ナジブ政権下でのブミプトラ政策

たまたまYouTubeを見ていると、『Bumiputra マレーシア 「ブミプトラ政策」 大前研一』という動画を目にした。2分ほどの短い動画だが、ブミプトラ政策に対するナジブ首相の政策に大前氏が期待するといった内容。






ブミプトラ政策については多くの書籍やサイトで賛否両論を見ることができるが、私自身、マレーシアで働いていて事業機会や税制、住宅、教育等々、過保護とも思える待遇を目の当たりにしている。逆に、中国系とインド系は厳しい環境の中で生存競争を余儀なくされてきたこともあり、あらゆる面で貪欲さが目立つ。貪欲でなければ、低水準の生活を余儀なくされるため、仕方のないことではあるが。
ブミプトラ政策によって機会の不均衡が生じているため、持たざるものは必要以上の努力を続けなければないない。その結果として、米経済誌フォーブスの世界長者番付には、中国系とインド系しかランクインしていない現象が起きている(過去記事「2009年版の世界の長者番付」参照)。マレーシア国内のトップ50でも、殆どが中国系とインド系で占有されていたと記憶している。

ただ、こうした成功者はほんの一握りだけであり、多くの中国系やインド系はこの制度にフラストレーションを抱えていると感じる。理想論から言えば、ブミプトラ政策を撤廃して機会の均等を行うべきなのだが、大前氏の言うとおり、ブミプトラ政策を排除することは困難であり、内部からの強い反発が予想される。微妙なバランスの上に成立している制度だけにその舵取りは難しく、誤れば民族の分裂へ繋がることになる。そうした背景があるからこそ、ナジブ首相は「1Malaysia」を通じた啓蒙活動に重点を置き、段階的にブミプトラ政策を緩和する方向で動いているのだろう。

個人的には、教育の分野における優遇策廃止を早期に実現して欲しいところ。付加価値の高い知識社会を目指すマレーシアにとって、既存の制度の下で優秀な頭脳が海外へ流出したり、進学を諦めざるをえない人材がいるのであれば、国家にとっても不幸なことである。

Note)
「1Malaysia」のウェブを見ると、ナジブ首相がFacebookやTwitterなどのSNSへ頻繁に書き込みをしているのが分かる。昔のマレーシアであれば、情報開示は限定的として見せないのが普通であったが、ナジブ首相はIT技術を駆使することで積極的に情報開示を行っているようだ。


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Perodua、新MPVをリリース

11月23日、国産車メーカーのPeroduaは1500ccのMPV「ALZA」を発表(News release: Perodua Launches the ALZA)。以前から、ダイハツ「ブーン・ルミナス」、トヨタ「パッソ・セッテ」と同じプラットホームを使った車種が2009年末に市場投入されることは聞いていた。そのままコピーするのかと思われていたが、開発費にRM3億が投じられており、現地部品調達率は90%と高い。

車種は、基本仕様の「スタンダード」から「プレミアム」、「アドバンスト」の3種類があり、各々にマニュアル車とオートマチック車を用意、車体色も計6種類から選択可能となっている。価格は、半島部でRM 5万5,490からRM6万6,990。記者発表によると、月間販売目標台数は3,500~4,000台を見込んでおり、全車種でも2010年には国内市場シェア33.3%となる53万台の販売を目指しているとのこと。(ALZAページ)





私が働いているオフィスの入っているビルでも、翌日の24日に盛大なイベントが行われ、10台程度のALZAがプロモーション用に投入されていた。25日からは1台だけをエントランスに残して展示するだけであったが、それでも昼休みの時間には多くの会社員が実物を見に来ており、販売員からの説明を聞いていた。私もその中の一人だったが、実感としてデザインや性能、価格帯を見て普通に欲しいと思わせる印象。これまでの国産車だと、保護政策による価格アドバンテージだけしか優位な点が見られなかったが、Peroduaにおいてはここ数年でかなり改善されているように感じる。





