ETP、中間報告を発表

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11月27日、Pemanduより経済改革プログラム(ETP)の中間報告が行われた(ETP Implementation in full swing)。2010年10月25日にナジブ首相が立ち上げを発表してから、既に2年が経過。現在、合計で152件ものエントリーポイントプロジェクトが進められており、その中で発表済みは149件、コミットされた投資総額もRM 2,120億にもなる。投資額の中身を見ると、昨年は民間投資が57%、公共投資43%となっており、今年は今のところ民間63%、公共37%の比率らしい。民間投資は2011年には過去10年の間で最高金額を記録しており、今年も9月時点でRM 112.2億と前年同期比で25.5%増という。

また、問題視されていた財政赤字についても、2009年のGDP比6.6%から、2010年には5.6%、2011年4.8%と計画通りに縮小を続けている。今後は、2015年の3%、そして2020年には0%という目標に向けて動くことになる。

国際機関の指標や報告書においても、マレーシアが進める経済改革プログラムに対する評価は高く、結果としてランキングを押し上げている。国家として目指すべきゴールが明確に数値化されていることで、将来への期待が高まっているのだろう。今回Pemanduが作成したプレゼンテーションスライドを読むと、そうした国際機関のランキングでマレーシアがどれだけ上位にいるのかを多数紹介しており、アピールしていることが伺える。

ただ、プロジェクトにおいては大量高速交通システムのようなインフラ整備の比重が大きいこともあり、現在は建設関連がマレーシア経済を牽引している状況にある。逆に言えば、経済改革プログラムを行わず、従来のように製造業に依存した経済構造を継続していれば、国外の需要の増減に左右されることになるだろうし、国家経済そのものが低成長であった可能性もある。

あとプレゼンテーションスライドを読んでいて興味深かったのが、「Other Challenges」という項目でメディア等で批判を浴びるなど注目されたプロジェクトの進捗が紹介されていること。中でも、Tricubes社が国民全員へメールアカウントを提供するという「myemail」がまだ進んでいたことに驚いた。実際にmyemail.myというサイトが既に運営されており、2.2万人以上のアクティブユーザーを抱えているらしい。

2020年までまだ先は長く、いくつかのプロジェクトは国民から批判を浴びていたが、全体的に経済改革プログラムは順調に進んでいると言えるだろう。152件ものエントリーポイントプロジェクトを監視し、進捗を国民に開示するというロジックは過去にはなかったものであり、これだけでもマレーシア政府の意気込みを窺い知ることができる。また、いくつかのプロジェクトにおいては日本企業が関わっており、マレーシアの経済発展に寄与している。国民総所得も、2020年にUS$ 15,000に達することを目指しているが、今のペースだと2018年にそれを達成できる見込みらしい。2020年にマレーシアが国家としてどのような姿になっているのか、期待は大きい。













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マレーシア、2020年までにリサイクル率40%を目指す

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少し前に、廃棄物管理局が2020年までにリサイクル率を現在の10%から40%とすることを目指すと言う記事が現地のニュースサイトで紹介されていた。第9次マレーシア計画においては2020年の目標値が22%だったので、それを大幅に引き上げる内容。

とは言え、リサイクル率の定義づけが紹介されていないので、なにに対するリサイクル率なのかはちょっと不明。新聞記事では、単に食品廃棄物と建築資材を含み、リサイクル率を年間2~3%程度向上させなければならないとしている。一般廃棄物を対処としているのであれば、日本における2009年のリサイクル率は環境省資料だと20.5%とされているので、マレーシアもかなり健闘していることになるが。

ただ、実際にマレーシアで生活していると、日本ほどリサイクルが活発な状況とは思えない。家庭ゴミの分別もスケジュールが後ろにずれて、ようやく来年から実施される見通しだし、路上には大量のゴミが投棄されている。市役所が雇った清掃人が掃除するから、街中にごみを投棄することには抵抗がないのだろうか。それでも、最近は公共施設やショッピングセンターなどだと、ゴミ箱が分別用のものになっていたりするし、資源ごみを回収している施設も目にするようになってきた。なので、少しずつではあるが、状況は改善傾向にあるのだろう。

また、このリサイクルの分野においては、多分日本の技術がかなり貢献できると私自身は見ている。今年の環境展でも日本企業の技術が紹介されていたが、業界内での日本の技術に対する関心はかなり高い。出展内容を見ても、LEDや再生可能エネルギー、自動車関連といった分野に偏りがあり、リサイクル技術にはまだまだ参入の余地があるとの印象をもっている(IGEM2012報告)。リサイクル製品・商品というものもまだほとんど目にする機会はないし、この分野は本当に発展途上と言えるだろう。

