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マレーシア2018年度予算案

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10月27日、ナジブ首相兼財務相は下院議会にて、2018年度の予算案を発表。2018年に実施予定とされている下院総選挙を前にした予算案発表であったが、国民の関心はそれほど高くなかったように感じられる。

マレーシア財務省における2018年度予算案専用ページ






予算案発表に先立って、マレーシア経済指標についての見通しが示されている。まずGDP成長率については、今年上半期の時点で5.7%を記録しており、通年でも5.2%~5.7%へと前回の予想から上方修正されている。インフレーションについては、2017年で3.0~4.0%、2018年は2.5~3.5%。注目された財政赤字については、2017年で3.0%、2018年に2.8%にまで縮小するとしており、2009年の6.9%から大きく改善される見通し。

2018_budget_01.png

次に所得水準についての実績と見通しが示されている。まず国民一人当りの所得については、2010年にRM27,819であったが、2017年はRM40,713、2018年にRM42,777へと増加する見通し。平均月収についても、2014年はRM4,585であったが、2016年には15%増のRM5,288へ、またB40(ボトム40%)の世帯所得も2014年のRM2,629から2016年には14%増となるRM3,000を記録している。

2018_budget_02.png

2018年度予算については、前年度から7.5%拡大してRM2,832.5億、一般予算RM2,342.5億、開発支出RM490億という構成になっている。予算割り当ては8つの主要項目を軸としているが、中身を見ていくと総選挙を意識した内容のように感じられる。例えば、公務員向けの福利厚生拡充や住宅建設、手当支給、また低所得者向けBR1M継続や補助金継続、さらにサバ州及びサラワク州のインフラ開発といったように、特定の有権者に対する手厚い保護が見られる。

2018_budget_03.png

私自身が注目する項目としては、まず公共交通網の拡充で、MRT2事業ではRM320億の予算割り当てを、そしてMRT3事業は2年の前倒しが発表されている。次に、Industry 4.0関連。日本でもIoTやIndustry 4.0が注目されいるが、マレーシアでも予算案の中にIndustry 4.0向けの予算が組まれている。ただ、予算規模がそれほど大きくなく、国全体がそれに向けて動いているとは言い難い。あとは、今年アリババグループのジャック・マー会長と発表したデジタル自由貿易地域の整備で、電子商取引において域内ハブとなることを目指している。

こうした先進的な取り組みを行うことで、マレーシアが国家として世界上位20位に入ることを目標としている。

全体的に見て、総選挙前ということもあり、民族別で差異はあるものの、全ての国民が恩恵を受けられる内容となっている。ただ、総選挙で与党が勝利すれば、2019年度予算案においてはGST増税など国民に痛みを強いる内容になるのではといった憶測も広がっている。

2018年予算案ハイライト

公務員
160万人の公務員は以下のベネフィットを享受
- セカンドラウンドベースプロモーション
- 健康上の理由で退職を余儀なくされた公務員は、定年退職者と同じ恩恵を受けられる
- 教師の特別休暇が7日から10日へ
- ウムラ巡礼向けに7日間の休暇
- 妊娠5ヵ月以上の女性、及び妻の就労場所に近い夫は1時間早く早退できる
- 産休を300日から360日に拡大
- 最低年金をRM1,000へ

高齢者、障害者、子供
RM17億を以下の分野へ
- 高齢者手当をRM50からRM350へ引き上げるためRM6.03億割り当て
- 障害者手当をRM50/月に引き上げ向けにRM1億割り当て

デジタル自由貿易地域
KLIAエアロポリス内のDFTZ向けにRM8,350万割り当て
輸入品最小額をRM500からRM800へ引き上げ

持続可能な開発
グリーン技術資金スキーム下へRM50億割り当て
無収入水低減プログラムへRM14億割り当て
代替水源としてオフリバーストレージ建設にRM13億割り当て
全土の水害対策向けにRM5.17億割り当て

所得税率低減
個人所得税率の低減
- RM20,001~RM35,000:5%から3%へ
- RM35,001~RM50,000:10%から8%へ
- RM50,001~RM70,000:16%から14%へ
可処分所得RM300~RM1,000(261,000人)は無税

