マレーシア、政府変革プログラムを発表

2009年1月28日、ナジブ首相はGTP: Government Transformation Programme(政府変革プログラム)を発表、2020年までに先進国入りする目標を実現するための計画が示された。





さっそく、GTP専用ページにおいて記者会見の模様GTPロードマップが紹介されている。ロードマップの説明は全264ページとかなりのボリューム。読むだけでもかなりの時間を要するが、内容を把握するのは更に一苦労。個人的には、プレゼンテーション形式でもっと簡単に全体像を示した方が、幅広く国民に理解を及ぼすことができると考える。内容そのものも、国民に対する政府のコミットメントといった感じであり、なおさら難しい説明は省くべきなのだが。

報告書では、1997年のアジア通貨危機や昨年の世界同時不況の影響、そして中国やインド、そしてベトナムといった低賃金国の台頭により、いまのままでは「Vision 2020」の達成が難しいとの認識が示されている。実際、アジア通貨危機前の1991年から1997年のGDP成長率は年平均9%成長であったが、2000年から2008年の経済成長は同5.5%へと大きく失速しており、1991年から2008年の間では同6.2%という結果が出ている。この数字を受け、政府は2020年の先進国入りを実現するためには、今後10年間で8%成長を維持する必要があると述べている。その上で、政府はNKRAs: National Key Result Areas(国家重点成果分野)として以下の6項目を挙げ、各々の施策が示されている。


1. Reducing crime(犯罪抑止)

2. Fighting corruption(汚職との戦い)

3. Improving student outcomes(学生の成績向上)

4. Raising living standards of low-income households(低所得者の生活水準向上)

5. Improving rural basic infrastructure(地方インフラ改善)

6. Improving urban public transport(都市部の公共交通改善)


各分野とも、今回の発表で達成すべき数値目標と期限が示されており、政府が何を行おうとしているかが細かく説明されている。それでも、GTPの目標である年平均8%成長という数字は、いまのマレーシアにとっては達成困難であろう。
「Vision 2020」が発表された当時と現在では、国としての優位性や産業トレンドなど国家を取り巻く環境は大きく変化しており、従来のやり方は通用しなくなってきている。そのため、新たな方法論が必要となり、今回ナジブ政権は大幅な見直しを断行したと言える。しかし、年平均8%成長という数字を達成するには、十分な内容だとは思えない。Transformationと名乗っているのだから、もっと大胆に踏み込んで良かったようにも。

個人的には、高等教育の改善(学ぶ機会の均等)や行政サービスの効率化、ブミプトラ政策見直等による投資環境の改善といったことにも言及して欲しかったが。それでも、今回の政策では数値目標と期限が設定され、且つウェブ上での情報開示が確約されていることから、マレーシアがより良い方向へ進もうとしているのは確実であり、その成果に大いに期待したい。

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誇りあれ、日本よ - 日本李登輝友の会 (編集)

誇りあれ、日本よ―李登輝・沖縄訪問全記録誇りあれ、日本よ―李登輝・沖縄訪問全記録
(2009/04)
日本李登輝友の会

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私はアジア域内において尊敬する人物が3人いる。一人はマレーシア元首相のマハティール氏、二人目はシンガポール初代首相のリー・クアンユー顧問相、そして台湾元総統の李登輝氏。
本書は李登輝氏が2008年9月に沖縄を訪問した時の記録。個人的には、李登輝氏の言葉やメッセージが記されたものと期待していたのだが、李登輝氏に関しては講演会でのスピーチ内容が掲載されているのみで、その他は沖縄訪問に関係した人達の寄稿といった感じ。

本書では、李登輝氏が「尖閣諸島は日本固有の領土」と発言したことで、周囲がそのことに過剰反応している印象を受ける。李登輝氏は既に政界から引退した人物であり、発言そのものはリスペクトされるだろうが、実務における影響力はそれほど大きくないだろう。マハティール氏が引退した後も、同氏の様々な発言がセンセーショナルにニュースで取り上げられたが、現職時とは異なり実効力は及ばなかった。