日本のリサイクル技術は高い性能と信頼性を誇り、日本国内での実績があることから、技術的には問題は無いだろうし、マレーシア国内において多くのベネフィットを提供できると思う。しかし、コストが参入障壁となってしまう可能性が高いだろう。日本ではリーズナブルな価格でも、マレーシアなどの発展途上国にとっては一転して高価な技術となってしまう。一応、マレーシアは東南アジア諸国においてはシンガポールに次ぐ高所得国家だが、物価水準は日本の3分の一程度となっている。なので、日本の技術をそのままマレーシアなどの発展途上国に持ってきても、なかなか普及させることが難しいと言える。これは家電も同じで、日本の高性能で多機能な製品をそのまま持ってきても、価格が高すぎるので消費者が手を出せなくなってしまう。逆に韓国メーカーなどは機能を絞り込み、発展途上国向けにリデザインすることで人気を得ており、日本の環境技術についても同様なロジックが求められると思う。

私自身、マレーシアで日本の環境技術を幾つか紹介しているが、やはりコストが大きな障壁となっている。いずれの技術も、マレーシアが長年頭を痛めてきた問題に対して効果を発揮でき、技術的な部分にも関心を示してくれるが、最終的には高価すぎるとの理由から前進させることができない。多分、こうした事例は数多く存在すると思う。

ただ、逆にコスト性で決めてしまったために失敗した事例も多く耳にしている。ある国の実証データに乏しく、有効性も明確ではない技術を採用した案件では、事態を更に悪化させ、最終的にはそのまま放置状態とされたものもある。こうした事例を聞くと、やはり日本の環境技術の高信頼性や高い実績は特筆すべきだし、マレーシアなどの発展途上国に進出して欲しいと感じる。


[参考写真]



2012年第3四半期のGDPはプラス5.2%

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11月16日、マレーシア中央銀行は2012年第3四半期のGDP成長率を発表(Economic and Financial Developments in the Malaysian Economy in the Third Quarter of 2012)

全体としてはプラス5.2%の成長となり、前期の5.6%から減速したものの、ここ最近は堅調に推移している。報告書において、欧米向け対外輸出が大きく落ち込んでいるものの、国内需要が好調を維持しており、投資活動も堅調であることが説明されている。


[マレーシアGDP成長率推移]
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産業別に見ていくと、まず建設がプラス18.3%と高い成長を維持しているのが目立つ。このセクターは、大型の公共投資や不動産が依然として高い伸びとなっており、マレーシアの経済成長を牽引している。大型公共投資だと、ETPで進められている案件などがそれに該当するのだろう。確かに、クランバレーにおいては至るところでインフラ整備に関係する工事が活況を呈しているし、特にMRT: Mass Rapid Transitの工事は大規模で目を惹く。


[MRT工事現場]
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また不動産に関しても、次から次へと新規の物件が建設されている。アジア太平洋不動産協会の報告書によると、マレーシアの不動産投資信託市場は急速に拡大、時価総額でRM250億はアジア域内で第4位の規模という。住宅に関しても、私の近所に多く戸建てが建設中だが、RM100万~300万という物件さえほぼ全てが完売となっている。また、私の知人も購入した不動産価格がいまはいくらに値上がりしたと、うらやましい話をしてくる(これが結構な値上がりを見せている)。


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個人的には、既に供給が過剰気味であるような印象も持っているが、市内で続々と建設が進み、経済成長においても高い成長を維持している。住宅地方自治省においては、不動産投機抑制のため金融政策引き締め策を検討しているようだが、具体的な政策はまだ出てきていない。

ただ、同様に建設ラッシュだったショッピングモールについては、首都圏においては過剰気味という見方も出ている。家の近所にもいくつか大きなショッピングセンターが完成したが、あるところはほとんどテナントが入っておらず、寂しい空間が広がっている。

次にサービス業も好調を維持しており、金融・保険、卸売・小売が成長を支え、プラス7.0%となっている。逆に、製造業は欧米諸国からの需要が減ったこともあり、第3四半期はプラス3.3%に落ち込み、厳しい状況が続いていると言える。マレーシアがこのセクターで強さを発揮できないのは、個人的にも寂しい。

マレーシア中央銀行のゼティ総裁は、今後も内需が堅調を維持するとの見方で、2012年通年でも5%以上の成長が期待できるとしている。と言うことは、当面建設とサービスがマレーシア経済を牽引していく構造が続くと言うことなのだろう。ただ、マレーシアの経済規模で内需に依存した経済発展がどれだけ続くのかとも思われるが。

マレーシアの製造業競争力指数は13位

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11月16日、大手コンサルティングファームのDeloitte社より、「2013 Global Manufacturing Competitiveness Index」がリリースされた。調査は38カ国・地域を対象とし、世界的企業の最高経営責任者552人を含む企業経営陣への調査結果をスコアに反映した内容となっている。

