マレーシアの新型インフルエンザ対策

8月29日の時点で、マレーシア国内の新型インフルエンザ感染者数は7,066人、死者71人となっている。この死亡者数、世界の中で見るとカナダと並んで9番目の多さ。他にアジア地域では、タイとインドが深刻な状況にある。


[新型インフルエンザ感染者数、及び死亡者数]
H1N1_200908_01.gif

[新型インフルエンザ死亡者数上位10ヶ国]
H1N1_200908_02.gif
(Information source: flucount.org)


政府としても緊急の対策が必要とされており、先日SMSで下記のメッセージが配布されてきた。

『RM0. MOH - The public is advised to take precautions against Influenza A(H1N1). Observe hygiene & healthy habits. For updates, visit http://h1n1.moh.gov.my

しかしこの専用ページ、コンテンツは全てマレー語。マレーシアという国は他民族で構成されていることもあり、マレー語が理解できない人も多いため、是非とも改善して欲しいところ。

私の最近の経験として、知人の子供で39度の高熱が数日間続き、大手私立病院でインフルエンザの検査を受けることになったが、咽頭ぬぐい液での検査設備しかないとのこと。検査の結果は陰性であったが、一向に熱が下がらないため血液検査のできる病院を求めてH1N1のホットラインへ電話。するとオペレーターから、「INSTITUT PERUBATAN RESPIRATORI」と「HOSPITAL KUALA LUMPUR (HKL)」の紹介を受けた。早速INSTITUT PERUBATAN RESPIRATORIへ電話を掛けると、いまは新型インフルエンザの血液検査を実施していないとの回答。理由を尋ねてみると、HKLからWarning Lettert(警告状)が提出されたために検査業務を中止することになったとか・・・。

公式には、現時点で7,000人程度の感染と発表されているが、実際の感染者はこの20倍に当たる14万人以上に達しているとの見解も政府から出されており、血液検査のできる病院が多ければ多いほど良いと思われるが。事実、新聞報道によると死亡者のうち27%が治療の遅れが原因とされているようで、インフルエンザ対策が十分でないことが数字で示されている。民間病院からは政府のガイドラインが定まっていないことに対する不満も聞こえており、国立病院と民間病院がうまく連動できる制度の整備が必要と感じる。

また、来年初めまでに確保できるワクチンが、40万人分しかないとの報道もされている。マレーシアの総人口が2,750万人程度だから、1.45%の人にしかワクチンが行き渡らないことになる。日本の場合、総人口は1億2,700万人程度であるのに対し、年内に確保できるワクチンの目標が5,300万人分だから41.7%の国民に行き渡る計算。

ただ、私自身最も懸念するのは国立病院の危機感不足かと思う。例えば、私自身の体験談として、大手私立病院では早い時期から病院へ入る人全てを対象に体温検査を行い、水際の対策が採られていたが、HKLを含むいくつかの国立病院ではそのようなアクションが未だに採られていない。マスクを着けている医療従事者の数も圧倒的に国立病院は少なく、温度差を感じざるを得ない。

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Tune Talk、携帯サービス開始

携帯電話キャリアー大手のCelcomが出資する仮想移動体通信事業者(MVNO: Mobile Virtual Network Operator)のTune Talkが、8月19日よりマレーシアでのサービスを開始した。私自身知らなかったが、Tune Talk以外にも MerchantradeXOX、そしてREDToneがMVNOとしてサービスを提供しているようである。





Tune Talkはプリペイドでの格安サービスを前面に出しており、国内通話料金は1分22セント、SMSは1通5セントとなっている。競合他社が様々なパッケージサービスで競争している中、実に分かりやすい料金体系。新聞報道等によると、Tune TalkはCelcomの通信インフラを借り受けることで格安サービスを実現、他の事業者が提供している基本料金より少なくとも33%安いとのこと。ただ、大手携帯キャリアーも様々なパッケージを提供しており、国内通話であれば1分10セントやSMS1通1セントというものも目にしたことがあるがどうなのだろうか。

携帯電話市場においては、現在MaxisとCelcom、そしてDiGiの大手3社で市場を占有、そこへU-Mobileが昨年に新規参入を果たし、市場へ食込もうとしている構図にある。そのような中、Tune Talkは1年以内に100万人の加入者を目指し、且つシンガポール、インドネシア、タイなど東南アジアでもサービス提供を計画しているとのこと。マレーシアの携帯電話人口が2008年時点で2,700万人であったから、100万人だと3.7%程度の市場占有率となるが、既存の市場を切り崩すのはかなり困難だと思われる。

ただこの会社、Celcom以外にもAirAsiaのトニー・フェルナンデスCEOが出資するTune Venturesも出資しており、この後ろ盾があれば面白いことになるかも知れない。

マレーシア、2009年第2四半期のGDP

8月26日、マレーシア中央銀行は2009年第2四半期のGDPを発表(BNM Press Statement)。発表によると、マレーシアのGDPは前期のマイナス6.2%からやや回復し、第2四半期はマイナス3.9%であった。市場ではマイナス5%程度の成長率予想だったこともあり、予想以上に健闘しているとの見方が大勢となっている。


