NFC携帯による決済サービス動向

5月26日に 「Google Wallet」が発表されて以降、NFC携帯による決済サービスの動きが活発化してきている。デンマークでは移動体通信事業者3社が、また英国では移動体通信事業者4社がNFCモバイルペイメントサービスでジョイントベンチャーを設立、ハンガリーでも移動体通信事業者などが「Hungarian Mobile Wallet Association」を設立した。フランスでは、2012年からNFCの商用サービスが開始される見込みであり、ロンドンでもTransport for London (TfL)でNFC搭載携帯電話を使った支払いサービスが2012年から開始されることが示された。またチェコでは、NFC搭載携帯電話を使った実証試験が開始される予定という。リトアニアでは、移動体通信事業者OmnitelがNFCを使った支払いサービスを行っており、ニュージーランドではボーダフォンがBlackberryなどを使った実証試験を実施している。更に、米国モバイル・ペイメント・ベンチャーISISはVisa、MasterCard、Discover、American Expressとの提携を発表した。この他の国・地域でも、実証試験や商用サービス開始に向けた動きが見られる。

こうした企業の活発な動きに連動するように、調査会社からも市場規模やトレンドに関する報告書がリリースされている。
まずICTアドバイザリ企業Gartner社は、今年何らかのモバイルペイメントサービスを使用するユーザーが1億4,100万人以上に達するだろうとの見通しを示している。ただ、NFCペイメントがマス・マーケットへ波及するには、少なくともまだ4年の歳月が必要との予想。(7月21日プレスリリース

次に英国に拠点を置くJuniper Researchは、2014年までにNFC携帯電話による支払取引額が世界規模でUS$500億に達するだろうとの数字を示した。また、今後18ヶ月以内に最大で20カ国においてサービスが立ち上がるだろうとしている。(6月7日プレスリリース

Yankee Group は、世界のモバイルトランザクションが2011年のUS$ 2,410億から2015年にはUS$ 1兆に達すると予測。その中で、NFC搭載のスマートフォンが牽引役の一つとして注目されており、2011年には700万台、2015年には2億300万台に達すると見られている。(6月29日ブレスリリース

あと面白いところでは、米家電製品比較サイト「Retrevo」が行った消費者の意識調査(iPhone Owners Ready For Mobile Wallet, Will Apple Deliver?)。報告書によると、「NFC搭載の携帯電話を使用したいですか?」という質問に対して、「はい」と回答した人は21%という数字。業界が盛り上がっている割には、ちょっと期待はずれな感じもするが、日本でのおサイフケータイの利用率もそれ程高くなかったように記憶しているので、妥当な数字なのかも知れない。


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ただ、NFCが搭載されたスマートフォンはまだ種類が少なく、消費者も様子見の感じがする。BluetoothやWiFiのように、NFCが当たり前のように携帯電話に標準搭載されれば、こうした状況も変わってくるだろう。

とは言え、全体を通して東南アジア関連のニュースが少ないのはちょっと寂しい感じがする。

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マレーシアの直接投資実績

7月26日、UNCTADから『World Investment Report 2011』が発表された。

報告書では、2009年のマレーシアへのFDI流入額がUS$ 14億3,000万から2010年はUS$91億300万と大きく躍進したことが示され、国内の新聞でも大きく取り上げられていた。実際、伸び率だけをみると前年比536%という驚異的な数字。

ただ、2009年は世界的経済の冷え込みが影響し、マレーシアのFDIは流入・流出共に大きく落ち込んでいる。2010年の数字は、そこから急速に回復した結果とも言えるだろう。


[マレーシアのFDI流入額・流出額推移(US$ million)]
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JETROが公開している資料に国別のデータが示されていたが、直接投資が落ち込んだ2009年では日本からの直接投資が最も多く、中国、米国、シンガポールがそれに続く結果となっている。逆に、欧米からの直接投資は大きく落ち込んでおり、それが2009年のFDI流入の大幅減に影響している。


[マレーシアの国別対内直接投資(RM million)]
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また2010年のFDI流入の内訳を見ていくと、製造業がUS$ 50億100で全体の54.9%を占めており、製造業での実力の高さを示している。それに続くのがサービス業で、US$31億300(34.1%)、鉱業10.7%、農業0.3%となっている。最近はサービス業への注力が高まっており、数年のうちにサービス業が製造業を上回りそうな感じもする。

そして、今年のFDI流入はUS$100億に達するとの期待が高まっている。実際、今年第1四半期だけをみても、FDI流入額は既にUS$37億に達しているし、ETP(経済改革プログラム)の実行によって投資誘致も高いポテンシャルを有している。直接投資に関しては、規制緩和や投資環境改善も進められている。ただ、全てが楽観的というわけでもなく、人的資源不足は慢性化しているし、2007年以降はFDI流出が流入を上回っている。

FDI流入額が国家の経済力を測るバロメーターという訳ではないが、直接投資先として魅力的なビジネス環境か否かを知り得ることはできるだろう。あと、最近は中国の台頭が著しく、企業だけでなく政府レベルでも両国間の関係は活発化している。それとは逆に、日本の存在感が益々希薄になっているように…。