まず、世界1位はやはり中国となっており、強みを見せている。確かに、コスト競争力のみならず、最近では国際特許件数も多くの企業が上位に名を連ねており、世界の工場としての存在感を示している。そして、5年後についてもその評価は変わらないと報告書は結論付けている。最近は、沿岸部の労働コスト上昇や政治的なリスクを回避するため、ベトナムやミャンマーなどへ生産拠点を移す動きがニュースで取り上げられているが、それでも中国の優位は変わらないと言うことなのだろう。

次に全体的な評価内容を見ると、製造業においてはアジア各国が強みを見せていることが分かる。特に、5年後にはインドとインドネシア、そしてベトナムに対する評価が高く、競争力が大幅に向上すると見られている。

マレーシアについては、2013年の競争力は38ヶ国・地域中で13位という位置づけで、アセアン諸国においてシンガポール、タイに次ぐ評価となっている。ただ、5年後には14位に後退すると見られており、インドネシアやベトナムよりも下に位置することになる。


[アジア主要国の製造業競争力ランキング]
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実際、マレーシアの製造業に対する未来は決して明るいとは言いがたい。労働者の賃金は上昇を続けており、いまは外国人労働者を雇用することでコスト競争力を維持しているが、最低賃金制度導入によってその構図は大きく変化すると予想されている。マレーシア政府としては、労働集約的な産業からの脱却を目指し、より高付加価値の知識労働へシフトすることを狙っているが、なかなか難しい面がある。

報告書において、競争力を高める上で最も重要なことは人材確保だと指摘されているが、いまのマレーシアにおいてはこの人材確保に不安を抱えている。まず、多くの労働者、特に若い世代は製造業で働くことを嫌っており、優秀な人材を確保することが困難となっている。更に、日本と同様に理系離れが深刻な状況にあり、マレーシア政府は理系を専攻する学生の両親に対して税金控除などのインセンティブ付与を検討するまでに至っている。また、優秀な労働者の頭脳流出も不安要素の一つだと指摘されている。中でも、マレー系以外の人達は国内での不平等な待遇から抜け出すべく、海外に就学や職を求めるケースも多い。

1980年代の工業化政策推進以降、多くの外国企業がマレーシアに進出し、その成長は世界中から注目されてきた。特に、製造業においてマレーシアは強みを見せ、電気・電子、機械などの分野で集積化が進み、域内においても優秀さを誇っていた。それは、政府の外資に対する優遇措置だけでなく、安価でありながら優秀な労働力に支えられてきたものであった。私自身、1990年代半ばにマレーシアの工場で働いた経験があるが、多くの社員が真剣にモノづくりに励んでいたことが印象に残っている。特に、女性社員が三交代のシフトで黙々と作業台に向かって仕事に集中していたのを見て、マレーシア人の真面目さを思い知らされた。結果、製造業が長期に渡ってマレーシア経済を牽引し、「Made in Malaysia」は世界市場から信頼を得るに至っている。

しかし、そうした優位性も永遠ではなく、いまは追いかける側から追いかけられる側となっている。今後、マレーシアの製造業がどのような転換を図っていくのか、個人的にも注目したい。

マレーシアにおける中国の存在感

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11月18日、プノンペンにおいてナジブ首相と中国の温家宝首相の会談が行われた。会談において、両国は2013年から2017年の「5ヵ年経済協力プログラム」の調整を継続することで合意、数週間以内に中国から計画案が提出される見込みという。

2009年以降、貿易額において中国はマレーシアにとって最大の取引先であり、輸出・輸入共に年二桁の伸びを示している。マレーシアからの輸出においては、電気・電子製品、パームオイル、化学が主要品目となっており、輸入については電気・電子製品、機械、化学、家電製品・部品となっている。


[マレーシア国別輸入額、2011年(RM100万)]
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[マレーシア国別輸出額、2011年(RM100万)]
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この「5ヵ年経済協力プログラム」においては、農業、インフラ、製造、産業、投資、サービス、卸売り、小売、鉱物資源、工業団地、輸出加工区、ロジスティックス、衛生と幅広くカバーされ、実際に両国は中国における「中国-マレーシア欽州工業団地(QIP)」、そしてマレーシアの「クアンタン工業団地(KIP)」、「Gemas-Johor Baru rail link project」の完全履行に向けて動いている。また、最近だと南車集団との協力によるマレーシアでの鉄道車両製造について、マレーシア政府と合意に至るなど、大型プロジェクトが続いている。このように、中国はマレーシアと政府レベルでの関係強化を強めてきており、反対に日本の存在感は薄れてきているように感じる。

