プロトン、政府へEVを納入

PROTON社が電気自動車EMASを発表したのが、昨年3月のジュネーブ国際モーターショー。それから約1年6ヵ月後の9月14日、PROTON社はマレーシア政府へのEV納入を発表した。セレモニーには、ナジブ首相とマハティール元首相も参加し、その意気込みの高さが伺える。





今回納入した車両は、Saga EVが3台、そしてExora REEVが5台となっている。記者発表では、Saga EVの走行距離が130km、Exora REEVは満タンで700kmの走行が可能という。そう言えば、IGEM 2011でExora REEVが展示されていたが、あまりに人が集まっていないのでスルーしてしまった…。この他に、充電設備が首相府と4つの省に設置され、家庭用充電設備も納入される予定。そして、総数では200台が政府に納入され、量産に向けたフィードバックがPROTON社へ行われるという。ただ、スペック等は公開されていないため、詳細は不明。日本メーカーのEVと比較してみたかったのだが…。

ジュネーブ国際モーターショーでは、2012年中に一般販売とのことだったが、今回の発表では2013年へ変更となっている。因みに価格は、Saga EVはRM 70,000、Exora REEVはRM 100,000以下を予定しているという。この価格帯だと、外国メーカーの中型車の価格帯だからそこそこの台数は出るような印象。

ただ、電気自動車販売に向けて日本では充電インフラなどの整備が課題として取り上げられているが、マレーシアではあまりそうした話題が出てきていない。ここは、マレーシアでのEV普及に向けた課題だろう。

そして翌15日には、三菱自動車との協業拡大が発表された(プレスリリース:「三菱自動車とプロトン社の協業拡大について」)。両社間で検討がされている協業プロジェクトは、

-マレーシアでのエンジン共同生産
-三菱自動車向け車両のプロトン社での生産
-三菱自動車が来年3月にタイを皮切りに世界展開を図る「グローバルスモール」と、プロトン社新型小型車の主要コンポーネントの共用化
-EV/PHEVなどの将来技術の供与

これまで、PROTON社はGMやVWとの提携交渉が不発に終わり、かなり不安定な立場に立たされていたが、三菱自動車の協業実現によってかなり救われた印象がある。また、今回の協業拡大では、PROTON社にとってのメリットはかなり大きいだろう。Tanjung Malimの設備稼働率は向上できるだろうし、EV/PHEV技術の自社への取り込みによって技術力向上も期待できる。懸念としては、方向性の違いによって以前のように両者間の不和が再発することだろうか。

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ナジブ首相、民主化推進へ

これまで、マレーシアは民主主義国家であることを示していたにも関わらず、言論や表現、そして集会の自由に関わる市民行動は暗黙の了解の下で制限されてきた。最近では、公正な選挙を訴えた「Bersih 2.0」による抗議行動が大きく注目されたが、他にも報道機関が政府にとって不快な報道を行ったとしてライセンスを剥奪されたり、担当が辞めさせられたりしたこともあった。だから、日本のように誰もが政府や政権を自由に批判できたり、コメディーで首相が笑いネタにされるようなことはない。ただ、こうした強権的な抑圧に対する国際評価は厳しく、報道の自由などにおいてはいつもかなり下位に位置づけられていた。

ところが、9月15日の「Malaysia Day」においてナジブ首相が抜本的な法改正を行うと発表した。改正されるのは、

1.「Internal Security Act (ISA) 1960」撤廃
2.「Emergency 1969」、「Emergency 1966 (Sarawak)」、「Emergency 1977 (Kelantan)」撤廃
3.「Banishment Act 1959」撤廃
4.「Printing Presses and Publications Act 1984」改正
5.「Restricted Residence Act 1933」改正
6.「Police Act 1967 (Section 27) 」改正

