就学支援金の配布

2012年予算案で決定した就学児童・生徒への就学支援金RM 100が、スクールホリデー前の11月中旬に配布された。とは言え、各校とも配布時期はバラバラで、配布に関するガイドラインも明確に示されないままであった。

知人の子供は公立の中等学校へ通っているが、学期末テストが終わったスクールホリデー前は先生が教室に現われず、ほとんどの生徒は登校していないと言う。それでも、まめに登校している生徒へ先生から就学支援金が明日配布されると通達されると、一気にfacebookで情報が伝わり、配布日当日はきちんと皆が登校していたとのこと。日本の金銭感覚だと1万円くらいの額になるので、さすがに皆が期待していたのだろう。

また、名目は就学支援金となっているが、当然子供たちが勉強のために使うわけもなく、遊びや自分が欲しいものへ費やされて終了。Facebook上では、もらったお金で何を買ったか、あといくら残っているなどの話題で盛り上がっていたと聞く。

こうした結果を見るまでもなく、就学支援金は本来の目的とは違うことに費やされることは明白であり、選挙前のばら撒き政策と批判されても仕方がないように感じる。また本来であれば、就学支援金は来年の予算に割り当てられたはずだが、なぜか2011年に履行されている。

私立の学校だともう少し様子は違うと思われるが、それでもマレーシアの教育環境はあまり褒められたものではない。もう少し有意義なお金の使い方があるように感じるが、この政策に関する批判は野党からもあまり聞こえてこない。
そういえば少し前に、台湾の児童と先生が日本の学校に研修に訪れたドキュメントを見たことがあった。私の妻は中国系マレーシア人だが、そこで最も驚いていたのが給食の時間に関するもの。児童達が当番制で給食係りを担当し、食事を運び、皆に給仕するということは日本では当たり前のことだが、マレーシアの人にとっては驚きでしかなかったようだ。あと、児童全員が教室やトイレを掃除することにも関心を持っていた。

マレーシアの学校では、食事は校内の食堂の人の仕事だし、掃除も外で雇った業者がやる仕事と捉えている。だから、自分たちが使う場所や道具を自分たちで管理しようとか、綺麗にしようという概念に欠けているように感じる。妻曰く、こうした作業を子供にさせると、たぶん保護者から猛烈に批判されるだろうと。

そうした影響からか、会社では目の前にゴミが落ちていても拾わないし、蛍光灯が古くなって点滅していても気にしない人たちが多い。エレベーターや電車でも、降りる人がいても気にせずにずかずかと乗り込んでくる人達。大学を卒業していても、こうした当たり前のことができない社会人はかなり多い。

知人が言っていたが、マレーシアは宗教に重きを置いているのにモラルは未発達、逆に日本は宗教に重きを置いていないが、モラルは抜群に優れているという言葉は面白い。いま、マレーシアの人たちは中国人のモラル軽視を批判しているが、日本人から見るとそれ程大差ないようにも感じるが。

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ナジブ首相、中小企業向けプログラム発表

11月23日に開催されたSME Development Councilにおいて、ナジブ首相は中小企業の成長を促進するため、以下の6つのプログラムを発表した。詳細は、「SME Masterplan to Accelerate Growth of SMEs through Comprehensive Actions including Six High Impact Programmes」を参照。

この6つのプログラムは、2012年~2020年を対象とした第2期SMEマスタープランの一つに当るのとこと。プログラムを読んでみるが、原文はかなり難解に感じる…。とりあえず、以下は日本語訳。

- Business Registration System(MyCOID)とNational Business Licensing System(BLESS)を通じ、事業登録と認可の一本化を図ることで手続きを簡素化し、新規ビジネス起業における時間とコストを低減。

- 技術的および財政的援助を含む一連のサービスに、革新的なアイデアおよび連携を促進するため、民間プラットフォームの全国ネットワーク化を行い、技術の商業化プラットフォームを設置。

- 初期段階にある中小企業に融資する中小企業投資プログラム。

- 新市場に乗り出す新規輸出業者、および中小企業向けにカスタマイズされた援助を提供するGoing Export (GoEx)プログラム。

- 調達資金、市場アクセス、および人的資本開発による支援で、地場の優秀企業を育成するCatalyst programme。

- 零細企業を含む40%の低所得者層に、地域改革を促進する包括的なイノベーション。

これらプログラムにより、中小企業の年間成長率を6.5%から2020年には8.7%にまで高めることを目指している。また、一人当たりの労働生産性を2010年のRM 47,000から2020年にはRM 91,000へと10年間でほぼ倍増、GDPへの寄与率は同32%から41%、輸出比率を19%から25%、労働人口を59%から62%へそれぞれ引き上げることが目標値として挙げられた。