外国人メイド
雇用者はエージェントなしで直外国人メイドを雇用可能に

GST
GSTは変更しないが、政府は特定の品目やサービスを免除またはゼロ化することを提案

ヘルス
ベタークオリティサービス向けにRM270億
医薬品/消耗品向けにRM41億
3つの病院における保健施設、設備、救急車および手術室の整備・維持のためにRM14億
病院と診療所のアップグレードにRM1億
血液透析治療の補助金としてRM5,000万、医療援助基金の向けにRM4,000万
希少疾病の治療向けにRM1,000万、保健コミュニティプログラム向けにRM3,000万
任意健康保険制度向けにRM5,000万

ハウジング
住宅所有増加向けにRM22億

BR1M
2018年、BR1M として700万人への支払いでRM68億割り当て

オランアスリのベネフィット
オランアスリの経済発展と生活の質向上のためにRM5,000万
オランアスリビレッジ開発向けにRM6,000万

インド系、中国系のベネフィット
KOJADIを通じて中国系中小企業融資向けにRM5,000万
1Malaysia HawkersとPetty Traders Foundation向けにRM3,000万
Chinese New Villages向けにRM6,500万、家屋修復向けにRM1,000万
インド系のAmanah Sahamユニット向けにRM15億
IPTA及び公共サービスにおけるインド系の採用を増やす

ブミプトラのベネフィット
UiTM向けにRM24億割り当て
下記イニシアチブ向けにRM35億割り当て
- MARA高等教育訓練奨学金向けにRM25億
- Peneraju Profesional及びSkil dan Tunas向けにRM9,000万
- MARA大学院の人材育成スキームまたはGETS向けにRM2億
- ブミプトラ企業家強化プログラム向けにRM5.55億
- Pelaburan Hartanah Berhad向けにRM1.5億、EKUINAS向けにRM1.5億

国防
軍事向けに総額RM14億(警察RM90億、沿岸警備向けRM9億など)
防衛向け資産の購入とメンテナンス向けにRM30億(11か所の警察署及び6か所の交番建設向けにRM7.2億)
船舶、ボート、ジェティの修理・メンテナンス、及びパトロール船3隻購入向けとしてMMEAへRM4.9億
ESSCOMへRM2.5億
対テロ向け武器強化でRM5,000万
政府は軍人及びその家族向け住居4万戸建設
5つの病院アップグレード向けにRM4,000万

地方開発
FELDA向け 水道及び道路インフラアップグレードでRM2億を割り当て
11.2万人の植民者にRM5,000
FELDA植民者向けにRM4,300万、油椰子改植向けにRM6,000万、第2世代のFELDA植民者住宅5,000戸建設向けにRM1.64億を割り当て
People-centricプロジェクト向けにRM11億(通信インフラ向けにRM10億、地方プロジェクト向けRM9.34億、電力供給向けRM6.72億、水道供給向けRM3億、公共インフラメンテナンス向けにRM5億など)
地方インフラ向けにRM65億(ボルネオハイウエイ向けにRM20億)

教育
TVET生徒向け奨学金にRM490万
TVET向けにRM49億を割り当て
ボトム40家庭向けPTPTN基金追加でRM2億
PTPN返済割引を2018年12月31日まで延長
320万人の学生に各RM100、総額RM3.28億
食糧援助、教科書、連邦奨学金向けにRM29億
学校の維持管理にRM25億(半島RM5億、サバRM10億、サラワクRM10億)
プリプリスクール4校、Permata学校9校、自閉症児センター2校、小学校48校建設向けにRM6.54億
教育開発向けにRM616億