日本では、尖閣諸島問題から中国国内で反日暴動が多発し、経済活動に大きな影響を及ぼしている。そうした事情から、南シナ海で同じような問題を抱え、親日であるアセアン諸国ともっと接近するべきと言う話題をよく耳にする。しかし、経済的な繋がりにおいては、アセアン各国は日本よりも中国を重視せざるを得ない状況にあり、中国政府も国家レベルで各種経済協力を打ち出すなどし、外堀を固めつある。そうした効果もあってか、ナジブ首相がWall Street Journalで受けたインタビューにおいては、中国の台頭は前向きに捉えるべきで、脅威ではないとの発言を行っている。また、東アジアサミットにおいても、ナジブ首相は「南シナ海問題を国際問題化すべきでない」と、中国を擁護することで親中姿勢を示している。

更に、中国の南シナ海問題に対するアプローチも日本に向けているものとは異なり、アセアン諸国に対して平和的な解決に向けて努力しましょうという姿勢を示している。さらに、マレーシア国内の場合だと、中国とマレーシアの間で南シナ海を巡って争いがあるということはあまり認知されておらず、問題意識が希薄と言える。また、マレーシア国内には多くの中国系マレーシア人が在住しているが、現地中国紙の場合は中国本土の情報ソースに依存していることもあり、内容が中国寄りで、尖閣諸島の問題においては日本が悪いという意見が多いように感じる。そうした意味において、日本がアセアン諸国と同調できる可能性は低いだろうし、既に時期を逸したように見える。

90年代であれば、ルックイースト政策や日本企業の進出などの恩恵から、確かにマレーシア国内における日本の存在感は際立っていた。しかし、ここ最近は大手日本企業の撤退が続き、逆に安価な中国製品が市場に溢れ、政治的な関係強化もあって中国への依存度が増している。

それでも、日本の技術力の高さに対する評価は依然として揺るいでおらず、政府としてもマレーシアが先進国入りを果たすために重要なファクターとなっている。これまでは、安価な労力を武器に製造業において強みを見せていたが、それだけだと経済発展に限りがある。特に、最近は国内の賃金上昇によってコスト性での競争力は失われている。政府としては、グリーン技術、環境技術、バイオテクノロジーや情報通信技術などの分野において日本から先端技術を取り込み、高付加価値国へ発展することを目指している。言い換えれば、日本からの協力も『量』から『質』へと転換することが求められているのだろう。そうした意味において、日本はまだアドバンテージを有しているだろうし、それを梃子としてアセアン各国の経済発展に大きく寄与することで、存在感を回復できると期待する。

マレーシア盗難事情

先日、KLIA貨物から1407台のGalaxy Note IIが盗難被害に遭いましたが、マレーシアは世界的に見ても盗難被害の多い国に位置づけられています。こうした大きな盗難被害は年に数回ほど発生しており、年々深刻さを増しています。日系の小売店においても、大量に商品が紛失する状況に頭を悩ましており、巨額の損失を被っています。以前、大手日系小売店でパートとして働いている人に聞きましたが、倉庫のセキュリティーは不十分で、誰でも容易に商品を持ち出すことができると言っていました。

こうした状況に対し、企業側は監視装置を増やしたり、警備員を増員するなどの措置で対応していますが、効果的なソリューションとはなっていません。監視装置は容易に破壊されたり、メンテナンスされていなかったりと問題を露呈しています。さらに、警備員が盗難そのものに関与している事例が多く、人に依存する監視システムは有効とは言えません。

私も、こうした状況に対してRFID技術の導入・利活用を提案しましたが、中々受け入れてもらえませんでした。費用対効果は十分でも、高額な初期投資、そして確実に効果を期待できるかどうか分からない点を考慮すると、どうしても二の足を踏んでしまう傾向にあります。

本プレゼンテーションは、こうした状況に対してRFID技術が効果的であることを説明するために、以前勤めていた会社で作成したもです。データそのものは面白い内容でしたので、今回一部内容を再編し、マレーシアの盗難状況に焦点を当ててみました。





多分、マレーシアのこの分野において、RFID技術の利活用が活発化するのには更なる時間を要するでしょう。GS1マレーシアの方も、マレーシア市場は商品のロスや盗難が多く、RFID技術が寄与できる市場であると言えるが、企業側はこうした新しいものには中々投資したがらない傾向にあると指摘していました。さらに、最近では燕の巣管理や税関管理において、業界からRFID技術の利用に対して強い反発が出ており、より難しい状況にあると言えます。

個人的には、国内の大手小売店によるRFID技術の導入によって、効果と費用対効果が可視化されれば、市場が大きく動くと期待するが。

楽天、マレーシアでのサービス開始

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11月1日、楽天からマレーシアでのオンラインサービスを開始したことが発表された(楽天、マレーシアにインターネット・ショッピングモール「Rakuten Online Shopping」をオープン)

