マレーシア新時代‐高所得国入り ‐ 三木敏夫著


マレーシア新時代‐高所得国入り‐ (創成社新書49)マレーシア新時代‐高所得国入り‐ (創成社新書49)
(2011/08/10)
三木 敏夫

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著者は、マレーシアが農業国から工業国へ移行する変遷を目にしてきた経験もあり、本書に中には私の知らなかった情報も多く見受けられた。特に、マレー人やイスラム教徒からの視点に重きが置かれており、この辺はマレーシアで仕事をする上でも参考になると思う。中でも、ブミプトラ政策に至る背景やその発展などの記述は興味深い。

ただ、マレー人からの視点が重要視されるあまり、中国人やインド人の国内での苦労や努力などがかなり薄い印象がする。あと、生活一般や市民生活などについては、情報に乏しいようにも…。例えば不動産に関して、KL市内であれば一ヶ月当たりRM5,000程度、郊外であればRM3,000程度の賃貸料とあるが、実際にはそんなにしない。KL市内だと、セキュリティーがしっかりしたコンドミニアムでも、スタジオタイプであればRM2,000台から見つけることができる。

また、著者はイスラム教のお陰でマレーシアは汚職や腐敗が少ないと指摘している。確かに、アフリカ諸国や中東諸国と比較すると少ないだろうが、マレーシアは決して汚職や腐敗が少ないカテゴリーには入っていないと思う。特に、政府役人や公務員の汚職や腐敗が酷く、その多くはマレー人で構成されている。私自身、イスラム教徒だから清廉潔白ということはないことを経験している。
あと、全体を通して文章の繰り返しが多かったり、話が突然変わったりとちょっと読みづらい部分が見受けられた。

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MaxisのFTTHサービス、「home」- その3

9月3日、予定通りMaxisとTMの技術者が「Maxis home」のインストレーション作業に来た。モデムの在庫切れ(実際にはルーター)やIP Phone接続不具合によって、申し込みから1ヶ月以上も待たされたこと、尚且つカスタマーサポートの対応が悪いこともあり、今回インストールできなければTMのunifiに変更する考えでいた。

インストレーション作業そのものはスムーズに進み、2時間程度で全てが終了。普通にブロードバンドへ接続でき、前回使えなかったIP Phoneも問題なく動作している。TMのスタッフ曰く、前回のIP Phone接続問題はTMの問題だったと言う…。Maxis homeのフォーラムを見ると、IP Phoneに関するトラブルが結構出ているようだが、これもTMが原因なのだろうか?

インストレーション機材は以下の写真の内容。モデムはTMが提供しており、ルーターと電話端末はMaxisとなっている。


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また、今回コンドミニアム内の配線盤を見せてもらったが、そこにHSBB(High Speed Broadband)の文字。なるほど、これが導入されているコンドミニアムだけが、unifiやhomeをインストールできることになる。


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早速、Speedtest.netで通信速度を測定してみる。10Mbpsの契約に対して、下りが9.47Mbps、上りが11.04Mbpsという結果。ラストワンマイルが光ファイバーではないが、きちんと速度が出ており一安心。これがずっと安定してくれれば嬉しいが。


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Maxisの技術者曰く、この周辺でMaxis homeをインストールしたのは貴方が初めてですという。Ampang地区の外れではあるが、それほど田舎でもないのだが…。いずれにしても、ようやく普通にブロードバンドが使用できる環境を整備できた。

1Malaysia Broadband Affordable packages

9月4日、情報通信文化省のライスヤティム大臣はインターネット普及が遅れている地域を対象とした「1Malaysia Broadband Affordable packages」を発表。

現時点では、サバとサラワク、トレンガヌ、クランタン、パハンの5州が対象とされており、9月16日からサービスが開始される。有線接続の場合、通信速度は384kbpsで月額利用料金はRM38、利用量に上限設定なし。無線接続だと512kbpsの速度で、RM20からRM25という価格設定、利用上限は1GB。速度は低速であるものの、価格が安価に抑えられており、低所得者向けとされていることが分かる。ただ、通信方法やデバイス価格等についてはまだ不明であり、正式発表を待つ必要がある。

このプロジェクト、政府が進めるNational Broadband Initiativeの一つに位置づけられており、地方のブロードバンド普及率を向上させることを狙いとしている。今年7月の私のブログ『マレーシアのブロードバンド普及率、19.6%に上昇』でも示しているが、現在、マレーシア国内ではブロードバンド普及で都市部と地方で大きな格差が生じている。今回対象とされた5州はいずれも全国平均を下回っており、特にサバは30%台でしかない。


[州別100世帯当たりのブロードバンド普及(2012.Q1)]
mcmc2012Q1_2.png


今回の発表においてライスヤティム大臣は、「We need to improve penetration rates in Sabah, Sarawak, Kelantan, Pahang and Terengganu which stand at only 40% to 50% compared with the national rate of 64%」 と述べ、状況改善の必要性を訴えている。