特にISAは、第2次世界大戦後に共産主義者を取り締まるために英国統治下で制定されたもので、かなり古い法律。最近では、アンワル氏の逮捕ではこの法律が適用され、大きな問題とされてきたが、今回撤廃の方向で進んでいる。「Printing Presses and Publications Act 1984」は報道・出版に関する法律で、毎年ライセンスの更新が必要であったがこれが不要となる。「Police Act 1967 (Section 27) 」では、言論や集会の自由を緩和する方向で進んでいる。私としては、これはマレーシアの民主化にとって大きな一歩になると期待している。





ただ、マレーシアの民主化を推し進める上で更に重要なのが、「ブミプトラ政策」の見直しだろう。例えば数日前にWikileaksから暴露されたもので、「ブミプトラ建設業者は政府から請け負った事業を下請けに丸投げし、高級車や豪邸を購入している」とした報告書を、2007年にマレーシア公共事業省が作成していたことが判明した。ブミプトラ以外にも、マレーシアではDatoなどの称号を持った人が、政府高官に対して口利きしただけで凄い金額を持っていくこともよく話に聞いている。つまり、政府案件ではブミプトラであること、そして高い称号を持っているLiaisonがサポートしているなどの要素が重要となり、プロジェクト履行能力や性能・品質は軽視される傾向にある。下請けに丸投げされるのだから、結局は政治力のパワーゲームでしかないのだろう。

そしてMRT: Mass Rapid TransitプロジェクトなどのETP事業では、今年6月にMalay Chamber of Commerce Malaysiaが政府に対して苦情を申し立て、ブミプトラ企業への事業配分を今の4%から少なくも60%へすべきと提言していた。が、これだけの実情を見ると、高級車と豪邸所有者を促進するだけように感じるが、先日の報道ではMRTプロジェクトでRM 80億がブミプトラ企業へ発注されることが決まった様子…。

こうしたブミプトラの特権を利用したブローカー的なビジネスは、市民生活の中にも見ることができる。例えば分譲住宅や分譲マンションの販売においては、ブミプトラに優先権が与えられており、これを利用した非ブミプトラへの転売ビジネスもかなりの数に上る。こうした形での金儲けが跋扈しては、なかなか国としての成長が見られないと感じるが、あまり改めようとする動きは見られないし、激しい抵抗に遭うことになる。

それでも、ナジブ首相は先月のUiTM : Universiti Teknologi Maraで開催された『Empowering the 1Jihad for Bumiputera Economy』において、「政府は、ブミプトラを支援するための措置を行ってきた。しかし、この機会を活用できているブミプトラは少ない」と公に苦言を呈している。また、「事実として非マレーは一生懸命に働くことで裕福となった」と述べ、マレー企業に対して従来の姿勢を改め、一生懸命に働くことを会議で求めている。

以前にも、ナジブ首相はブミプトラ政策の見直しに関して積極的に働きかけを行ってきたが、与党内の一部組織や宗教団体などからの反発に遭い、全てトーンダウンしてしまっている。こうした姿勢の変化もあってか、中国系やインド系からの支持が減少しているようにも感じる。ただ、ナジブ政権下でブミプトラ政策の見直しを行うことができないのであれば、マレーシアが国家として大きく飛躍する機会は失われることになる可能性が大きいだろう。

情報通信技術、マレーシアは58位

9月15日、ITU: International Telecommunication Unionから各国の情報通信技術についての調査報告書「Measuring the Information Society 2011」がリリースされた(プレスリリース:ITU releases latest global ICT pricing and penetration data)。調査対象は152ヶ国・地域で、ICTへのアクセスや利活用、スキルをベースとして評価されている。

報告書要約によると、世界で最もインターネットと通信の技術が進んだ国は、2008年と同じく韓国とされた。2位はスウェーデン、3位にはアイスランドが続いており、日本は13位という結果。また、インターネットの普及率は先進国が68.8%、新興国は21.1%、世界平均は29.7%となった。