今年5月末にマレーシア進出を発表して、5ヶ月ほどでサービス開始という速さは凄い。楽天による東南アジア進出は2009年のタイ、そして2011年のインドネシアに続く3ヶ国目で、今回は現地パートナーなしでゼロから事業を立ち上げたという。報道では、「40を超える有力店舗による充実した商品を取り揃えており、1万1000以上の取扱商品をネット上で閲覧・購入し、レビューを書くことができる」としているが、実際にサイトを見るとまだまだコンテンツが充実していない印象。それでも、短期間の準備期間でサービスを開始したことを考えると十分だし、これから徐々に出展を増やしていき、日本のように充実したサービスを提供してもらえると嬉しい。

私自身、マレーシアに住んでいて特に困るのが、欲しい商品がなかなか見つからないと言うこと。以前、ガラス棚の部品が無くなったので購入しようと思ったら、どこに行っても売っていない。どう見ても標準仕様とされているような部品にもかかわらず、ある店では特注で作らなければいけないと言われるし、家具専門店に行くと部品だけの個別売りはしていないなど。10軒近く回ってようやく入手することができたが、そこにたどり着くまでにかなりの時間を要している。他にも、文房具でこんなものが欲しいとか、仕事で使う道具が欲しいとなっても、直ぐに見つかることはない。が、日本の楽天でそうした欲しいものを検索すると、すんなりと情報が出てくるし、簡単に買うことができる。私以外にも、こうした経験をしている人は多数いると思うし、楽天がマレーシアでこうした痒い所に手が届くような利便性の高いコンテンツを提供できればと期待する。

ただ、マレーシアのe-commerce市場はあまり開拓がされていないことから、市場規模もそれ程大きくない。Nielsen Malaysiaが発表した報告書によると、マレーシア人がオンラインショッピングに費やした金額は、2010年でRM 18億でしかない。また、その多くは旅行関係でしめられており、全体の24%に達している。ご存知のように、マレーシアでは格安航空のAirAsiaが業務を行っており、全てオンラインにて航空券を買う必要がある。そのため、オンラインショッピングにおいて旅行関係の比率が高くなっており、結果この分野の成熟度は高くなっている。

逆に、そのほかの商取引についてはまだ発展途上にあり、Alexaのアクセスランキングを見てもSNSやローカルの情報サイトのような人気はない。Mudah.myやLelong.com.myというローカルのオンラインショッピングサイトも健闘しているが、日本のように商品が充実しているとは言えない。また、海外のオンラインサービスもマレーシア国内で事業展開しているところはまだ少なく、最近になってグルーポンやiTunesが参入してきている程度。オンラインでモノを買う場合は、アマゾンやeBayなど海外のサイトに依存している状況と思われる。

消費者の側からしても、オンラインによる商品購入はローカルサイトだと騙されるなどのリスクが高いことから、敬遠する傾向にあるのかも知れない。特に小規模な店舗だと、消費者から信頼を得るのが難しいと思うが、楽天の審査によって高信頼性を提供できれば、そうした状況が変わる可能性は高いだろう。

あと、「Rakuten Online Shopping」のサイトを見ていると、パートナーとしてヤマト運輸の「TA-Q-BIN」の文字が。そう言えば、昨年からヤマト・トランスポート・マレーシアがマレーシア国内での宅配サービスを手掛けており、クランバレー内ではTA-Q-BINのロゴが描かれた車両をよく目にするようになった。また、最近ではバイクでの配達も行っているようで、ロゴのついたバイクも頻繁に見かける。首都圏だと、どうしても交通渋滞が酷いため、電話で依頼した時間に宅配業者が到着しないことが頻繁に発生する。バイクだと交通渋滞に関係なく宅配業務を行うことができるので、マレーシアの実情に適した戦略だといえる。

それと、楽天は日本では誰もが知っている会社だが、マレーシアだとどうしても知名度が低く、いかにして消費者に認知されるかが重要になってくると思う。ユニクロの場合、KL市内を走るバスに広告を出すなどして一気に知名度を高め、開店当日は入場制限を行うほどの活況を呈している。


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これまで、日本企業のマレーシア進出と言えばほとんどが製造業であったが、ここ数年は幅広い業種が参入してきている。日本食レストランが急増し、ダイソーやユニクロも現地で人気となっている。そして、今回はオンラインショッピングの分野で楽天の進出と、日本人在住者にとっても嬉しいニュースが続いている。

イオン、カルフールのマレーシア事業を買収

11月1日、イオンは仏小売り大手カルフールのマレーシア事業をを買収すると発表(当社によるカルフール社のマレーシア事業買収に関する株式売買契約締結及び株式買収手続きの完了についてのお知らせ)