翻ってALZA発表前の20日、PROTONは「PROTON TO THANK ITS CUSTOMERS ON “PROTON 4 YOU” APPRECIATION DAY」というタイトルのニュースをリリース、ALZAと競合するExoraの低価格版を21日から発売開始すると発表した。エアーバッグを運転者席だけとし、アクセサリー類を省き、車体色を3種類に限定することで、半島部での販売価格をRM 5万7,648に抑えた。

Exoraは、既にPROTONにおいて主力車種の一つとなっており、生産台数はSAGA、PERSONAに次いでいる(4月の発売から11月18日までの間に2万3,889台の予約)。2009年9月のPROTON社の生産割合を見ると、SAGAが46.6%、PERSONA 23.8%、Exora 18.0%となっている。また11月23日にリリースされた「PROTON CONTINUES ON POSITIVE PERFORMANCE IN Q2」においても、Exoraの好調な販売が全体の売上増に寄与したことが示されている。こうした背景から、Exora低価格版リリースは当然の反応であろう。が、それ以上に、第2四半期の売上高が前年同期比14.0%増となるRM 21億409万に、純利益も同87.3%増のRM 8,206万という結果には驚いた。2007年には外国メーカーとの提携交渉が全て決裂し、自動車市場そのものも世界的経済不況の影響を受けている筈なのだが・・・。

また、昨年まではMPV市場といえば日本車であり、特にUMW TOYOTAがアジア戦略車の「INNOVA」、「AVANZA」、そして輸入車「WISH」の3車種で市場の60%以上を占有していた。今年、国産メーカー2社がそれぞれMPVを投入したことから、UMW TOYOTAなどの日系メーカーにとっては厳しい環境となるだろう。

マレーシア、2009年第3四半期のGDP

11月20日、マレーシア中央銀行は2009年第2四半期のGDPを発表(BNM Press Statement)。全体でのGDP成長率は-1.2%となり、グラフはV字の回復の軌道を見せている。新聞記事を読むと、第4四半期でのプラス成長の期待が高まっており、今回の数字も大方の予想を上回っている様子。


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分野別に見ると、天然ゴム産業の落ち込みが大きかった農業を除き、経済成長は上昇傾向にある。特に、2回の景気刺激策の恩恵を受けた建設が7.9%と大きく伸び、公共事業がマレーシア経済を牽引する形となっている。逆に製造業は前期の-14.5%から-8.6%まで回復を見せたものの、いまだ全産業の中で最も深刻な状況にあり、特に電気・電子が-18.9%となっているが大きい。同産業においては、通常でも中国企業との競争で厳しい状況であったが、景気刺激策での優先度が低かったことから回復にはまだ時間を要すると思われる。


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マレーシア中央銀行のアジズ総裁によると、世界経済および国内経済の回復により、2010年は5%のGDP成長率も達成可能との見解を示している。かなり強気な数字ではあると思うが、いずれにせよ、製造業の早期回復が鍵になりそう。

National RFID 2009 – roadmap planning workshop

11月19日、Federation of Malaysian Manufacturersから「National RFID 2009 – roadmap planning workshop」というイベントの招待メールがe=brochureと共に届く。GS1 Malaysiaが主催するイベントかと思いきや、Malaysian Communications & Multimedia Commission (MCMC)とSIRIM Berhadの共催となっている。詳細を見ようとFMM、GS1 Malaysia、MCMC、SIRIMのウェブページを閲覧するもそれらしき情報は公開されていない。Secretariant officeとなっている会社もウェブが存在せず、情報が取れない・・・。多分、いつものようにウェブでは直前になって情報公開されるのだろう。

とりあえず、イベントの概要は下記の通り。

日時:2009年12月2~3日
場所:SIRIM (Shah Alam)
費用:RM 100/人(要事前申し込み)