マレーシアの場合、経済活動においては政府系企業や大手民間企業にばかり注目が集まっているが、日本と同様に製造業においては多くの中小企業がその土台を支えている状況にある。日本と比較すると、技術的水準や労働者スキルなどはまだまだ発展途上ではあるが、グローバル性では日本の中小企業以上のダイナミズムを持っており、それが強みとなっている。私自身、日本の中小企業とマレーシアの中小企業うまく協働できれば、相互補完できる関係を構築できると感じている。

今回の政策発表に当り、ナジブ首相は「SMEs play an important role in the country's economic development and even though we have achieved a level of success in this sector we must ensure it is on par with that of developed nations」と述べ、ポジティブで大胆なステップを踏む必要があるとしており、確かにそれが目標値に反映されている。

Returning Expert programme、576人が帰国

頭脳流出に歯止めをかけるため、今年1月から実施されている「Returning Expert programme」だが、今回首相府から576名のマレーシア人が帰国したと報告された。(Returning Expert programmeについては、過去記事「世界銀行、Malaysia Economic Monitorで頭脳流出を指摘」を参照)

この数字を見た第一印象は、思っていた以上の数がマレーシアへ帰国したということ。基本的に、マレーシアを離れた知識労働者の多くは、マレーシア社会が公正でないことに見切りを付け、新天地で公正な機会を見出している。だから、マレーシアへ帰るとした時のインセンティブを尋ねられると、「民族による不公正是正」が最も重要と回答しており、5年間の所得税を一律15%としたり、マレーシアで組み立てた自動車に限り、2台までは自動車税を免除といった措置は魅力的とは言えないだろう。

さらに、約1年で576人が帰国しても、頭脳流出がそれを遥かに上回っている状況に変わりはない。国別で見ると、シンガポールへの頭脳流出が群を抜いており、その数は2010年で18万4,000人とされている。なぜ、元々同じマレーシア国であったシンガポールにこれほどの知識労働者が流出しているのか、両国の違いは何かを政府は真剣に考える必要があるだろう。


[2010年におけるマレーシア人の海外流出人数(1,000人)]
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(海外移住は0歳以上、頭脳流出は25歳以上)


マレーシア国内では、このような状況に国民の苛立ちも聞かれる。よく耳にするのが、「マレーシアは先進諸国へ高スキルの労働者を輸出し、発展途上国から大量の単純労働者を輸入している」というもの。それに伴い、都市部では外国人労働者による犯罪も顕著化してきており、深刻な社会問題となってきている。

いずれにしても、国内の知識労働者がマレーシアを魅力的なビジネス環境と感じることができない限り、この頭脳流出は続くであろうし、それは国の国際競争力へも反映される。「Returning Expert programme」そのものも、抜本的な政策を打ち出さない限り、帰国者の数が劇的に増加することはないだろう。やはり、国か成長する上での根幹は人であり、マレーシアが先進国を目指す上で最も注力すべきところだと言える。

ナジブ首相、National Biomass Strategyを発表

11月21日、BioMalaysia 2011 & The 2011 Pacific Rim Summitのオープニングにおいて、ナジブ首相は『NBS: National Biomass Strategy』についての発表を行った(OPENING CECEREMONY OF BIOMALAYSIA 2011 & THE 2011 PACIFIC RIM SUMMIT ON INDUSTRIAL AND BIO ENERGY)







オープニングセレモニーにおいて、ナジブ首相は『National Biomass Strategy』が2020年には最大RM 300億の収益をもたらす潜在性を有しており、7万人の新規雇用が創出できるとしている。また、7万人のうち4万人は高スキルの仕事になると言及。さらに、Ministry of Science, Technology and InnovationとMalaysian Biotechnology Corporation、そして関係機関の協力により、来年初旬には『bio-economy roadmap』なるものが示される見通しであり、そこでより具体的な方向性などが明らかになるだろう。

あと、『National Biomass Strategy』を円滑に進めるに当り、Mybiomass Sdn Bhdという特別目的会社を設立することが発表されている。特別目的会社の設立は、6年前に発表されたNational Biotechnology Policyを補完するものであり、バイオテクノロジープレーヤーに対してより良いプラットフォームを提供すると言う。

