グラミンフォンという奇跡 - ニコラス サリバン

グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換 [DIPシリーズ]グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換 [DIPシリーズ]
(2007/07/12)
ニコラス サリバン

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マイクロクレジットで有名なユヌス氏が総裁を務めるグラミン銀行。本書のグラミンという名称から、同氏がタイトルのグラミンフォン事業に関連している。ただ、メインプレーヤーはユヌス氏ではなく、米国で成功を収めたバングラディシュ人のカディーア氏である。

これはバングラディシュを舞台とした携帯電話事業立ち上げに関する実話だが、他の発展途上国と同様、政府による利権保護によって生じる参入障壁、入札スケジュールの遅延、突然の方向性転換等々、事業立ち上げまでの苦難が描かれている。グラミンフォンが事業立ち上げにかけた歳月も半端ではない。日本でも意思決定までのプロセスが長く、事業化までに時間がかかりすぎるとよく非難を聞くが、発展途上国ではそれ以上に忍耐が必要であり、且つ不条理な場面にもよく遭遇する。いかにコンセプトが素晴らしく、国民にとって有益であろうとも、政治的障害から実現することの難しさ。本書は多少駆け足ではあるが、それら内容についても触れられている。

ただ、一部翻訳がスムーズでないためか、読み難い感じが残った。題材としては面白そうなだけに、少し残念である。

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マレーシアの環境問題意識

12日付のローカル新聞によると、MITI (Ministry of International Trade and Industry) のムヒディン・ヤシン通産相が、ハイブリッド車に対する関税を見直しについての認識を示したとのこと。現在、ハイブリッド車の完成車には260%もの関税が課されており、マレーシア国内では殆ど販売されるに至っていない。私の記憶では、唯一ホンダのシビック・ハイブリッドが数量限定で販売(価格はRM162,800)されているはずだが、販売実績は不明。また石油価格の高騰と環境への配慮から、マレーシア国内でもハイブリッド車開発についての検討が実施されている様子である。開発できるかどうかは別問題だが。

日本などの先進諸国では、環境へ配慮された自動車へは税金等においてインセンティブが施されているが、上記のようにマレーシアでは全く逆の現象が起こっている。最近のガソリン価格の高騰から、消費者は燃費に対して敏感になっている。手軽な方法として、公共交通機関の活用や、ガソリンからNGVへ改造する消費者が増えているようである。ただし、これは環境問題に対してではなく、単に懐具合に配慮してのことである。元来、マレーシアにおいて環境問題に対する意識はかなり低い。日本では夏のエアコンの設定温度を高く設定することで電力消費を抑えたり、ゴミの分別により資源の有効利用を促したりしている。しかし、ここマレーシアではどこでもエアコンは上着が必要なぐらいにガンガンに冷やされ、ゴミは分別無しに全て同じゴミ箱に捨てられる。また、電力会社のエネルギー効率も良くない。

企業・政府においては、バイオディーゼルの燃料として期待されているジェトロファなどのバイオマス燃料の開発・生産に対しては積極的である。ただ、これも裏を返せば環境問題に対するものでなく、輸出産業促進の一環でしかない。マレーシア国内において、バイオディーゼル車が国内の道路を走るのはまだまだ先のように感じる。私見としては、マレーシアはまず環境問題について国民が幅広く認識することからはじめる必要があるだろう。残念ながら、マレーシア国民の殆どは日本国内の環境対策について知らない。政府もリップサービス程度のアクションしかしていない。

マレーシア、2008年の経済成長鈍化

7月17日、MEIR (The Malaysian Institute of Economic Research: マレーシア経済研究所) はマレーシアの2008年のGDP成長率見通しを下方修正したと発表。前回の5.4%から4.6%へと-0.8%もの大幅修正となった。この数字は、政府目標の5~6%をも下回ることになる。また、6月の消費者物価指数(CPI)の上昇率が7%に達し、2008年通年でも約5%になるのではと予想されている。