Day.1 Morning session
NATIONAL RFID ROADMAP: CREATING A NICH FOR MALAYSIA

Day.1 Early Afternoon session
TRACH ONE – POSTAL & COURIER SERVICES
TRACK TWO – AGRICULTURE & PRIMARY INDUSTRIES

Day.1 Late Afternoon session
TRACK THREE – TRANSPORT & LOGISTICS
TRACK FOUR – MANUFACTURING & ASSET TRACKING

Day.2
SPECIAL ADDRESSES BY VIP SPEAKERS

Day.2 Morning session
PLANNING FOR UBIQUITOUS RFID INFRASTRUCTURE

Day.2 Early Afternoon session
TRACK ONE – HALAL FOOD
TRACK TWO – UBIQUITOUS LIBRARIES

Day.2 Late Afternoon session
TRACK THREE – TELECOMMUNICATIONS
TRACK FOUR – RETAIL / PERSONNEL


全体的には、アプリケーション開発に関するものが殆どとなっており、マレーシア国内でのケーススタディーを交えた講演が予定されている様子。民間企業においては、講演者の多くが顔見知りということもあり、どのような講演内容なのか楽しみではある。
POSTAL & COURIER SERVICESにおいては、POS MalaysiaもRFIDに関して講演を行うようだが、数年前に2回ほど同社がRFID導入についての入札を行いながら、結局はプロジェクトそのものが破棄された苦い思い出がある。会社としてRFID導入に対して強い意志を持っているのか、それともまだ様子見の姿勢なのか注目したい。

アプリケーション以外では、個人的に初日の午前に行われるセッションに注目したい。「NATIONAL RFID ROADMAP」と題し、RFID技術の利活用がマクロ経済に及ぼす経済効果について、MCMCやSIRIM、政府関係者、そしてコンサルティングのFrost & Sullivanによる講演が予定されており、国家レベルでの経済効果を数値として明示して欲しいところだが。
日本では、2003年ごろから総務省がRFIDの利活用がマクロ経済に及ぼす経済効果の分析を進め、一般に公開していたと記憶している。当時、私自身も政府関係者とRFIDの仕事を開始したこともおり、日本の政府機関/省庁の進め方をかなり参考し、マレーシアの政府関係者へ提案を行ってきた。主だったものでは、マクロ的観点からの経済効果算出、国家としてのポリシーやロードマップの策定、及び情報開示等々。ただ、当時マレーシア国内においてRFID技術がかなりマイナーな位置付けであり、そのインパクトを理解している人も少なく、日本式の進め方にも違和感があったのか、何も進捗が得られないままとなった。

それから6年が経過した今、ようやく「ロードマップ」や「マクロ経済への経済効果」といったキーワードが今回のイベントで聞かれるようになった。そして、本来政府機関として牽引するべき役割を持っていたFMMとMCMC、そしてSIRIMがようやく一体化して動こうとしているようにも感じる。

GS1台湾、パッシブ型e-Sealの標準化を提案

10月28日のRFID Journalに、「GS1 Taiwan Pushes for EPCglobal E-seal Standard」というタイトルの記事が掲載されていた。記事によると、GS1台湾がYeon Technologies社の開発したYTE-100というコンテナ向けe-Sealを、EPCglobalのTransportation and Logistics Services (TLS) Industry Action Groupに対して標準規格とするよう推し進めているという内容。このe-Seal、EPC Class1 Generation2に準拠したパッシブ型のRFIDチップを使用しているのが最大の特徴。

9.11の同時多発テロ以降、コンテナのセキュリティーに対する要求は国家レベルで高まり、その対策としてRFID技術へ注目が集まった。先進諸国においては、アクティブタグ技術を使用したe-Sealの実証試験~導入が進められており、リアルタイムトラッキングやセキュリティー向上などの効果を出している。