TN50
Bukit Jalilスポーツ学校向けにRM2,000万
新規スポーツコンプレックス14施設建設向けにRM1.12億
スポーツ強化のためのスポーツイニシアチブ向けにRM10億
コミュニティの問題を解決するために社会的企業やNGO資金向けにRM5,000万
1Malaysiaトレーニングスキームにおけるオープンインタビュープログラム向けにRM4,000万
全学生及びフォーム6向けに図書券配布
大学院での就学する10,600名の学生向けMyBrainプログラムにRM9,000万
世界の大学トップ100の地位を達成するため、高等教育の公的機関への研究開発奨励金RM4億をマレー大学へ特別割り当て
JPA、高等教育省、保健省の奨学金向けにRM22億
文化経済開発局の設立向けにRM2,000万
2,000の教室をスマート学習教室へアップグレードするためにRM1.9億
初等及び中等教育カリキュラムにおけるコーディングプログラムを含む現在のコンピューターサイエンスモジュールを強化
科学・技術・エンジニアリング・数学センター建設向けにRM2.5億
2018年1月から2022年1月に生まれた子供向け特別基金設立
事故や重度の病気を含む障害者の雇用者に対する税制救済
全ての自治体において新規建設の建物に託児所の設置を義務付け

公共交通機関
ティオマン島新空港の検討
Mukah新空港建設、コタバル空港及びサンダカン空港拡張
ペナン国際空港、コタキナバル国際空港アップグレード
TumpatからMusangの地方鉄道向け補助金RM5,500万
高速バスの移動向けバイオメトリクス管理システム開発にRM4,500万
河口浚渫などジェティの修理と建設にRM9,500万
バスやタクシーなどの資産の購入、設立資金向け公共交通基金向けにRM10億
海上資産、エアロスペース技術開発、鉄道向け交通開発基金向けにRM30億

インフラ
Bukit Kayu Hitamに特別国境経済地区を開発
パンコールを免税地区に認定
RaubからBentongまでのcentral spin roadプロジェクト継続にRM2.3億
BantingからTaipingまでの東海岸沿岸高速道路向けにRM50億
MRT3プロジェクトを2027年から2025年へ前倒し
Sg Buloh-Serdang-Putrajaya間のMRT2プロジェクト向けにRM320億
ポートクランへの代替道路提供にRM1.1億

ツーリズム
メディカルツーリズム押上のためMalaysian Healthcare Travel CouncilへRM3,000万割り当て
ツーリズムのプロモーションと開発向けにRM5億
ツーリズムインフラ開発基金にRM10億
ツーリズムにおける中小企業向け基金にRM20億

農業
収穫待ちの農家に3ヶ月間、RM200/月を補助
ゴム移植にRM2億、オイルパームの開発・移植・プロモーションにRM1.4億
農業インフラ改善向けにRM5億
農業コミュニティ向けインセンティブ及び支援でRM23億
小規模農家、農業・漁業コミュニティ向けにRM65億割り当て

その他ハイライト
家具輸出産業向けで70%の政府保証にRM1億
SME Corpによる訓練、助成金、ローン向けにRM2億、ハラル製品・産業開発向けにRM8,200万
70%の政府保証ローン向けにRM20億
企業の創業資本向けにRM50億
ビジネスファイナンス保証制度向けにRM70億
2020年までに中小企業のGDP寄与を40%
2018年までに民間投資RM2,600億達成見込み
国全体の投資は6.7%増、2018年のGDPに占める割合は25.5%
今年8月に輸出額RM800億を達成、二桁成長を記録
3つの国際信用格付け機関の評価はA-で安定見通し
2016年の民間投資はRM2,110億




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マレーシアの外国人労働者事情

2016年2月と3月は、マレーシアの外国人労働者に関して大きな動きがあり、それをプレゼンテーション形式でまとめてみました。特に、連邦政府の決定は二転三転し、労働者市場が混乱する事態になっています。最終決定が発表された後も会社経営陣から不満が出ており、更なる見直しが行われることも予想されます。



マレーシア政府 、バングラデシュからの労働者受け入れを凍結

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2月8日、マレーシア政府は今後3年間で150万人の外国人労働者をバングラデシュから受け入れる計画であると発表。そして18日、両国政府はMoUを締結。これが実現すると、外国人労働者の総人口が800万人(不法労働者含む)に達し、中国系マレーシア人の人口を上回ることになる。総人口3,100万人の国家にあって、外国人労働者が800万人という数字はかなり多い。ただ、国内の反発が予想以上に高かったためか、その後、政府は全ての外国人労働者の受け入れを凍結すると発表している。