今回、イオンは1億4,700万ユーロでカルフールのマレーシア事業の全株式を取得するという。マレーシア国内の業界3位であるイオンが、4位のカルフールを手中にすることで業界第2位となり、両社を合わせた売上規模は1,220億円に達する。経営不振が続くカルフール・マレーシアの売却については数年前から噂されていたし、いつもイオンが買手先候補としていつも名前が挙がっていたが、ようやく決着を見たという印象。

イオンのマレーシア進出は1984年のJaya Juascoを皮切りに展開されており、日系企業としても古い歴史を有している。私も1995年にマラッカに出張で来ていた際によく利用していたし、ジャスコを見るとほっとした記憶がある。今では、マレーシア国内に総合スーパー25店舗、ハイパーマーケット29店舗を構え、国内で存在感を示している。そして大手小売店が激しい競争をする中、売上高では業界第3位にまで成長している。

先日もジャスコ会員向けのバーゲン・セールスに行ってきたが、開店前から凄い人数の買い物客が行列を作っていたし、日本のバーゲンセールスと同じような印象。バーゲンとなると、万国共通なのだろう。ただ客層を見ると、買い物客の多くは中国系で占められており、店員はマレー人といった内容で構成されている。いずれにしても、ジャスコはマレーシアの消費者にとって身近な存在となっているし、他店との差別化もできていると思う。


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カルフールについては、マレー半島の都市部を中心に26店舗を運営、業界において売上高4位に位置しているものの、経営は厳しい状況が続いていた。実際、近くの店舗に行っても客足は少なく、なにか暗い感じがある。逆に、同じような店構えのテスコは連日多くの客でにぎわっており、国内市場において急拡大を続けている。

発表において、イオンは2020年までにマレーシア国内で100店舗体制を築き、業界をリードしていくことを目指すとしている。これだけの数になると、どこに行ってもジャスコの看板を目にすることができるだろう。カルフール・マレーシアはイオン・ビッグ・マレーシアに名称を変え、イオンとしては商品等の共同調達や経営効率化の追求、更にはノウハウの吸収を目指しているという。ただ、ジャスコとカルフールだと店構えや戦略が随分異なるような気がするが、どのような店舗経営をしていくのか期待したい。

そして今回、アセアン域内のグループ事業を統括するアジア本社がクアラルンプールで業務を開始、日本と中国、そしてアセアンに3つの本社が設置されることになった(「イオングループアセアン本社」の始動について)。昨今、中国での反日姿勢や賃金高騰などの不安要素から、リスクヘッジとしてアセアン域を一つの拠点としてみる動きが活発化している。また、市場としても、これまで中国一辺倒であったものが、アセアンを一つの市場として捉えることで巨大な潜在性を見出せるようになり、所得上昇と共に高い購買意欲も期待できる。ホンダの事業戦略においても、アセアンを一つの拠点・市場として重視しており、マレーシアに注視していることが伺える。

個人的には、アセアン域でのRFID技術の利活用によって、より先進的で効率的なシステムを構築し、業界を牽引して欲しいと思う。マレーシアを始め、アセアンの小売業業界でのRFID利活用は驚くほど進んでいない。アセアン域を統合するのであれば、RFIDによる物流・流通管理、在庫管理では高い効果を期待できるであろうし、物流・流通における商品紛失といった問題にも寄与できると考える。特に、マレーシアにおける商品紛失は域内でも高い水準にあり、多くは内部の人間が関与しているため、なかなか従来の方法では解決できない状況にある。また、現在使用されている会員カードは磁気方式となっているが、NFCなどの自動認識技術へ移行することで、数多くのベネフィットを会員へ提供できるし、運営側もペーパーレスによる経費削減などの効果を享受できるだろう。私自身、過去に間接的ではあるが、ジャスコ関連の案件として、ショッピングカートの管理(これもかなりの数で盗まれている)、バウチャー偽造対策において提案を求められたことがある。結局、話だけで実現には至ることができなかったが、RFID技術は多くのベネフィットを提供できると信じている。

総務省による放送コンテンツ海外展開

11月2日、総務省は「放送コンテンツ流通の促進方策に関する検討会」を開催することを発表、放送コンテンツの海外展開とスマートフォンやスマートテレビに対応したコンテンツ配信などについて協議を行うらしい。

マレーシアでは、衛星放送のアストロによってNHKワールドプレミアムを視聴することができるが、スポーツニュース等においては著作権・放送権の問題から動画が放送されず、静止画に差し替えられることが多々ある。特に、オリンピックの映像は全て視聴できず、海外在住者にとっては寂しい状況が続いている。米国や中国、韓国など他国の放送コンテンツを見ていても、このようなことを行っているのは、日本以外にはない。