とは言え、e-sealの実導入を展開しているのは先進諸国が中心であり、発展途上国では中々難しいのが実情である。マレーシアにおいては、数年前にJETROや経済産業省が主導する実証試験でe-Sealが使用されていたが、実証試験が終わるとそこで話が完結してしまっている。実証試験から得られたデータや成果を活用すべきなのだが、港湾関係者に聞くと「いまのままで困っていない」や「新たに設備投資をしてまで費用負担したくない」と言う。「あなた達の負担で設備を設置するなら使ってあげますよ」という姿勢。他にも、マレーシア周辺諸国、或いはアフリカ諸国からはe-Sealを導入したくともハードウェア価格が高すぎて対応できないという声をよく耳にしていた。

そこでよく彼らから逆提案さていたのが、『EPC Class1 Generation2に準拠したパッシブ型RFIDチップを使用して、e-Sealを開発できないか』というもの。要望の多くは、コンテナに取付けられたパッシブ型e-SealをゲートR/Wで読み取りたい、しかしアクティブタグのようなリアルタイムでのロケーション管理は必要としない。ハードウェアは低コスト、且つTamper-proof(不正開封防止)が欲しい。

ただ、当時は業界そのものがコンテナのトラッキングは400MHz帯か900MHz帯のUHF、或いは2.45GHz帯を使用したアクティブタグで仕様がほぼ固まっていた状況にあり、国際標準としてISO 18185にアクティブタグだけがe-Sealとして規定されていた。
そうした中、今年2月に香港で開催された「EPC/ RFID Technology Live Test in Global Logistics」というEPCのイベントにおいて、YTE-100を使用したライブデモが実施された。出席した会社の社員によると、タグの読み取りは想像以上にスムーズであり、好印象を持っていた。RFID Journalの記事によると、80km/hの通過速度に対応しており、UIDの読取率は97%を記録している。私も実物のタグを見たことがあるが、製品そのものは物理封止として規格ISO 17712を満足しており、綺麗な仕上がりだったと記憶している。

現在は高雄港での導入が進んでおり、税関の仕事量を大幅に削減し、経営効率の向上に寄与するなどの効果が挙がっているようだ。これまで、アクティブタグ型e-Sealは米国企業に市場をほぼ独占されており、選択肢の狭い領域であった。今回のGS1台湾の試みは利用者にとって選択肢の幅を広げるものであり、導入までのハードルを低くすることに繋がるであろう。特に、発展途上国において高い効果を見込めるものと期待する。

ブレイクスルー・カンパニー - Keith R. Mcfarland

ブレイクスルー・カンパニー 小さな会社が大きく伸びる法則ブレイクスルー・カンパニー 小さな会社が大きく伸びる法則
(2008/11/21)
キース R マクファーランド

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この本の著者、PFドラッカー教授や「ビジョナリー・カンパニー」の著者であるジム・コリンズ氏と接点を有しており、この二人が本書執筆に影響を及ぼしている。そして、大企業ではなくあえてベンチャー企業に焦点を当て、長期に渡って成長を遂げた企業の共通点から、何がブレイクスルー・パワーとなるのかを見出そうとしている。

全体的に社員やマネージメント、経営者の行動や思考に関する調査・分析に重点が置かれているように感じる。その中でも、特に印象深いのは「組織のメンバーの中には、どれだけコーチしても、必要なレベルに到達できない人もいる。リーダーの努力にもかかわらず、会社の変化についていくことのできないことが明らかな人の場合は、別の会社に貢献してもらうか、会社を辞めさせる必要がある」と述べている部分。私自身、中々昔からいる社員に対しては決断ができなかった経験がある。ただ、この考え方は決して中小企業やベンチャーに限ったことでなく、大企業においても同様のロジックは働いている。例えば有名なところでは、GEの元CEOであるジャック・ウェルチ氏も同様の考えを持っていたと記憶している。

他には、「誰も特別扱いしない」という会社の方針。日本ではそれ程会社内での格差は感じなかったが、マレーシアにおいては一般社員とマネージメントの格差はかなり大きい。小さな会社においても、この傾向は顕著であるように感じる。この格差は社員のモチベーション低下に影響を及ぼすであろうし、会社内において人が育たないという事態を招くように思われる。

