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結果、マレーシアの理数科目でのPC利活用は低いものとなってしまう。数字を見ていくと、理数共にアジア域内で最低の数字で、他国との乖離が大きいことが明らかとなっている。

[数学の授業でのコンピューター利活用(中学2年生)]
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[理科の授業でのコンピューター利活用(中学2年生)]
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報告書では、さらに家庭に関係するデータも示されていた。まず「家に100冊以上本がある」かとの問いに、マレーシアは10%が「はい」と回答。次に「家にインターネットがある」のは31%、「両親のどちらかが大卒以上」は15%となっている。全体的に東南アジア諸国は低い数字と言えるだろう。特に本に関しては、マレーシアも含めて東南アジア諸国は書店が極端に少ない印象がある。

[家に100冊以上本がある]
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[家にインターネット接続がある]
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[両親のどちらかが大卒以上]
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マレーシアでは、来年からマレー語による理数教育が開始されるが、これによってTIMSSが劇的に改善されるとは思えない。マレー人はマレー語での教育を歓迎しているが、逆に非マレー人の成績は低下するだろう。以前、女子中学生がナジブ首相のブログに「私たち生徒は、理数科目がマレー語、英語、そして今度はマレー語と変更されることで大変な思いをしています」と投稿したことが話題となっていた。実際、勉強する生徒は言語が変わることで大変な思いを強いられるだろう。

また、マレーシア政府は2020年までにマレーシアから少なくとも3つの大学をQS世界大学ランキングの100位以内にランクインさせ、更にその内1つの大学は50位以内とすることを目指している。しかし、今回のTIMSSの結果を見る限り、厳しい状況にあるように感じる。

そして、今後、マレーシア経済が発展していくには人材育成が最重要だろう。これまでのように、マレーシアが労働コストだけで優位性を保つことは困難となっており、政府も高付加価値社会への移行を進めている。今回の報告書からも明らかなように、生徒の理数科目に対する興味は高く、ホームワークにも多くの時間を費やしているのだから、あとは教育の質を高めることが課題だろう。学校のICTインフラを整備することで、教育の効率性を高めることも一つの方法だろうし、生徒への就学支援金以外にもできることは沢山あると思う。

MCMC、ネット利用状況調査報告をリリース

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マレーシア通信マルチメディア委員会のウェブサイトに、『Household Use of the Internet Survey 2011』という国内のインターネット利用調査に関する報告書がアップされていた。2011年の調査報告書が今の時期にリリースされると言うのも、マレーシアらしいところ。とは言え、今回の報告書はグラフの作りも凝っており、興味深い情報が多数公開されている。また、データシートでは各州別でのデータも開示されており、地域ごとのインターネット利活用状況を比較・分析することができる。

調査は2011年10月から2012年1月に行われており、国内全ての州から情報が得られている。その中でも、面白そうなデータを下記にいくつか紹介する。

まずネット利用端末については、PC(40.4%)よりもネットブックとラップトップ(83.2%)が使われている傾向にある。また、スマートフォンの利用も21.5%と高い数字となっている。携帯電話キャリアー各社が様々なデータパッケージをリリースし、外出先でも無料のWiFi環境が整備されていることを考えると、今後はスマートフォンの利用が更に高まるものと予想される。特に、iPhoneなどのハイエンド端末に対する人気は高く、所得の多くをスマートフォンに費やすほどの購買意欲となっている。


[インターネット利用端末]
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そうした背景もあってか、インターネットへの接続方法で最も多いのがモバイルブロードバンド(60.4%)となっている。ADSL(44.3%)がそれに続き、WiMAX(11.2%)、高速ブロードバンド(10.2%)という順番。高速ブロードバンドは、光接続のことと思われる。今後の予想としては、やはりモバイルブロードバンドが強いだろうし、来年には大手通信キャリアーからLTEのサービスが提供されることで、更に利用頻度が高まるだろう。固定網では、今後ADSLが減少し、光ファイバーなどの高速ブロードバンドが伸びてくると思われる。とは言え、光ファイバーの利用料金が結構高額なので、その変化はゆっくりとしたものと想像している。あと、このデータを見ていて驚いたのが、ダイアルアップ利用が1%もいること。