次にマレーシアだが、2008年の報告書では57位だった順位が、今回は58位へ後退。それでも、全体では「Upper IDI」のカテゴリーに位置。マレーシア市場そのものは、スマートフォン普及によるモバイルブロードバンド、そしてWiMAXなどの無線ブロードバンドが拡大を続けており、政府が目指すブロードバンド普及率は達成できている状況にある。スコアーそのものも、2008年の3.96から2010年は4.45へと増加している。ただ、他国もICTの分野には力を入れているため、なかなか順位が上昇することはないだろう。


[アジア主要国のIDI順位変動]
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各項目別に見ると、マレーシアはICTスキルと固定ブロードバンドの項目での評価が低い。確かに、固定ブロードバンドは価格面やサービス品質の問題から、モバイル通信に比べて伸び悩んでいる印象がある。光ファイバー通信だと、かなり所得に余裕がないと契約できない価格帯だし、ADSLも5年前から通信速度などにおいてあまり改善は見られていない。


[アジア主要国の「Measuring the Information Society 2011」項目別順位]
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ただ、最近はモバイル向けにおいて高速通信でありながら低価格を実現しようとするサービスが出てきているし、数年前と比べて選択肢もかなり増えてきており、今後に期待できる。

QS World University Rankings 2011/12、マラヤ大学が最高位

9月 4日、Quacquarelli Symondsから「QS World University Rankings 2011/12」が発表された。以前はTimes Higher Educationとの共同発表だったが、提携が解消されて単独発表となっている。今回の報告書では、以前より減って上位300の大学のランキングのみ。

評価は学術面の評価、学生一人当たりの教員数、教員一人当たりの論文被引用数、企業による評価、外国人教員比率、国外留学生比率となっおり、700 以上の大学が対象となっている。また、今回から各大学の年間授業料が記されるなどしている。

上位は相変わらず英米の大学が占有しており、首位は英ケンブリッジ大学、米ハーバード大学、米マサチューセッツ工科大学、米エール大学、英オックスフォード大学が続いている。アジア域では、香港大学の22位が最高位で、日本は東京大学が25位に入っている。





マレーシアからは、マラヤ大学(UM)が過去最高となる167位で首位、マレーシア国民大学(UKM)279位、300位以降は個別検索でマレーシア理科大学(USM)335位、マレーシアプトラ大学(UPM)358位となっており、UM以外は前年から順位を落としている。また、前回は365位だったマレーシア技術大学(UTM)は401-450位と圏外に…。これに対してUTMは、QMの評価は主観的であるとし、UTMはマレーシア国内でトップ5に位置し、世界の3万の大学の中で、エンジニアリングとコンピュータサイエンス関連研究では199位に位置していると説明していた。


[マレーシアの大学のQSランキング推移]
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あと面白い傾向としては、マレーシア国内の大学生の男女比率が1990年代は50対50であったが、最近は65%が女性で男性は35%でしかなく、男子学生の比率は年々減少しているというもの。大学側によると、女子学生の成績の方が優秀であるため、こうした傾向に陥っていると分析していた。ということは、近い将来大卒の男性社員を雇用しようと思っても難しい状況に陥るのかも。


[アジア主要国のQSランキング300位以内の大学数]
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次にアジア域内で国別に見ていくと、上位300位以内では日本の15大学が最多で、中国、韓国、香港が続いている。東南アジア諸国はかなり寂しい状況。

教育は国の競争力を左右する重要なファクターであるし、マレーシアの場合は沢山改善すべき点が見られる。特に、民族別の入学枠と奨学金制度は優秀な頭脳の海外流出を促進、或いは優秀な学生の就学機会を奪うこととなっている。マレーシアが先進国を目指す上で、この点は優先度が高いと思うのだが。

環境展、IGEM2011

9月7日~10日、クアラルンプールコンベンションセンターにて第2回目となる環境展、IGEM2011が開催された。今回は、昨年の2倍近くとなる500社超が出展とのこと。私も初日の午前中に会場を訪れたが、入り口横の出展リストをみると確かに凄い数。ただ、初日の午前中ということもあり、来場者数はそれほど多くはなかった。