それでも、彼らの知識や経験、価値観というものは尊敬に値するものであり、李登輝氏の講演内容からも多くのことを吸収できる。また、李登輝氏が日本と沖縄間でビジネスアイデアを色々と提案している部分がある。こうした姿勢はマハティール氏にも共通しており、面白いものがある。

2010年経済自由度ランキング

ヘリテージ財団と米経済誌ウォールストリートジャーナルは、2010年版の世界各国・地域の経済自由度ランキング「2010 Index of Economic Freedom」を発表した。調査対象は183ヶ国・地域で、「ビジネス」、「貿易」、「国庫」、「政府の介入」、「通貨」、「投資」、「金融」、「不動産利権」、「汚職度」、「労働」の10部門について評価がされている。(2009年経済自由度ランキングについて)





まず世界全体だが、経済自由度で首位は香港、2位はシンガポールとなり、両国とも1995年から16年連続でその位置を維持している。逆に最下位は北朝鮮でこちらも16年連続。
今回の報告書で特に話題とされているのが、米国の評価。今回、初めて「mostly free」のカテゴリーへ転落し、且つ自由度ランキングでカナダの後塵を拝したことに注目が集まっている様子。また動画に登場しているヘリテージ財団のKim R. Holmes副代表だが、オバマ政権の1年を振り返るインタビューにおいて「大変失望した。イランや北朝鮮を勢い付かせた」と非難していた人物。

次にマレーシアに目を転じると、スコアーは昨年の64.6から64.8へと0.2ポイントの上昇したが、ランキングは58位から59位へ後退。項目別では、「投資」以外は全て平均を上回っており、悲観的な結果ではないと言える。報告書でも、事業環境の改善や税負担の軽減、外資の出資制限緩和が自由度向上に寄与したと評価されている。逆に、相変わらず汚職と司法制度は政治の影響を受けやすい環境にある点が指摘されている。


[東アジア主要国の自由度データ]
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[東アジア主要国の自由度スコア]
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[マレーシアの自由度スコア推移]
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USDA、UHFタグを承認

1月7日のRFID Journalの記事によると、アメリカ合衆国農務省(USDA: U.S. Department of Agriculture)が家畜管理用RFIDタグとしてUHF製品を承認したとの記事「USDA Approves First UHF Tag for Animal Identification System」が掲載されていた。

従来、家畜管理用のRFIDタグとしては耳票加工されたLF帯製品が国際標準として広く使用され、ISO 11785でその通信規格が規定されている。日本では、一部でHF帯の製品も使用されているが、ISO 11785に準拠していない形となる。ただ、両技術とも通信距離は短く、ゲートでの読み取りにも試行錯誤を必要するなど使い勝手は決して良いとは言えず、作業性も高くなかったようである。こうした理由もあり、中々RFID付耳票タグが普及しなかったのだろう。

そうした中、通信距離やコスト性に優れたISO 18000-6cというUHF帯技術が確立され、家畜管理においてもその適用が期待された。特に、Auto-ID Labは早くからこの分野での研究を行っていた機関であると記憶している。ただUHF帯との特性として、水分に弱いことがネックとなっていたことから、中々実導入には至らなかった。

しかし技術開発や取付方法の改善により、最近ではUHF帯において水分や金属が不得手とは言えないようになってきた。入退室管理用のIDカードにおいて、UHF製品が採用されるようになってきたのもそうした理由からであろう。家畜管理においても、UHF帯製品を使用した耳票タグが各社で開発され、特にオーストラリアでは積極的にUHFタグの導入が検討されている。

今回USDAの承認を受けたのは、「eTattoo」で有名なEriginate社。同社の示すプロモーションムービーではUHF帯の優位性が実際の農場で示されており、強い印象として残っている。今回の記事においても、LF帯では4~12インチの読取距離のために作業効率が低かったが、UHF帯では最大15フィートの通信距離を実現していることが実証されている。