また、オンライン放送においても、海外からのアクセスが制限されており、有料も含めて視聴できないサービスが多い…。グローバル市場においてネットワーク環境が充実し、通信速度も格段に向上した結果、インターネット経由で動画を視聴することが普通になってきており、今後の放送業界において大きな役割を担うことが期待されている。その結果、多くの放送局がYouTubeと提携することで放送コンテンツを配信したりしているし、マレーシアでもアストロがYouTube上でローカルコンテンツを無料で配信している。世界は一様にそのような方向に進んでいるにも関わらず、日本だけが異なる方向に進もうとしているようにも見える。

無料オンラインテレビの『1Malaysia TV』においても、中国や韓国の放送コンテンツが配信されるなど、各国の放送局は積極的な事業展開を行っている。ニュース番組でも、中国のCCTVがオンラインや衛星放送などでコンテンツを配信しており、日本の放送コンテンツは海外では影が薄い。結果、国際問題になると中国側の情報は膨大に世界中に配信されているが、日本から発信される情報は日本人以外の視聴者の目にはほとんど触れない状況が生まれていると感じる。そうしたこともあり、尖閣諸島の問題において、マレーシアでは中国側の情報が大勢を占めてしまい、日本が間違っていると言う認識が広がっている。

ただ、日本のコンテンツに対する人気は高く、世界市場において需要はかなり高いと思う。今回の報道では、「日本のドラマやアニメなどの放送番組の輸出は、政府の支援を受けた韓国やイギリスなどに押され、平成22年度の輸出額はおよそ62億5,000万円と、ピークだった平成20年度の3分の2に落ち込んでいます」と指摘されているが、多分、世界的にブロードバンド環境が充実してきた影響も大きいと思う。日本のドラマやアニメは動画サイトで無料視聴されているし、人気アニメに至っては日本での放送終了後、直ぐに英語や中国語、スペイン語などの字幕が付けられて配信されており、視聴者数も凄い数字に上っている。著作権を侵害する行為ではあるが、これは日本のアニメが海外でも依然として高い需要を有していることを証明していると思うし、この流れを止めることはできないだろう。

今回の検討会では、半年後を目処に報告書を取りまとめるとのことだが、既に放送コンテンツの海外展開において日本はかなり出遅れており、孤立している印象が強い。せっかく、日本は情報通信インフラで世界の先端を走っており、豊富な放送コンテンツも有しているのに、各種規制のために時代にそぐわない対応しかできていない状況は寂しく感じる。

インターネット技術の発展によって世界はボーダレス化が進み、時間と空間を越えた商取引が容易となっている。当然、仕事のやり方も変わり、企業は急速に新しい環境へ適する必要が生じ、適合できない企業は淘汰されていくことになった。そして、国の競争優位性を決めるファクターとして、この環境の変化に迅速に適した規制や法の整備が重要となり、エストニアのような小国がそれを証明している。放送コンテンツにおいても、同様なことが言えるだろう。

「放送コンテンツ流通の促進方策に関する検討会」については、個人的には状況が大きく改善され、海外においても魅力ある日本の放送コンテンツが多く視聴できる環境となることを期待している。ただ、もう少し素早いアクションが欲しい…。

日本車メーカー、マレーシア市場で積極姿勢

最近、日本車メーカーによる積極的なマレーシア市場展開がよくニュースで取り上げられている。一時期、価格面で韓国メーカーが目立ってきていたが、最近になって状況が変化してきたように感じる。特に、ホンダからは勢いを感じるニュースが多くリリースされている。

まず10月29日には、国民車メーカーであるプロトンとの提携に関して協議が行われるとの記事が大きくリリースされた。プロトンは経営不振からDRBハイコム傘下に入り、経営再建が注目されていた。世間では、フォルクスワーゲンやフォードなどの欧米の自動車メーカーとの提携が噂されていたが、何も発表がないまま時間だけが経過していた。そして、突然ホンダとの提携協議のニュースが配信され、驚きといった印象が強かった様子。ただ、両社はHICOM-HONDA ManufacturingやDRB-Oriental-Hondaの設立などで事業を行っており、プロトンがDRBハイコム傘下に入った時点で選択肢と入っていたのだろう。また、今後環境問題からハイブリッド車の開発・生産を視野に入れているプロトンにとって、ホンダとの提携は追い風になりそう。あと、プロトン車の多くはCamproエンジンを搭載しているが、それに代わるエンジンが求められている。

次は、ホンダのハイブリッド車に関するニュース。ホンダは、政府減税措置施行に伴って2007年からハイブリッド車を他社に先駆けて投入、現在では、インサイト、ジャズ、CR-Z、シビックという4車種のハイブリッド車が市場に投入されている。今年は1万台の販売台数を見込んでいたが、9月30日の時点で既に11,472台を販売、現地ハイブリッド車市場の66%(2012年8月)を占有している。特に、インサイトの販売はホンダの全ハイブリッドの55%に達しており、人気の高さを示している。確かに、KL市内だとインサイトをよく目にすることができる。