また、今回サービスを提供する通信会社を代表してCelcom AxiataのShazalli Ramly社長は、「Providing an affordable broadband package for the underserved market is laudable, and in line with the 1Malaysia spirit. We will introduce the starter packs within a few days」と述べている。

マレーシア政府は、2020年までにブロードバンド普及率100%を目指しており、そのためには如何にして地方の普及率を増加させるのかが大きな課題となっている。今回は5つの州が対象だが、成果が出てれば他の州へも展開していく予定という。この数年でどれだけ事態が改善されるのか、期待して動向を見たいと思う。

AFAM、RFIDの利活用をボイコット

マレーシア税関がRFIDによるコンテナトラッキングシステム『secured trade system』を9月1日から開始することが発表されていたが、Air freight Forwarders of Malaysia (AFAM)はそのシステムの使用をボイコットすることを決定。

本システムは、マレーシア税関とマレーシア通信マルチメディア委員会、そしてRFIDソリューション企業のSmartag solutionsが進めていた案件。随分前から国内で実証試験を展開してきていたが、商用化前に大きな問題にぶつかることになった。

このマレーシア通信マルチメディア委員会とSmartag社の連携は、この他にもRFIDによる燕の巣管理を計画しているが、国内では多くの事業者や団体から反対されている。この2つの案件は、いずれもマレーシア政府の進めるETP案件とされているが、暗礁に乗り上げた形となっている。あと別の企業の案件として、数年前には鮮魚を入れるトレーにRFID技術を適用することが決定されていたが、漁業団体から大きな反発を受け、大きな問題となったこともある。この時は、誰がRFID付トレーの費用を負担すべきかが問題視されていた。自動車のライセンスプレートについても、RFIDによる自動認識が計画として挙がっていたが、これもライセンスプレートを作製する事業者から反対され、結局中止となっている。

今回のボイコットについては、国内300の事業者がRM2,000のデポジットをSmartag社に支払う必要があり、総額でRM600万もの費用が発生する点が挙げられている。また、一方的な契約内容についても事業者は憤慨しており、Smartag社が傲慢であるとの意見も出ている。

私自身、最近までRFID業界働いていたこともあり、マレーシア通信マルチメディア委員会とSmartag社の連携に関してはよく耳にしていた。マレーシアでは、多くのプロジェクトが政治力主導で進められており、特にRFID技術のように欧米諸国に比べて普及の遅れている分野においては、どうしても政府系案件に集中してしまう。実際、MyKadやパスポート、Touch’n goなどは政治力で実導入が行われてきた。そうした意味においては、Smartag社はきちんと市場を理解しており、最も成功の確率が高い方法を採ってきたといえるし、短期間でRFIDソリューションの主要プレーヤーにまで至ることができた点は凄いと思う。技術的にも、自社開発のEPCISを持っている点なども評価できるだろう。

しかしながら、実証試験を通じて業界内でのコンセンサスを取りながら、商用化へ移行するというプロセスで今回はつまずいてしまったように感じる。実際、RFIDシステムはだれが費用負担を行うのかと言う点でいつも議論されてきたし、民間企業の多くは導入コストや運営費用の面からどうしても二の足を踏んでしまう傾向にある。特にマレーシアの場合、外国人労働者の雇用によって人件費がかなり安価となっている。RFIDによるセキュリティー性や効率性というアピールだけでは、なかなかROIを見出すことができていない。マレーシアに適したビジネスモデルを考える必要があるのだろうが、まだ解は出ていない。

こうして見ると、マレーシアと言う国はRFID技術の適用が困難な市場であると言える。政府自身は、新しい技術や先端技術の導入に積極的なものの、民間市場が対象となると事情が異なる。私自身、マレーシア国内で多くのRFIDプロジェクトを推進してきたが、民間市場ではほとんど実績を残せていない。やはり、市場が立ち上がるまでは、政府予算で政府系案件を進めるべきなのだろう。

国際競争力ランク、マレーシアは25位に後退

9月5日、世界経済フォーラムより各国の競争力を評価した『Global Competitiveness Report 2012-2013』が発表された(スイスに次ぎ、地域情勢が混迷する中、アジアの虎および日本は競争力順位でアジアを引き続き先導)。調査対象は144カ国・地域で、各国のインフラ整備や保健、教育、技術、金融、経済環境など12分野での評価が指数化されている。





まず総合首位は4年連続でスイスとなっており、ここ最近は強みを見せている。そしてシンガポールが昨年に続いて第2位との位置づけ。日本は前年の9位から一つ順位を落として10位という結果。

次にマレーシアについては、総合評価は昨年の21位から25位に大きく後退している。とは言え、相変わらずアジアの発展途上国においては首位を維持しており、高い評価を受けていると言える。


[アジア主要国の国際競争力ランキング推移]
WEF_GCI_2012_01.png

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あと、色分けされたマップ情報で世界地図を見ると、マレーシアが世界的に見ても高い競争力であると評価されていることが一目で分かる。





分野別の評価項目を見ていくと、ほとんどの項目で昨年から順位を落としている結果に。特に、インフラとマクロ経済の安定性、そして科学技術への準備が大きく落ち込んでいる。