そして、『戦略とは、「会社が会社自体とその環境について何を学んだか」の集大成に他ならないのである』と戦略の定義づけをしている部分。実際、色々なハウツー本や成功事例を聞いても、それはあくまで参考資料でしかなく、そこからコピーペーストのように戦略が生まれることはない。会社が蓄積してきたものと環境変化を吟味し、初めて戦略が立案できるものであり、私自身が実際の仕事で感じていることである。

HSBBの現状と計画

10月22日、Telekom Malaysiaはウェブサイト上でHSBBの進捗状況と今後の計画をリリース(TM HIGH SPEED BROADBAND ROLLOUT ON TRACK)

発表によるとインフラ整備は順調に進んでおり、2010年第1四半期にTaman Tun Dr. Ismail (TTDI)とBangsar、Subang Jaya、そしてShah Alamにて個人向けサービスが開始される予定。注目は、来年11月中旬までに同地域でHSBB Triple Playというサービスの実証試験が予定されていること。このTriple Play、音声通話と高速通信、そしてIPTVの3つがパッケージになっている。残念ながら、私の居住地区であるKLCC周辺は対象に入っていない様子・・・。ただTMの計画では、2012年末までにKlang ValleyとIskandar Malaysia、各州の州都、主要工業エリア、高等教育機関、港湾・空港などをZone.1として指定し、HSBBの普及を図る予定。この時点で、国内の約130万世帯がサービスを利用可能としている。

そうした中、Malay Chamber of Commerce Malaysia (DPMM)がHSBBプロジェクトの発注を巡って苦言を呈している。新聞に掲載された内容を見ると、外国企業に発注する決定をしたことへの反発で、なぜマレーシア製品を使わないのかと主張、抗議文をナジブ首相に送る意向を示している。これに対応してかどうかは分からないが、TMはプレスリリースを発表し、外国企業への発注に至った経緯を説明している(PROCUREMENT PROCESS AND AWARDING OF CONTRACTS FOR HSBB PROJECT)

説明文によると、HSBB整備においては最新鋭の高度な技術や、マレーシア国内で生産されていない設備も含まれており、且つリスクを抑えて高品質の調達を進め、円滑な事業推進を行うために公開入札を行ったとしている。政府との契約においてスケジュール決まっており、全国に展開する国家事業だけに、TMの進め方は理にかなっているはずなのだが・・・。

マレーシアに限らず、タイヤインドネシアでも自国企業の製品やサービスは最優先され、その意識は日本などの先進国よりも遥かに強い。特に、政府関係の仕事においてはそれが契約の鍵を握っていることが多々あるため、無理やり自国製のものとして対応する事例も見かける。ただ、それによって成果物の品質やスケジュール、機能やケアーサービスに問題が生じ、そして最終的にはコストに反映されるといった事態もよく耳にする。
私もマレーシアで仕事をしている関係上、よくローカル企業からローカライズの要望を受ける。うちには最新の設備が整っており、優秀な技術者がいる等々の説明があり、是非ともマレーシアで製品を作りたいとオファーされる。ただ、こちらが技術的にマレーシアの水準がそこまで達していないことを理解できていても、こういった会社はなぜか政治力が強く、断れない場面が生じる。で、無理して現地技術移転を試みるも、やはり予想したとおりに途中で身動きができなくなり、成果の出ないままプロジェクトがクローズされてしまう。

今回のHSBBプロジェクトにおいて、個人的な懸念はコストと拡張性。現時点で、マレーシア国内のブロードバンド費用は先進諸国と比べてかなり割高である。HSBBが安価に提供されれば、各社とも料金を下げてくるだろうが、これまで通信速度が速くなればそれだけ価格も上昇する傾向にある。またマレーシアの一つの特徴として、一度インフラを整備するとその後はなかなか設備の更新やアップグレードをしないことが挙げられる。