[インターネット接続環境]
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通信速度については、1~5Mbpsが最も多く25.6%。次いで512Kbps~1Mbps(15.2%)、512Kbps以下(8.5%)の順番。モバイルブロードバンドとADSLの利用者が高いことを考えると、当然この水準になる。なので、通信速度だけを見ると、日本などのIT先進国と比較するとかなり寂しい状況と言える。それでも、最近は数十Mbpsのサービスも出てきているし、LTEのサービスも開始されることから、少しずつではあるがより高速なインターネット環境へ移行しつつある。


[インターネット接続速度]
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そして毎月の料金は、RM50~RM100が最も多くて61%、次いでRM10~RM150(20.9%)、RM50未満(12.5%)となっている。マレーシア人の所得水準からすると、やはり光ファイバーなどの高速インターネットは結構高額なサービスと言える。因みに、私が利用している光接続の「Maxis home」は10Mbpsで月額RM148。


[インターネット月額利用料]
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次にインターネットサービスで最も重視するのが通信速度(52.4%)となっており、価格(44.0%)を上回っている。利用者も、動画や大容量のファイルをやり取りとするなど、高速通信環境が必要となっていることから、このような結果になっているのだろう。また、マレーシアだとインターネットサービスを選択する上で、カバー範囲(46.9%)も大きな要素となる。これは、日本のように全国どこでも同じサービスが受けられる環境が整備されていないことがある。光ファイバーにおいては、特定のコンドミニアムや地域しか対象とされていないし、モバイルブロードバンドにおいても地域によって通信速度が大きく異なる。最近でも、近所の知人が光ファイバー契約をしようとしたが、住んでいるコンドミニアムがサービス対象外となっているため、高速通信を使いたくとも変えない状況にある。このカバー範囲の拡充は、今後マレーシアが高速通信へ移行する上での大きな課題だろう。


[インターネット接続サービスで何を重視?]
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では、マレーシアのインターネットユーザーはインターネットを何に使用しているのか?最も多かったのが情報収集(88.3%)で、SNS(84.4%)、コミュニケーション(66.4%)が続いている。やはり、マレーシアの特徴はSNSの利用率が高いことだろう。先日、Socialbakers が発表した数字では、マレーシアのFacebookユーザーは1,400万人という数字が発表されていた。総人口が2,800万人だから、おおよそ50%の国民がFacebookを使っていることになる。また、2010年のTNSの調査だと、マレーシアはSNSの友達の数、及び利用時間で世界一であったことが示されており、その人気の高さを裏付けている。利用頻度においても、毎日SNSを利用するユーザーが全体の65.5%にも達しており、1週間に1回以上も29.3%。


[インターネット利用目的]
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[SNS利用頻度]
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ただ、SNSを巡っては国内でも様々な問題が指摘されている。例えばFacebookの場合、13歳未満の子供のアカウントを承認していないが、マレーシア国内においては多くの子供がサービスを利用している。65.5%のインターネットユーザーが子供のSNS利用に対するリスクを認識しているが、子供個人がスマートフォンを所有している状況にあって、これを止めることは困難だろう。また、恋人に振られた青年がFacebook上に自殺予告を投稿し、実際に自殺したケースもニュースで話題となっていた。あと、私が経験しているのは、会社員が仕事中に平気でSNSを利用していること。会議においてもパソコンを持ち込むことができるので、会議中に投稿している人もいる。以前に政府系企業の人達とミーティングをした際には、出席者の一人が「皆がなにを話しているのか分からない。Facebookがなかったら暇だった。有難う!!」と投稿していたのを後で目にした。私が繋がっているのを忘れていのだろうが…。それでも、Facebookを筆頭にSNSの利用は今後も更に高まるだろうし、マレーシアのインターネット社会を牽引していくと思う。
逆に、ネットバンキングやオンラインショッピングなどのe-commerceはまだ利用頻度が低い状況となっている。最近では楽天の進出なども話題となり、将来的には成長が期待されているといえるが、日本などと比べるとその規模はまだ小さく、航空券やホテルなど旅行関連の取引がほとんどとなっている。