特に下半期においては、原油及び食糧価格の高騰による国内消費の冷え込み、更に貿易相手国の景気減速に伴う成長鈍化が数字になって顕著に現れると思われる。これに追い打ちをかけるように、国内政情の土台も揺らいでいる。7月10日にアブドゥラ首相は退陣時期を正式発表、2010年6月にナジブ副首相に禅譲することが示されたものの、与野党の争いは日を追うごとに泥沼化している。互いに競合の粗探しに奔走し、政策に対する建設的な話はできていないように感じる。多くの国民はいまの政情にうんざりしているが・・・。

異形の大国 中国 - 櫻井 よしこ

異形の大国 中国―彼らに心を許してはならない異形の大国 中国―彼らに心を許してはならない
(2008/04/20)
櫻井 よしこ

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同じアジア地域でありながら、日本人と中国人では価値観が驚くほど異なる。日本人のナイーブな感覚で、こちらが誠意を示せば相手はいつかそれに応えてくれるという考えは、残念ながら通用しない。

私自身、中国人(華僑等の中国系含む)とビジネスで関わり合いを持つことがあるが、誇張された数字、面子を尊重するが故に自身の誤りをも認めない、目的の為にはいかなる手段も行使する等々、これらはビジネスの世界において私も普通に経験している。このような相手に対し、ギリギリの交渉・議論を放棄し、安易に妥協してしまえば最終的には取り返しのつかない事態に陥る。彼らとしては、どれだけ自身の利益を最大化できるかが鍵であり、相手を妥協させることができれば儲けもの程度にしか考えていない。

本書において「南京大虐殺」や「領土問題」、「食の安全性」等々の日中間の諸問題が取り上げられている。しかし、中国共産党にとってはどちらが真実でどちらが正義かということは、彼らの価値観からするとあまり重要ではない。また、本書では中国の不誠実さや脅威が多く示されているが、それ以上に日本政治の不甲斐なさを再認識できる書籍であった。タイトルが「異形の大国 中国」とあるが、「異様な大国 日本」とも言えるのでは。

高速ブロードバンド整備計画の契約延期

今年5月15日、マレーシア政府はテレコム・マレーシアと高速ブロードバンド(HSBB)網の整備計画を発表、6月には両者の間で契約が交わされる予定とされていた。ところが、本日7月8日のThe Star紙によると、本計画の契約が急遽延期された模様。また、当初は10年間でRM152億の投資が計画されていたが、計画は2期に分割され、政府負担がRM24億、テレコムはRM89億を投資する内容に変更されたとも。それと噂レベルではあるが、この計画は政府の第9次計画にリストアップされておらず、承認に手間取っているとも聞いている。いずれにしても、マレーシアのICT政策にとってネガティブな状況となっている。

更に、HSBB整備計画の詳細も現時点では明確になっていない。新聞各紙によると、企業向けに10Mbpsと1Gbps、一般世帯向けに最大2Mbps程度と記載されていたが・・・。なぜ、10Mbpsから一気に1Gbpsなのか?なぜ、今後10年間を視野に入れた計画であるにもかかわらず、一般家庭向けに最大2Mbpsのサービスでしかないのか?全ての情報が現実的でなく、支離滅裂であると感じさせられる。過去、マレーシアはMSCプロジェクトに代表されるように、ICT先進国を目指した政策を採っていたはずである。サイバー法の制定など、革新的なことを他国に先駆けて実施してきた経緯もある。が、今はICT政策に対するロードマップも明示されておらず、方向性も見えない。

私自身は、情報通信分野における政府規制緩和、参入障壁の引下げ、そして政府としての明確なビジョンとロードマップの明示がこの国の重要事項であると考えている。しかし、マレーシアは政府プロジェクトに大きく依存した体質であり、旧来の体質から脱却できていないのも事実である。特に、マハティール氏が首相を辞めた後、顕著にこの旧来の体質が台頭しているように感じる。


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