マレーシアの農水省も、数年前にRFIDによる家畜管理プロジェクトを計画したことがあり、私自身、UHF帯の耳票タグを使用したシステムを提案したことがある。業界の趨勢として、将来的にUHF帯への移行は必然と考えていたし、何より導入による期待効果はLF帯より高かった。ただ、当時はUHF帯に対する理解も低く、その優位性をデモと一緒に明示したものの、世界的にLF帯が標準技術として採用されていたこともあり、最終的にはUHF帯は除外される形となった(最終的に、このプロジェクトそのものは政治的な理由から途中で頓挫した様子)。

今後の注目は、UHF帯が耳票タグの通信規格であるISO 11785に規定されるかどうかだが。UHF帯以外でも、韓国ではZigBeeを使用した家畜管理システムを提案している会社もあり、これは長距離での読取+リアルタイムロケーションマネージメントを特徴として持っている。将来的にこうした技術もISO 11785に含まれるのであれば、より有益な家畜管理システムの構築に繋がるだろう。


2009年、マレーシアのブロードバンド普及率

昨年12月28日のニュースによると、2009年におけるマレーシアのブロードバンド普及率が31.4%に達したとのこと。MCMCの統計情報を受け、ライス・ヤティム情報通信文化芸術相が発表。ただ、まだMCMCの統計ページにこの情報は反映されておらず、ニュースサイトからの情報のみとなっている。いずれにしても、政府が設定した2009年の目標である30%を達成した形となり、2010年の目標である50%も視野に入ってきた。

とはいえ、MCMCのブロードバンドの定義は128kbps以上と低く設定されているようで、ある意味常時接続の環境であれば何でもブロードバンドの範囲に収めているような感じがする。それに対してITUでは、Mbpsクラスの通信速度をブロードバンドとしているため、2008年におけるマレーシアのブロードバンド普及率は4.82%でしかなく、MCMCが発表している数字との間に大きな乖離が見られる。(参考資料)
実際、マレーシアで最も普及しているのは500kbps-1Mbpsのサービス帯との印象が強い。特に、最近はWiMAXや3Gなどの無線系サービスが活発であり、500kbps-1Mbpsの速度帯域が急成長しているように感じる。いずれにしても、日本では低速と言われるインターネットサービスが、マレーシアでは主流となっている。

これには、通信業界における競争が活発でなく、通信速度が低い割に料金体系が高く設定されていることが影響していると思われる。この状況に対し、今年に入ってから政府が現行料金の見直しを行うとのニュースも聞いている。個人的には、TMのHSBBが今年から本稼動するのを受け、10Mbps程度の通信速度のサービスが適切な価格で提供されるのを期待しているがのだが…。

12月21日発表された格付機関Fitch Ratings社の情報通信規制に関する報告書においても、この点が指摘されているようである。ニュース記事によると、高成長が期待される有線ブロードバンド産業において、中期的観点から自由競争化される見通しが低く、TMが提供するHSBBも同社が利益独占をする可能性があると指摘されているようである。

それでも、同報告書で示された情報通信法令のリスク調査において、マレーシアは最もリスクが少ない国としてランクされている。結果とし、台湾やシンガポール、香港を凌ぐパフォーマンスを示しており、高評価の理由は政治が安定していることが挙げられている。報告書そのものを読んでいないので何とも言えないが、正直この結果には驚いている。


[Asia-Pacific: Telcos: Combined Regulatory Risk Score]
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Source: Fitch


いずれにしても、ここ最近、情報通信に関しては明るい話題が多く、2010年はマレーシアのブロードバンド市場が急拡大するであろうとの声が聞かれる。携帯電話市場は普及率100%を超え、2,800万のユーザー数を抱えている。利用動向も、これまでのショートメッセージサービスや通話だけでなく、3Gを使用したサービスが急拡大しており、各社がパッケージサービスをリリースしている。またiPhoneに代表されるスマート携帯もよく目にし、予想を上回る出荷量になっている様子。そして、TMのHSBBによる高速インターネットサービスの開始。これまで動画やファイルダウンロードでストレスを感じていたが、ようやく開放される予感が。



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