[マレーシアの分野別ランキング]
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さらに、全文の報告書で示しされている評価詳細を見ていくと、高評価とされているのが「政府規制の負担(8位)」、「業績向上のための政府サービス(4位)」、「投資家保護(4位)」、「農業政策コスト(4位)」、「賃金と生産性(3位)」、「現地資本市場を通じた資金調達(9位)」、「融資の容易性(8位)」、「法的権利(1位)」、「高度ハイテク製品の政府調達(4位)」。

個人的には、「業績向上のための政府サービス」と「賃金と生産性」に関する評価が高すぎるような印象もあるが…。まず「業績向上のための政府サービス」については、確かに近年はETPなどの政府政策によって、マレーシア国内では大型プロジェクトが経済の牽引役を果たそうとしているが、やはり一般的な政府サービスはまだまだ非効率的な部分を抱えており、多くの不満を耳にする。次に「賃金と生産性」については、最近はマレーシア人労働者のコスト上昇に伴い、多くの企業がマレーシアから撤退している状況にある。また、国内でも安価な外国人労働者がいなければ、工場や農園などは事業を運営できないと聞く。

逆に評価が低かった項目としては、「政府財政収支(110位)」、「一般政府負債(100位)」、「中等教育の就学(103位)」、「退職手当費(108位)」となっている。特に「中等教育の就学」については、将来のマレーシアの人材を育てる上で最重要視されるべきテーマだと思うが、最近は教育の質が落ちてきていることが指摘されている。中でも、私自身は英語力の低下は深刻だと感じる。また、マラリアや結核、HIV/エイズによるリスクも高いことが報告書では示されており、保健関係での低評価につながっている。

あと、ブロードバンドに関する評価では、「ブロードバンド契約者数(68位)」、「国際インターネット帯域幅(83位)」、「モバイルブロードバンド契約(64位)」となっており、思ったほどの評価にはなっていない。最近は利用者の選択肢も増えてきており、消費者の購買意欲も高いはずだが、国際的な評価となるとまだまだこの程度なのだろう。世界経済フォーラムも、「Lack of progress in this area will significantly undermine Malaysia's efforts to become a knowledge based economy by the end of the decade」とICT分野での遅れを指摘している。

今回の結果を受け、通商産業省のMustapa 大臣は「This means that Malaysia has to be increasingly focused on technology and innovation to further enhance Malaysia's competitiveness」と述べ、技術とイノベーションへ重点的に取り組むことが必要としている。

TIME dotcom、100Mbpsのサービスを発表

9月4日、TIME dotComより100Mbpsのブロードバンドサービスが発表された(TIME dotCom Delivers 100Mbps Home Broadband)





発表された内容によると、月額利用料金はRM 179(約4,500円)のみで、機器費用や導入コストは無料。更に、屋内も含めてモデムまで全てファイバー接続。契約期間は、競合他社と同様で24ヶ月となっている。価格面だと、TMのVIP20でRM 249(約6,300円)、Maxis home 10MbpsでRM 138(約3,470円)ということを考えると、かなり安い価格設定といえる。なにより、100Mbpsというマレーシア最速のスピードは魅力的。

『TIME Fibre 100Mbps Home Broadband』のパッケージ詳細はこちら

Afzal社長は、「We're raising the bar for Malaysia's Internet service - it puts us at least on par with - or better than - many developed countries around the world」と述べ、先進諸国に負けないブロードバンド環境の整備に自信を見せている。これまで、マレーシアは周辺諸国に比べてインターネット利用料金が割高と批判されてきたが、今回のサービス開始によって国内の競争が活発化し、競合他社もプラン内容を改善してくれれば嬉しい。

とは言え、TIMEがサポートしているのは利益率の高い都市部の高層ビルに限定されている。戸建てや地方では利用できないサービスではあるが、クランバレーとペナンにおいて約10万世帯がTIME社のFTTHを使用しているとされており、今年7月に40万の加入契約を達成したTM unifiの四分の一の市場規模を確保している。

私自身、7月まではTIME dotcomのFTTHを使用していたが、カスタマーサービスはTMやMaxisよりも丁寧で親切だと感じた。通信障害が起こっても、メールで問い合わせれば24時間以内にレスを返してくれるし、なによりワンストップで全てが解決できた。今月、私自身は引っ越しに伴ってMaxis homeを導入したが、カスタマーサポートには全く満足できていない。電話してもたらい回しにされるし、レスも全く返ってこない。実際、TMとMaxisのカスタマーサポートの悪さについては、ウェブ上でも結構話題になっており、早急な改善が望まれている。

都市部においては、ブロードバンドの普及率はかなり高い水準に達しており、各社ともIP電話や動画配信などの付加価値を提供することで市場拡大を図っている。しかし私自身は、今後は通信速度や品質、或いはカスタマーサポートといった面での充実が重視されてくると思う。『TIME Fibre 100Mbps Home Broadband』の開始に伴い、競合他社がどのような動きを見せるのか注視したい。


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