[マレーシアGDP推移]
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業種別に見ても、農業とサービス業がプラスに転じるなど、全ての業種で前期より回復傾向にあり、景気の底打ちを脱しつつあるように見える。とは言え、マレーシア経済の牽引役であった製造業はマイナス14.5%と依然低空飛行を続けている。特に電気・電子は深刻な状況にあり、27.3%のマイナスを記録。過去二回の景気刺激策において、最も注力すべき製造業に対して支援が弱いと言われていたが、やはりその影響は大きかったようである。それでなくとも、多くの製造業が製造拠点をマレーシアから中国などへ移転を進めており、以前のような活力を感じられなくなっている。私としては、やはり製造業が持ち直さなければ、マレーシアの経済回復を実感することはできないが。

ブラック・スワン – ナシーム・ニコラス・タレブ著

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全米で150万部超の大ヒットを記録とのふれこみに惹かれて手に取った本書。だが、期待が大きかったこともあるが、どこにそれだけの魅力があるのか私自身には分からなかった。本書発行と時を同じくして、サブプライム問題に端を発した世界金融危機が発生したこともあり、その内容が時勢にうまく整合していたことが追い風になったのかも知れない。また、アマゾンの書評を読むと金融系の読者からは高い評価を得ているようである。

とは言え、本書から考えさせられる部分は多数ある。特に記憶に残っている部分を幾つか挙げると、人間には仕事量と仕事時間に限りがあるにも関わらず、億万長者とそうでない人ができるのには能力の差が多少なりともあるが、それを決定付ける要素のほとんどは純粋な運だと著者は断定。また、資本主義下において運は究極の平衡装置であり、さらに運は知性よりも公平だと。さらに、不確実性の本質は、確率よりも影響に焦点を当てて意思決定を行うべきことにある、などなど。本書の中心は統計論や確率論について論じたところなのだろうが、私にとってはこの部分はちょっとつまらなかった。

最後に、「忘れないでくれ、あなた自身が黒い白鳥なのだ」との言葉で本書は締めくられていたが、これを聞いて以前アイルトン・セナが語っていた「この世に生を受けたこと、それ自体が最大のチャンスではないか」を思い出した。

HIBCC、ANSI/HIBC 4.0を発表

8月14日、Health Industry Business Communications Council(HIBSS)はヘルスケアー産業におけるパッシブRFID技術使用に関するガイドライン「ANSI/HIBC 4.0」を発表した。

当該ガイドラインはISO標準のエアーインターフェースプロトコルについて調査が行われ、その適用領域が規定されたものとなっている。対象となったのは、 ISO 18000-2 (130KHz)、ISO 18000-3 (13.56MHz)、ISO 18000-4 (2.45GHz)、そしてISO 18000-6c (UHF)となっている。
結論として、病院内や手術室で使用されるアイテムレベルの個別消費財については、ISO 18000-2とISO 18000-3が採用されることになった。当初期待されていたUHFについては、テストの結果63%の医療機器に干渉を与えるとの結果が得られたことから、不採用となっている(電波干渉資料)。そのため、UHF技術の適用領域は倉庫でのパレットやケースへ貼り付けられたタグを読取るにとどまることになる。

ただ、今回の決定に対してはRFID業界から様々な意見が出されている。特にUHFによる医療機器への干渉だが、識者からはHIBCCはAmerican Medical Association (JAMA)の公表資料の結果だけに基づいており、これら問題は出力調整やアンテナ位置によって回避できる等々。また、AIMのRFIDエキスパートグループはGeorgia Tech Research InstituteとMET Laboratoriesとのコラボレーションにより、ヘルスケアー産業でのRFID利用に関するテストを実施し、今年中にイニシャルプロトコルを発表する見通しとのこと。日本でも、以前病院でのUHF帯利活用に関する実証試験が実施されていたと思うがどうなったのだろうか?いずれにしても、RFID業界において医療現場でのUHF技術採用は大きなインパクトを持っているだけに、これからも国際機関に対する働きかけと同時に技術改善・検証が進んでいくことだろう。

高速ブロードバンド網整備計画、新規参入検討?