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出展企業はエネルギー、グリーンビルディング、交通、製造業、環境製品・サービス、廃水・廃棄物処理、環境金融、情報技術の8分野。ブースは国別に分類され、特にEU諸国のブースが「EU Pavilion」として巨大なスペースを占有していた。日本からも、JETROが出展ブースを設け、そこへ15社が出展。こちらは結構訪問者が多く、日本企業の技術力に対する期待の高さをうかがい知ることができた。あと、マレーシア企業も多く出展しており、マレーシア製の電動バイクなども紹介されていた。


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また、8日にIGEMを訪問したナジブ首相はLCCF: Low Carbon Cities Frameworkを発表、2020年までに2005年比で温室ガス排出量を40%削減する目標の実現に向けた前進が見られた(IGEM2011 – ナジブ首相スピーチ)。とは言え、LCCFの詳細がウェブ上で見つからない…。日本の通信社の記事によると、温室効果ガス削減に向けてLCCFは「都市環境」と「都市交通」、「都市インフラ」、「建築物」の4つに分類され、各分類で計13のパフォーマンス基準と計35の準基準が設けられているという。

政府レベルでは積極的な働きかけが展開されているマレーシアだが、Nielsenから発表された「2011 Global Online Environment & Sustainability Survey」によると、環境に対する消費者の意識はまだそれ程高くない様子。特に、エコフレンドリーな製品に対して、価格が割高でもそれを選択すると答えたのは全体の20%にとどまり、やはり価格が購買意識において大きく影響している。この環境性より価格が重要視される傾向は、アセアン内でも2番目に高いとのこと。

マレーシアで本格的に環境ビジネスが普及するには、やはり価格がある程度発展途上国の水準にまで達する必要があるのだろう。ただ、ここ数年でマレーシアの環境に対する意識はかなり向上してきたと感じるし、ポテンシャルも期待できる。

因みに、昨日訪れたショッピングセンターでは駐車券のペーパーレス化を推進していた。少しずつだが、着実にこうした環境への取り組みが目に見えてきているし、それが企業の重要な戦略となりつつあるようだ。


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2011-2012年世界競争力、マレーシアは21位

9月7日、World Economic Forumは各国の競争力を評価した「Global Competitiveness Report 2011-2012」を発表(ニュースリリース:アジア経済が混迷する中、シンガポールと中国が国際競争力の順位を上げる )。Global Competitiveness Report 2011-2012の専用ページはこちら





報告書は各国のインフラ整備や保健、教育、技術、金融、経済環境など12分野で評価されたもので、調査対象は前回の139カ国・地域から3ヵ国増えて142ヶ国・地域となっている。今年も首位は前年と同じでスイス、第2位にはシンガポールがランクインした。マレーシアは前年の26位から21位へと躍進、アジア域内でも5位と健闘。ムスタパ通産相は、経済改革プログラムETPの効果が現れた結果とインタビューに応えている。


[世界競争力ランキング、アジア主要国推移]
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項目別に見ても、ほぼ全てで前年を上回る評価。特に金融はシンガポールと香港に続いて世界第3位の高評価となっている。私自身、金融関係はあまり詳しくないが、報告書ではマレーシアの金融セクターは効率的で安定的とコメントされている。


[マレーシア、2011/2012世界競争力項目別評価]
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逆に評価が低かったのが、教育と技術の項目。教育に関しては、理数教科の英語教育廃止、また不公平な奨学金割当制度による海外への頭脳流出など、いろいろと理由は挙げられる。また、元々製造業を中心として高い技術水準を誇ってきたマレーシアだが、今は製造業への関心低下などもあり、伸び悩んでいる傾向にある。あとマレーシアの特徴として、先進諸国から先進技術を導入しても、そこからの発展が見られておらず、これも技術力の低下に繋がっているように感じる。新しい技術を移転することには熱心なのだが…。


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