ただ、ハイブリッド車輸入に関する政府減税措置は来年末までの時限性であり、マレーシア政府としては現地生産に対して優遇措置を行うことを発表している。これに対しても、いち早く手を挙げたのがホンダであり、2012年中にもジャズハイブリッドの現地生産が開始される予定となっている。他社が二の足を踏んでいる間に、マレーシア国内のハイブリッド車市場におけるホンダの存在感を高め、更にアドバンテージを広げることを狙っているのだろう。

この他にも、トヨタはプリウスを市場投入し、日産は他社に先駆けて電気自動車のパイロットプログラムを推進、認知度を高めようとしている。環境性能に関しては、マレーシア市場においても日本メーカーが積極的に事業展開しており、先日開催された環境展『IGEM2012』においても技術力の高さと存在感が際立っていた。

そして、国民車メーカー保護によって価格劣位があるにも関わらず、日本車メーカーがその地位を長年維持することができたのは、やはり高品質による信頼性の高さだろう。JDパワーが行った自動車初期品質調査においては、主要5部門の全てにおいて首位に立っている(2012 Malaysia Initial Quality Study )


[2012 Malaysia Initial Quality Study ]
IQS_2012_1.png


プロトンのホンダとの提携が実現したら、新車種の投入といった華々しい部分での対応だけでなく、こうした品質や信頼性、サービスといった面の強化についてもノウハウを吸収できればと期待する。そうすれば、消費者の購買判断が価格面だけでなくなり、プロトンの企業体質強化にもなるだろう。DRBハイコムはプロトンのグローバル戦略を計画していると聞くが、多分、今のままで世界市場へ展開していくと、大きな成果を得ることはできないと思う。近視眼的な戦略ではなく、長期に渡って成長できる戦略が必要だろう。

繁栄指数、マレーシアは45位に後退

10月30日、Legatum Instituteから『THE 2012 LEGATUM PROSPERITY INDEX』が発表された。調査対象は142ヶ国・地域となっており、「経済」、「起業家精神・機会」、「政府統治」、「教育」、「健康」、「安全・セキュリティー」、「個人の自由」、「社会資本」の8項目で評価されている。







総合評価での首位はノルウェーとなり、デンマークとスウェーデンが続き、北欧諸国が強さを見せた。アジア勢では、香港の18位が最高位で、シンガポール19位、台湾20位と言う結果に。各国とも、経済において強みを見せており、全体の順位を押し上げている。

次にマレーシアについては、総合評価で45位となっており、前年の43位から順位を2つ下げている。ただ、アセアン諸国においてはシンガポールに次ぐ評価で、周辺諸国の中では繁栄指数が高い結果となっている。

各項目別で見ていくと、やはり経済面での評価が高く、15位に。詳細を見ていくと、ハイテク輸出やマーケットサイズが世界平均を大きく上回っており、インフレが低く抑えられているなど世界平均よりも良い結果が得られている。

逆に低評価となったのが、「個人の自由」と「社会資本」の2つ。まず「個人の自由」については、おおむねどの機関が実施した報告書でも評価が低く、マレーシア国の課題となっている。本報告書の詳細を見ていくと、「選択の自由の満足度」は84%、「少数民族が生活するに暮らしやすい」では73.90%がはいと回答しており、世界平均を上回っている。だが、「移民が生活するに暮らしやすい」では、はいと回答したのは18.40%でしかない。また個人的には、「選択の自由の満足度」についても、教育や住宅、職業などにおいて民族別に有意差があることを感じるし、一概に満足しているようには思えない。

「社会資本」については、前年の75位から大きく評価を下げている。この項目、結構面白い質問事項が並んでいる。まず、「過去1ヶ月に見知らぬ人を助けましたか?」に26.80%が、「あなたは大半の人を信じることができますか?」には14.10%がはいと回答。マレーシア人はお節介なぐらい友好的との印象があったが、結構数字が低い…。

あと目に留まった評価項目としては、教育において「あなたは教育の質に満足していますか?」に92.30%がはいと回答している。ただ、ここ最近の報道や周辺の人達の話を聞く限り、それほど満足度が高いようには見えないが。特に、最近は英語力に関する質の低下に懸念が広がっており、授業時間が短いこと、教師の質低下も結構指摘されている。


[アジア主要国の2012年繁栄指数]
Legatum_Institute_2012_1.png

[マレーシアの繁栄指数サブインデックス比較]
Legatum_Institute_2012_2.png



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