「知の衰退」からいかに脱出するか? - 大前研一

「知の衰退」からいかに脱出するか?「知の衰退」からいかに脱出するか?
(2009/01/23)
大前研一

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本書において大前氏は、『低IQ社会』から脱却するための三種の神器として「英語」と「IT」、「ファイナンス」を挙げており、これが基本構成となっている。その中でも、特に私が印象に残っている部分がいくつかあったので、下記に紹介する。

まずは、「なぜかアジアから学ぶことを嫌がる経営者たち」の章において、近年の中国企業に対しては中国脅威論や中国有害論など色々と非難があるが、逆に学ぶべき点も多いと指摘している部分。確かにRFID産業においても中国企業の成長は著しく、製品開発戦略や販促戦略において積極性と目新しさを感じる。過去のように、品質が悪いとか性能が劣るといったネガティブな対応をしても、市場から孤立した存在に陥ってしまうだろう。

次に、「ネットが脳に悪影響を及ぼしているのでは」と言われていることに反論している中で、「宗教の方が人間の脳を怠惰にしているのではないか」との点。疑問の余地を挟むことのできない宗教の教えは、確かにネットより有害かも知れない。

そして日本の教育について述べている章において、「考えない人間」、「丸投げする人間」の台頭が指摘されているが、これは日本だけに限った問題ではない。ここマレーシアにおいても、仕事で社員が直ぐに答えを求めてきたり、部下や外部に丸投げする体質が顕著に見られる。多分、若年層について言えば、日本より酷いかも知れない・・・。大前氏は、「自分で考える力」、「考えたことを実行する勇気」、そして「結果が出るまで続ける執念」が教育において必要といっているが、まさにその通りだろう。

教養に関しては言えば、大前氏はGoogleで入手できる古典的な知識よりも、現代の世界に目を向けるべきと提言する。ここで言われている古典的な知識とは、文学や哲学、音楽、芸術を指している。大前氏が指摘するように、古典的な知識はGoogleやWikipediaなどのツールを使えば、瞬時に膨大な情報を得ることができる。しかし、あくまでそれは表層的な情報でしかなく、また私自身は文学書や哲学書から色々と教えられ、考えさせられ、そして生きて行く上でその知識は活用されている。別にビジネスの中でコミュニケーションを円滑にするために文学書や哲学書を読んでいる訳でもなく、それが目的になっても困ると思うが。

また、大前氏はマハティール氏のアドバイザーを務めていた時の事例を引き出し、一人の突出したリーダーの存在が国家を繁栄に導いた成功事例としてマレーシアを挙げている。確かに、マハティール氏が首相務めていた時代のマレーシアは政治的にも比較的安定していた。しかしその反面、一人の優秀な人間の存在により、個々人の思考停止という事態が引き起こされてはいなかっただろうか?私自身、短い間ではあったがマハティール氏が首相の時代、同氏と一緒に仕事をする機会に恵まれたが、周りの人間は考えることをしていなかったように感じる。常にマハティール首相の決定が絶対であり、彼が納得できる答えは何かを探していたのではないか。つまり、マハティール首相が同意できるものが「○」であり、同意できないものが「×」といった具合に。私がマレーシアの政府関係者と仕事を始めた時、このことが違和感として今も強く印象に残っている。

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IBPがOpen Budget Index 2008を発表

International Budget Partnershipが85カ国を対象とした「Open Budget Index 2008(予算情報公開の透明度)」を発表。マレーシアはその中で指数35%、ランキングでは53位との位置付け。アジア域においてもかなり低い評価となった。国別の報告書によると、マレーシアの報告書は年間・年末の報告書が不完全であり、中間報告がないと評価されている。さらに、マレーシア国民は政府予算の使途について明白に知ることのできない状況にあると。(マレーシアの報告書)


[アジア諸国の予算情報公開の透明度]
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実際各省のウェブページを見ても、予算について公開されている情報は驚くほど少ない(英語ページがない省もあり、確実なことはいえないが)。私自身、よく政府案件のプロポーザルを作成するが、政府予算については知る術がない状況である。唯一、Economic Planning Unitは年度予算やマレーシア5カ年計画の予算配分についての情報を公開しているが、英語版ははかなり不完全である。そもそも、政府予算申請のプロセスからしてプロトコルが明確になっておらず、よほど予算担当の政府関係者と緊密になっていなければ、予算申請にさえ届かないと思われる。

現在、日本において「e-Japan Initiative」が推進されているが、予算公開の透明度は高く、誰もが自由にウェブ上でその詳細を知ることができる。また、国として進んでいこうとする方向性も共有できる。以前、政府関係者へこのことを説明すると、「ここはマレーシアだから」という返事・・・。政府予算透明性が低いことは、利権が特定企業へ集中し、且つ使途内容が怪しくとも国民から非難されにくい状況を作り出している。

マレーシアでデジタル放送

先日、国営ラジオ・テレビジョン・マレーシア(RTM)が、地上デジタル放送開始の準備を進めているという記事を目にした。数年前に、マレーシア通信マルチメディア委員会の方からレーシアでもデジタル放送の検討を行っていると聞いたことがあったが、実際に準備段階に入っているのは知らなかった。記事によると、全国放送開始は2012 年で、既に多重通信用装置をKL タワーに設置、2,000世帯に対して試験放送を開始しているとのこと。

日本では2011年7月24日までに現行のアナログテレビ放送が終了するが、マレーシアでは(ASEAN Recommendationにより)2015年に廃止される予定。また、日本同様にデジタル放送対応テレビ、或いはデジタル放送受信デコーダーをアナログ式テレビに接続することで放送は受信できる。デジタル放送完全移行まであと6年の期間しかないが、マレーシア国民の認知度はかなり低いと思われる。電器店でもいまだデジタル放送対応のテレビを販売している様子はないし、2015年までに円滑に移行できるのか不安だが・・・。

ただマレーシアの特徴として、現状において国内のテレビ視聴者の多くは衛星放送ASTROと契約しており、地上波だけに依存している世帯が少ないかも知れない。低所得者向け集合住宅にでさえ、ASTRO用のパラボラアンテナが所狭しと取り付けられており、地上波よりも需要が高いように感じる。とは言え、「政府機関はもう少し広報活動を積極的に行ったほうが良いのでは?」とこちらが心配になるが。

[低所得者向け集合住宅に設置されたパラボラアンテナ群]
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(参考)
Wikipedia: Digital television in Malaysia

中国のRFIDベンダー

先日、社内の営業担当が「中国RFID行业大全」という冊子を手にしているのを目にした。英語にすると「RFID Buyers' Guide in China」というもので、RFID世界网が発行している様子。冊子そのものはイエローページのようなもので、中国のRFIDベンダー情報が紹介されているが、その数が凄い。ほとんど聞いたことのない会社名だが、米国や日本の大手企業が販売しているものと同様の製品がリリースされている。媒体においても、かなりユニークな発想に基づいた製品が販売されているなど、商品群の幅は広い。実際の製品を触ったことがないので何とも言えないが、仕様そのものは先進諸国の製品と大差なく、価格も驚くほど安い。(ただ、実際の品質や信頼性に不安はあるが)

また冊子を発行しているRFID世界网のウェブページを見ると、その情報量に圧倒される。日欧米各国においては、当初の予想ほどRFIDの普及が進んでおらず、市場の停滞感を感じるが、中国においてはかなり積極的に市場拡大が進んでいる様子である。


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