特に注目されているのがパーム油に関する事業であり、生産量ではインドネシアと世界一を競っている。また、パーム油関連製品の輸出額も相当あり、GDPの8%を占めるまでに成長している。当然、日本企業の進出もこの分野で活発な状況にあり、空果房を原料としたバイオエタノール製造やバイオマスコークス製造、バイオマス燃料などで現地企業と提携が結ばれている。

ただ、パーム油がビジネスとして儲かるとなってから、マレーシアのパーム油プランテーションは急速に拡大してきた。そのため、多くの熱帯雨林が伐採され、森林生態系へも影響を及ぼしている。実際に高速道路を走っていると、一面に広がっているのはパーム油プランテーションであり、熱帯雨林はかなり減少している。
マレーシアは循環型社会形成に向け、積極的に再生エネルギーの開発を進めているが、そのために熱帯雨林を切り開いてプランテーションを拡大すると言うのであれば、何か違うように感じるが…。

マレーシア、2011年第3四半期のGDP

11月18日、マレーシア中央銀行は2011年第3四半期のGDP成長率を発表(Economic and Financial Developments in the Malaysian Economy in the Third Quarter of 2011)

まず第3四半期全体のGDP経済成長率はプラス5.8%となり、第2四半期の4.3%を上回る結果となった。多くの経済アナリストは4%台の経済成長を予想していたが、実際には高い経済成長を示した。


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予想を上回る結果となった原因の一つとして、東日本大震災の影響で停滞していたサプライチェーンが回復したことにより、供給網が安定化したことが挙げられている。特に、製造業においてその傾向は顕著に数字で現れており、第2四半期の2.1%から5.1%へと大きく上昇している。
また、鉱業・鉱石は前年の第3四半期からマイナス成長を続けているが、第3四半期でようやく前期から若干改善を見せている。そのほか、農業(8.2%)とサービス(7.0%)が相変わらず高い成長を維持している。


[マレーシア、GDP成長率推移]
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今後の見通しとして、ゼティ総裁は欧州経済の混乱など不確定要素に対する懸念を示しつつも、内需がマレーシア経済を支えることが可能との見解を述べている。この内需は、マレーシア政府が進めるETP(経済改革プログラム)などを意味しており、経済牽引の期待が込められている。

ただ、欧州経済の混乱が長期化すればマレーシア経済への影響も決して小さくはないだろうし、隣国のタイが洪水に見舞われたことで、製造業などへの影響も懸念される。タイでの洪水そのものは今年7月から始まっているが、多くの工場が製造を停止したのは10月以降であり、この影響が数字として出てくるのは第4四半期かと思われる。ただ、11月中旬ごろから自動車メーカーで生産を再開するなどの良いニュースも聞かれており、懸念要素としては小さくなっているのだろう。

因みに、MIER: Malaysian Institute of Economic Research はNational Economic Outlook Conference において、第10次マレーシア計画やETPによって2011年通年では5%の成長率を達成できるとの見通しを示している。対して世界銀行は「Malaysia economic monitor」において、 2011年第4四半期と2012年初めは海外需要の悪化により、マレーシアの景気減速が拡大するものと予想している。特に、製造業での賃金と農産物価格の上昇の圧力が消費者支出に影響を及ぼすとし、2011年は4.3%、2012年は4.9%へと下方修正されている。

Legatum prosperity 2011、マレーシアは43位

Legatum Instituteより、Legatum prosperity 2011(繁栄指数)が発表された。110ヶ国・地域が対象とされ、「経済」、「起業家精神・機会」、「政府統治」、「教育」、「健康」、「安全・セキュリティー」、「個人の自由」、そして「社会資本」の8項目で評価されている。





総合首位はノルウェーで、デンマークとオーストラリアがそれに続いている。アジア域内では、シンガポールの16位が最高位となっており、香港(19位)、台湾(20位)、日本(21位)が続いている。全体的に、アジア諸国に対する評価は低いような印象がする。

マレーシアは、昨年と同じく43位となっており、アセアン域内ではシンガポールに次ぐ順位。個別評価では、経済で総合17位と高い評価を得ているが、個人の自由については96位と下位に沈んでいる。
とりあえず、マレーシアの各項目別の評価で目に留まった部分を下記に列挙してみる。