因みに、HSBBプロジェクトの入札を巡ってTMに対抗していたHigh Speed Broadband Technology Sdn Bhdの記事も新聞に掲載されていた。記事によると、2010年末までにFTTHによる高速ブロードバンドサービスをKuantanの3万世帯に提供するというもの。以前は情報公開のためのウェブペーもなかったが、関連企業であるJalur Lebar Nasional Sdn Bhd (Jalenas)がサイトを立ち上げていた。

WiMAX事業者3社に違反金

ある程度危惧はしていたが、MCMC: Malaysian Communications and Multimedia Commision
はWiMAX事業者ライセンスを有するYTL e-Solutions、AsiaSpace、REDtone Internationalの三社に対し、事業遅延に対する違反金を科した模様。今回の遅延は、「2009年3月末までに、事業対象の居住域25% 以上をカバーする」という目標に対してのもの。元々の目標値がかなり高いところに置かれていた印象はあるが、ライセンスを受けた会社はグループ企業としてはマレーシアでも有数の会社であることから、本気で取組めば目標数字は達成可能な範囲だったのかも知れない。実際、P1 W1MAXを提供しているPacket Oneはかなり積極的に事業を推進しており、今回の違反金の対象には入っていない。更に、同社は東マレーシアとシンガポールへと事業対象の拡大を図るまでに達している。

それと比較すると、他の3社は具体的なサービス内容がウェブ上で告知されていないなど、最近まで活動実績が見えていなかった。新聞記事等を読んでいると、割当周波数変更や各種許認可において予想以上に時間を要しているなど、各社とも事情があるようだ。それでも、今ではサービス体系やエリア拡張が進捗している様子。

再度各社のウェブページを訪れてみると、AsiaSpaceはamaxという名前でサービス情報を専用ページ公開していた。Packet Oneと比較すると、プロモーション活動はそれ程大規模ではなく、認知度はまだ低いものの、サービスエリアやパッケージは充実しているように思う。





またYTLグループ総裁のFrancis Yeoh氏はStarBizのインタビューに答え、「We take this business seriously. We will have 60% coverage (more than the needed 40%) by the next deadline.」とWiMAX事業に対する本気度の高さを示している。実際、YTL e-Solutionsは傘下にAirzëd Broadband、WIMAX Capital Management Ltd、Y-Max Infra Sdn Bhd、Y-Max Networks Sdn Bhd 、Y-Max Solutions Holdings Sdn Bhd、YMax Sdn BhdとWiMAX事業に関連する企業を多数抱えており、今後5年間でRM25億を投資する計画を発表している。マレーシア有数のコングロマリット企業だけに、投資規模が桁違いである。
実際にサービスを提供しているのはAirzëd Broadbandのようだが、同社のウェブを見るとWiMAXによるSOHO/個人ユーザー向けサービスには「Coming soon」の文字が。それ以上に気になるのが料金体系で、個人ユーザー向けが1Mbpsの通信速度で月額RM188・・・。

唯一、REDtone Internationalはブロードバンドページ中でWiMAXサービスを紹介している程度の内容であり、今後の展開も不透明なところがある。

National Automotive Policy見直し

10月28日、マレーシア通産省はNAP: National Automotive Policyの見直し内容を発表(プレスリリース)。今回の見直しでは全18項目が盛り込まれており、2010年1月1日から施行される。新聞紙面で紹介されている業界の反応は、概ね好意的なものとなっている。ただ、幾つかの項目においては、市場が期待したほどのものではなく、輸入関税やAPを巡っては不満の声を耳にする。今年5月に国際貿易産業省が発表した声明においては、マレーシアは自動車産業における世界的な競争力強化を目指し、自動車輸入許可証(AP)制度の抜本的な見直し断行について強い姿勢が示されていたのだが。