最後にネットの利用時間に関して、最も多いのが1日1~4時間で60.7%、次いで4~8時間(19.7%)となっており、結構インターネット利用時間が長いことが明らかにされている。頻繁にFacebookなどのSNSを利用しているので、1日数時間はインターネットを利用することになるのだろう。


[1日当たりのインターネット利用時間]
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マレーシアのインターネット環境や利用状況は日本と大きく異なるし、環境においては日本に劣る部分が数多くある。ただ、通信速度は年々改善されてきており、来年はLTEサービスに期待が集まっている。SNSを利用したサービスも数多く提供されており、この分野は日本より活発かも知れない。今後、マレーシアのインターネット利活用がどのような方向へ進むのか、楽しみな状況になっている。

腐敗認識指数、マレーシアは54位

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12月5日、Transparency Internationalから『CPI: Corruption Perception Index 2012』が発表された(Transparency International Malaysiaプレスステートメント)。CPIは公務員と政治家がどの程度腐敗していると認識しているのかについての調査報告書で、2012年は176ヶ国・地域が対象。





総合で第1位はデンマーク、フィンランド、ニュージーランドの3カ国。最下国となる174位にはアフガニスタン、北朝鮮、ソマリアの3カ国。アジア域では、シンガポールの5位が最高位で、日本は17位。

マレーシアについては、前年の60位から54位へと改善。マレーシア国内の新聞を読むと、政府改革プログラム(GTP)による成果が今回の順位に反映されたとしている。確かに、GTPは「汚職との闘い」を重要項目に挙げており、内部告発の奨励や告発者保護が展開され、政府調達においても透明性が高まってきている印象はある。





ただ、過去数年のデータを見ていくと、単に昨年の評価結果が低く、今年はそこから少し改善したレベルとなっている…。汚職や腐敗は長年この国に根付いているものであり、ドラスティックに変わることはないだろう。政府調達品の価格が、市場価格の数倍だったことも頻繁にニュースで取り上げられているし、手口も巧妙化していると思う。私自身、以前にはマレーシア政府の案件に関わっていたが、どうみても妥当とは思えない政府系企業の請求額が、政府機関の予算会議ですんなりと承認を得ていた…。また、政府関係者で以前は国産車に乗っていた人が、地位が上がったことで急にBMWやアルファードといった高級車を乗り回している光景も目にしている。


[アセアン主要国+日中の腐敗認識順位の推移]
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Transparency International Malaysiaの記者会見では賄賂に関する調査内容が発表され、101社の調査において50%が過去12ヶ月の間に賄賂を払わなかったことで契約を取れなかったとしており、公務員が賄賂を要求したり受け取ること、更に高位の役人や政治家による公的資金の乱用が日常化しているかという質問に対して、マレーシアの評価はかなり低い内容となっている。また、政府が進めている「汚職との闘い」については、75%が有効でないと回答、有効と答えたのは僅か6%しかいない。





この数字を見ると、やはりマレーシアの腐敗は深刻な状況にあることが分かる。公務員の殆どはマレー人で占められているが、お金が関わると宗教観は無視されるらしい…。ただ、2020年の先進国入りを目指すのであれば、いまの構造はあまりにも非効率的だろう。公平な評価や競争ではなく、遂行能力の低い企業が賄賂によって仕事を得る構造は、国の発展にとって大きな損失にへと繋がる。私自身、いくつかのプロジェクトで全く名前も聞いたことのない企業が突然政府系プロジェクトの契約を獲得した話を聞いたことがあるが、結果は悲惨なものでしかない。実力のある企業が、正当な評価と競争で仕事を取れる社会構造とすることが理想だが、2020年までに状況が大きく変わるようには思えない…。

あと、今回の報告書では、アセアン諸国でシンガポールとブルネイ、マレーシア以外の国は、中国より腐敗認識指数が高い内容となっている。日本の報道だと、中国国内の役人の腐敗が酷く、ビジネスにとって大きな障害と指摘されており、リスクヘッジとして東南アジア諸国が注目されているが…。


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