YTL、UQとWiMaxでMoU締結

マレーシアのインターネットインフラ整備事業において、久しぶりに日本企業の名を聞くことができた。これまで、国内のインターネット整備のパートナーは韓国企業や中国企業が存在感を示していたが、7月7日にUQコミュニケーションがWiMax事業でYTLコミュニケーションと相互協力することが発表された。UQコミュニケーションのWiMaxというと、前日の7月6日に世界で初めてWiMax2のフィールドテストを行い、最大330Mbpsの高速通信で話題となったばかりの企業。

他方のYTLコミュニケーションズは、数年前まではWiMax事業でP1 WiMaxなどの競合に遅れをとり、MCMCから事業遅延に関して警告を出される事態にまで発展。しかし、最近立ち上げたYES 4Gというサービスによって急速に成長を見せており、主要プレーヤーとして注目されている。

UQコミュニケーションのプレスリリース「マレーシアWiMAX事業者との相互協力に関する覚書締結について」によると、『WiMAX 2技術での協調や、世界中のWiMAX事業者との国際ローミングの促進について協力』とあるので、最新の高速通信がマレーシアでもほぼ日本と同時期に利用できる可能性があるかも。

マレーシア国内では、今年3月にU MOBILEがLTE技術を使用した100Mbpsの高速通信デモを紹介するなど、ワイヤレス技術による高速通信競争が熱を帯びている。今回、そこにWiMax2が加わるのだから、利用者にとっての楽しみが増えたといえる。マレーシアのインターネットユーザーの利用傾向として、有線よりも無線の方に比重が置かれており、これらの高速通信に対する期待も高いだろう。あとは、高所得者向けサービスと揶揄されない程度の価格帯であれば嬉しいが。


マレーシア政府、「Six Strategic Reform Initiatives」を発表

7月5日、マレーシア政府は国際競争力強化を促進するための戦略的イニシアチブとして、「Six Strategic Reform Initiatives(SRIs)」を発表した。このSRIs、マレーシア政府が推進するEconomic Transformation Programmeにおける2つめのクリティカルコンポーネントと位置づけられており、これまでに発表された12のNational Key Economic Areasと連動する形となっている。
また、明示された6つの柱は、「Public Finance」、「Government’s Role in Business」、「 Human Capital Development」、「Public Service Delivery」、「International Standards & Liberalisation」、「Narrowing Disparities (Bumiputera SMEs)」となっている。この項目から、ETPにおける政府・公共機関の改革を目指したものであることが分かる。





ETPプレスリリース「Malaysia announces six Strategic Reform Initiatives to boost competitiveness」

ナジブ首相スピーチ「ECONOMIC TRANSFORMATION PROGRAMME UPDATE」

取り組みそのものは、結構興味深い内容といえる。ただ、ETPのプレスリリースに詳細はAppendixを参照と言及されているが、そのAppendixが見当たらない…。What Are SRIs?のページも概要のみ。とりあえず、新聞各紙からの拾い読みで内容を読んでみた。

まず「Government’s Role in Business」においては、政府がビジネスに関与する範囲が明示されている。具体的には、GNIへ貢献する事業で、且つ民間セクターが共同投資を必要とする場合、国家安全の観点から国内保有が必要な場合、新技術や巨額投資を必要とする場合、国家規模のインフラ整備事業(バイオ技術、再生可能エネルギー、公共交通機関)の場合の4つ。
また、以前から言われていた政府系企業GLCの整理についても、今回具体的な数字が示された。発表によると、GLC33社のうち、5社は出資比率を下げ、7社は上場、21社は完全売却となっている。更に、2011~12年の間に33社中24社を民営化とする計画。その中には、コーポレートガバナンスの一環として、GLC monitoring unit設立による業績の監視やウェブサイト上での情報開示なども含まれている。

「Human Capital Development」では、年内に最低賃金制度の発表、更に失業保険の導入や各種育成プログラムが実施される。これまで、マレーシアの労働環境は日本ほどには発達しておらず、国民間での不平等感が強い印象だったが、これが見直される形。

次に「International Standards & Liberalisation」では、サービス産業の重点化が挙げられており、経済全体における比率を現在の57%から70-80%へ引き上げることが示されている。

「Public Service Delivery」では、効率的でスリムな政府が主眼とされており、事業免許効率化に向けたオンライン処理手続きが拡大される。現在は警察署での試験導入が実施されており、成果を得られれば出入国管理局や公立病院へも導入されるという。個人的には、マレー語だけでなく英語でのサービスも標準とすることが盛り込まれていれば嬉しかったが。

「Public Finance」においては、これまでマレーシアの製造業の発展を支えてきた再投資控除やパイオニア・ステータスなどの制度が見直されるとのこと。

全体的に見て、個人的にはかなり積極的な政策だと思うし、いずれもマレーシア経済が発展していく上で重要な内容と捉えている。もし、これにブミプトラ政策見直しによる格差是正の方向性が示されていればと考えてしまうが、さすがに難しいか…。あと、これだけ矢継ぎ早に沢山の政策を発表しているが、どれだけの国民が内容を理解しているのだろうかと思ってしまう。確かに、新聞などでETPの特集などが組まれているが、文字ばかりの説明だと興味が沸かなければなかなか全文に目を通すこともないだろう。


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