昨年遅れに遅れ、ようやく9月にTMが契約にこぎつけた高速ブロードバンド網整備計画(HSBB)だが、商用サービス開始前にまたもや横槍が入ってきている。新聞によると、Pahang Technology Resources Sdn Bhd とBumiraya Resources Sdn Bhdが出資するJalur Lebar Nasional Sdn Bhdが同計画への参入希望を、MSC Malaysia Pahang initiativeの式典においてナジブ首相へ表明したとのこと。この企業、昨年もTMが政府と契約締結直前に待ったをかけ、対案を出すといいながら期限内に出せなかった経歴がある(過去の記事)。Jalur Lebar Nasional社については当時からウェブページもなく、いまだ技術力や実績を知ることができないでいる(過去の記事)

会見において、ナジブ首相はHSBB事業に柔軟性を持たせ、他企業にもICT産業の発展に寄与できるよう考慮したいと述べている。ただ、HSBB整備計画については既にTMと契約が締結されていることもあり、Jalur Lebar Nasional社の提案に対してはTMと話し合いを行わなければならないと述べるにとどまっている。

私見として、一社独占では市場に競争が生まれないため、品質改善やメンテナンス、サポート等において問題が発生しやすく、当該高速ブロードバンド網整備において競合の存在は大切だと感じる。ただ、契約締結が終了しているにも関わらず、途中で再度計画の見直しを提案されるというのでは、政府系プロジェクトでも安心してビジネスを行えないような印象を受ける。また、本来当該プロジェクトの管轄はMinistry of Information, Communications and CultureのRais Yatim大臣だと思われるが、直接首相に話を持っていくのはいかにもマレーシアらしい。

いずれにしても、Jalur Lebar Nasional社は今後6ヶ月で2,000世帯・事業所を対象とした試験を行う様子。技術的にはFTTHを使用するようだが、速度は10Mbpsとあまり高速ではない。その後クアンタンで3万世帯に向けてサービスを開始した後、全国展開する計画だとか。また新聞記事には、「Jalenas is expected to invest up to RM10bil in infrastructure and plans to connect up to 2.5 million city homes and offices, making it the world’s largest open access deployment based on a single network operator.」とあった。これが有言実行であればよいのだが、マレーシアの場合なかなかこれが難しい。

マレーシアは2010年までにブロードバンド普及率50%を目指しているが、現時点でのブロードバンド普及率が26%とのことで、残り1年半で目標達成するのはかなり厳しい状況である。それにも関わらず、HSBB事業においては遅延を生じさせる出来事がポリティックなレベルで発生している。当初期待されたWiMAXについても、思ったような成果が挙げられていないようであり、先月末に政府から遅延が生じている業者に対して警告が出されている。いずれの事業も動きがバラバラであり、事業展開が効率的ではないし、なにより使用する側である国民が政府の方向性や目標、タイムライン、それによって享受できる利益等々を知らないように感じる。
多分、いまのやり方を継続するのであれば、目標とするブロードバンド普及率50%を2010年に達成することは困難であろう。参考にするのであれば、「e-Japan Initiative」のように政府関係者がその優先性を認識し、定期的に会議を持つ共に、事業の方向性やロードマップを国民に広く知ってもらい、随時最新情報を告知する手法が有効だと考える。これにより、日本はインターネット後進国からいち早く先進国へと変貌を遂げることになった経緯があるし、参考になると思うのだが。

UMW Toyota Motor、マレーシアで「プリウス」を発売開始

マレーシアでは、2008年8月30日~2010年12月31日までの時限措置ではあるが、一定条件を満たす2000cc以下のハイブリッド車の完成車に対し、輸入税撤廃と物品税の50%引き下げが実施されている。一定条件を満たすハイブリッド車といっても、対象はホンダとトヨタしかないと思われるが。

そうした中、UMW Toyota Motor はハイブリッド車「プリウス」を8月7日から発売を開始した(プリウスのページ)。マレーシアでは1グレードのみの発売となり、価格はRM 17万5000とのこと。日本円だと480万円程度。マレーシアのHV優遇税制の適用と共に、政府とも個別に交渉を進めていると聞いたので価格に対して期待が高かったのだが、最終的に同社のCamry 2.4V (RM 17万4990)とほぼ同じ価格となった。

そう言えば、UMW Toyota Motorの社長が「インセンティブを得られなければプリウスはカムリと同程度の価格になるだろう」と少し前の新聞にインタビュー記事が掲載されていた。つまり、今回の価格は政府からインセンティブを獲得できなかったということなのだろう。結果として、競合となる「シビック・ハイブリッド」はRM 12万9980とRM 4万以上の価格差が生じている。排気量が異なることもあるが、この価格差は販売台数に影響を及ぼすのではないだろうか?ホンダ場合、昨年8月から今年6月末までの間に125台の「シビック・ハイブリッド」を販売したと発表している。今回、トヨタは初年度100台、来年以降は年間300台の販売計画を示しているが、かなりハードルが高いように感じる。もともと、マレーシアのガソリン価格は日本に比べて安価だし、環境に対する意識もステータスはまだそれほど高くない。となると、「プリウス」に対する購買意欲のトリガーは何になるのだうか?

私個人としては、ハイブリッド車に対してもっとドラスティックな政府の姿勢が見たいところだが。とは言え、マレーシアには自国の自動車メーカーが2社あり、どうしてもそちらを保護する方向へ動いてしまうようである。ただ、行き過ぎた保護政策は自動車産業の成長そのものに悪影響を与えることになってしまう。特に、プロトンに対しては政府も先行きを憂慮しており、ベンダーが品質向上を目指し、統廃合を進めるべきだとの認識をナジブ首相が発表している。


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