まず、注目された完成車(CBU)や現地組立車(CKD)の輸入関税と物品税だが、結局は現状維持とされた。今年8月の記者会見において、MUSTAPA国際貿易産業相は今回のNAP見直しによって新車価格が10~15%下落するとの見解を示していたが、国内の業界からの反発が強かったのだろうか?APについても、フランチャイズAPの廃止は2020年12月末までに、オープンAPは中古車で2015年12月末までに廃止と長期のスケジュール。この辺、今年8月の同省の示した見解から大きくトーンダウンしたことは否めない。

大きな変更点としては、限定的ではあるが、以下に限って製造ライセンスの凍結が解除された。

- 排気量1,800cc以上、価格RM 15万以上の高級乗用車
- ピックアップトラック、商用車
- ハイブリッド車・電気自動車
- 200cc以上のモーターバイク

更に、ハイブリッド車と電気自動車の製造については、下記優遇措置が認められる。

- 10年間、投資税控除(ITA)とパイオニアステータスを付与
- トレーニングやR&Dに対して追加助成
- 現地組立/製造車両に対して50%の物品税免除、或いはIndustrial Adjustment Fund (IAF)からの助成
- 自動車向け特定コンポーネンツ(電気モーター、電気バッテリー、電池管理システム、インバーター、エアコン、エアーコンプレッサー)の製造へパイオニアステータス10年、或いはITA5年を付与

ITAとパイオニアステータスについては、従来からハイテク製品を扱う企業に対して付与されてきた優遇策であり、別段新しいものではない。また製造ライセンス凍結が解除されたことは評価に値するが、ハイブリッド車や電気自動車などに限定されていることから、既存の国産車との競争を避けらる形となっている。ただ何より、ハイブリッド車を開発・製造している企業が魅力を感じなければ意味がないのだが、現時点でホンダはマレーシアでハイブリッド車を製造する計画はないと発表している。
ただ、環境対策については上述したハイブリッド車と電気自動車優遇策の他にも、End of Life (ELV) Policyとして車齢15年以上の車両は毎年車検を義務化、EURO 4Mを2011年までに導入などの施策が挙げられており、業界からの評価が高いようだ。

次に国民車メーカーのプロトン・ホールディングスに特定された項目があり、世界的な相手先ブランド生産会社(OEM)との戦略的パートナーシップを目指すとある。本パートナーシップに際しては、以下の事項を保証することが明記されている。

- 輸出増、及びマレーシアを域内製造ハブとする
- マレーシアへの最新技術移転とR&D導入
- ローカルコンテンツの増進とブミプトラベンダープログラムの開発強化
- ディーラーネットワークにおけるブミプトラ参画増進
- プロトンブランドと特定セグメントにおける国内マーケットシェア保持

これまでも、VWやGMとの提携交渉が行われてきたが、プロトン側とマレーシア政府側の要望が厳しいこともあり、提携は成立できずにいまに至っている。ポテンシャルパートナーとしての外資は、部品の現地調達の数字に拘らず、マレーシア国内の部品サプライヤーの品質基準の厳格化などを提案してきたが、マレーシア側がこれに反発したとの情報も聞く。本来、プロトンは救済を受ける立場の筈だったのだが・・・。因みに、市場ではプロトンは最初のバッチは品質が良く、その後は品質が低下する一方だと言われている。日本では、改善が継続されることで時間と共に品質が向上していくのだが、マレーシアでは逆の現象が起きていると認識されているようだ。
こうした交渉の不調も影響したのか、プロトン初のMPVであるExoraは車体が大きいにもかかわらず、搭載できる手持ちのエンジンが1.6Lしかない状況。

今回の見直しの中で最も疑問なのが、オープンAP1件につき、RM 1万を徴収する制度を導入するというもの。この徴収された資金は、自動車関連のブミプトラ企業を支援する基金に使用されるとか。国家レベルでは「1Malaysia」を推進している筈なのだが、一部を優遇することになるこの施策に矛盾はないのだろうか?


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