経済
インフレ率は0.58%、そして36%の高い貯蓄率は安定した経済成長を示しており、それぞれ世界17位と13位となっている。更に、失業率は3%と世界で17番目に低い。また、71%の国民が生活水準に満足しており、53%は雇用市場がポジティブと信じている。現在、ハイテク商品がマレーシアの輸出製品の47%を占めており、これは世界で3番目に高い数字である。

起業家精神・機会
マレーシアのICTインフラが商業活動を促進していることか評価されている。中でも、マレーシアは知的財産が年UD$ 2億6600万の収益もたらしており、イノベーション活動において良好な環境となっている。この数字は世界で27番目に高い数字。

政府統治
民主主義の強さでマレーシアは世界72位。官僚機構は、世界の中でも28番目に効率的である。
2010年の調査において、82%が政府に賛同しており、約67%は国の貧困対策や環境保護に賛同している。これは世界で20番目の順位となっている。政治とビジネスでの腐敗に対する認識は、世界平均より僅かに良い程度。軍と司法に対する国民の信頼は高く、世界で各々26位、18位となっている。

教育
高等教育への入学制限から、マレーシアの労働者は比較的教育レベルが低い。それでも、マレーシア人が国の教育システムに対する満足は高く、90%の人はローカルの教育施設に満足している。

安全・セキュリティー
窃盗による被害は市民の10%に達しており、世界平均を下回っている。42%の人が夜の一人歩きを安全と感じている。

個人の自由
2010年の調査において、77%は個人の自由に満足していると回答している。22%のマレーシア人は、マレーシアが移民にとって良い土地であると回答しており、これは世界で109位である。


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この中で、教育に関しては今後順位が低下していきそうな印象がある。マレーシアの魅力の一つは、多民族国家であるがために多数の言語を利用でき、且つ共通言語として英語が広く浸透していたことが挙げられる。ただ、マレーシア政府は理数教育を英語からマレー語とすることを決定しており、英語離れが進もうとしている。この政策に対し、国内の反発はかなり強く、特に保護者は英語教育の重要性を訴えている。今後、ビジネス環境はさらにグローバルなものになるであろうし、共通言語として英語が活用されるだろう。

これに対し、ムヒディン副首相は日本や台湾は母国語だけで世界市場で競争力を有しており、マレー語重視でも問題ないという趣旨の話をしていた。しかし、経済がグローバル化する中、日本は英語教育に力を入れようとしており、英語力不足が国際競争力低下を招くことを認識している。

いまでも、マレーシアの教育制度を嫌って海外へ流出する人材は数多い。魅力的な教育環境を提示できないのであれば、国としての競争力は益々低下していくだろう。

ETP、始動から1年

昨年の10月25日にナジブ首相のアナウンスによって始動したETP(経済改革プログラム)から、既に1年が経過した。数ヶ月ごとに新しいプロジェクトが追加されるなど、これまでのマレーシアではなかったような矢継ぎ早の取り組みが印象深い。1年経過したことを受け、 Performance Management & Delivery Unitはこれまでの成果をウェブ上で公開(ニュースリリース:Implementation in action: RM10 billion investments realised to date)した。ウェブ上では動画とプレゼンテーションの両方で成果が説明されており、ビジュアル的な効果を目指していることが伺える。ただ、プレゼン資料はPDFファイルのダウンロード版だけ。せっかくシンプルな構成で綺麗に仕上がっているのに、PDF配布だけでは勿体ないような気が…。参考資料として、ここではSlideshareへアップロードしてみた。


Watch live streaming video from etpturnsone at livestream.com





まず成果として最も強調されているのが、これまでにRM 100億の投資を誘致しており、2011年の目標であったRM 150億の64%に達しているということ。そして、133のEPP(エントリーポイントプロジェクト)の内、53%にあたる70の案件が既に稼動している。経済効果としても、上半期だけでETPプロジェクトは国民総所得にRM 2,880億を寄与し、今年の目標値であるRM 4,940億のうち58%を達成。次に雇用では34万4,000人分の雇用を創出、2011年の目標値である68万4,000人のうち50%を達成している。


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いずれも2011年の目標値を達成できそうな勢いであり、政府関係者も2020年の先進国入りに自信を見せている。実際、これだけ大掛かりできちんと情報更新を続けるプロジェクトはマレーシアでは珍しく、継続できれば良い成果がでると思う。新聞でもETPの特集ページがよく組まれているし、国民が情報を容易に知りえる環境にある。今回の発表に際しても、RFID案件のアップデートが広告として掲載されていた。

11月16日追記
ナジブ首相によるプレゼンテーションが動画配信されていたので、参考までに。





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