マレーシアの労働市場を見ると、工場や建設現場、プランテーション、メイド、清掃といった仕事で外国人労働者が多く登用されている。国内の市庁舎においても、街や道路の清掃には外国人労働者を採用しているところが多い。私が住むAmpang地区においても、清掃業務を担っているのは外国人労働者で、ごみを散らかすのがマレーシア人となっている。2014年の政府の発表では、正規の外国人労働者が約200万人、不法の外国人労働者が約450万人、合わせると650万人にも達し、ある意味マレーシア経済の根底を支えている存在になっている。また、マレーシア人労働者もこうした仕事を3D労働(Dirty、Dangerous、Difficultの意味で、日本の3Kに該当)として敬遠している傾向にあり、特に若い世代になればなるほど、こうした3K労働の仕事が敬遠されている。

[業種別外国人労働者数(2013年9月末)]
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[国籍別外国人労働者数(2013年9月末)]
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日本では、こうした3K労働も国内の日本人が担っていることから、質の高いサービスを提供でき、各々がプロフェッショナルとしての専門性を持ち、どのような分野でもイノベーションを起こすことができている。私自身、日本では工場勤務で技術開発を行っていたが、毎日作業着でメッキ作業や機械調整、カーボン粉末が舞う中での組み立て作業を行ってきた。しかし、そこで働く社員は日々の業務改善などを通じて、作業効率や品質、安全性を向上させていた。どんな単純作業でもそうしたことは可能であり、国の技術力の発展や労働生産性の向上に寄与していると思うし、それが日本の強みにもなっているだろう。

また、私の周りのマレーシア人の友人に話を聞くと、職選びのポイントは何をするかではなく、給与はいくらかといったことに重点を置いている人が比較的多いように感じられる。だから、他にもっと良い給与の仕事を見つけるとすぐに転職してしまう傾向にあるし、転職は給与アップの機会にもなっている。その結果、マレーシア国内は転職が多い状況に陥ってしまうのだろう。ただ、給与が高くとも工場勤務は嫌だという声も多く、3D関連の仕事は選択肢としてはかなり下位になっている。

マレーシアは2020年までに高所得国家となる事を目指しており、そのためにETPやGTPと呼ばれる政策を導入、知識労働へ重きを置こうとしている。最近では、最低賃金制度の導入、外国人労働者の登録徹底といった政策が出された事から、一般にはマレーシア政府は国内の雇用機会のほとんどをマレーシア人に割り当てようとしているように思われていた。しかし、今回のバングラデシュ人労働者150万人受け入れの発表により、その方向性があやふやになってきている。

一般的に外国人労働者を雇用するのは、国内労働者を知識労働のようなより高レベルの仕事に集中させることで労働生産性を高めること目的としており、マレーシア政府の狙いもそこにある。しかし、雇用する側のマレーシア人の狙いは、ただやりたくない仕事を外国人労働者に託す、或いは就労したがるマレーシア人労働者がいない、コスト競争力維持のために低賃金の外国人労働者を雇用しているなどの理由となっている。実際、私自身もエビ養殖業を営んでいるが、2つめの理由から労働者は全て外国人労働者に依存している。そのため、外国人労働者がいないとエビ養殖実務に携わる労働者を見つけることはほぼ不可能となる。同じような環境下にある産業は多数あり、外国人労働者がいなくなるとマレーシア経済は立ち行かなくなるだろう。マクロ的に見ても、マレーシアの失業率は長期にわたって3%前後で推移していることからほぼ完全雇用の状況にあり、3D労働では外国人労働者を受け入れなければならないほど労働者不足が深刻なのかもしれない。

[マレーシアの失業率推移]
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それでも、マレーシア労働組合会議の事務局長は3D労働に対して適切な賃金を払えば、若者を呼び込むことができるとしている。実際、30万人ものマレーシア人がシンガポールで3Dの職に就いているらしい。ただ、私が若い層に話を聞くと、彼らのマインドは3D労働に向いていないようにも感じる。たぶん、小さい時から3Dの仕事は外国人労働者のやることであり、自分たちは彼らよりも上の存在であると意識しているようにも思える。



とはいえ、今のマレーシアの外国人労働者への依存は労働生産性の停滞、犯罪の増加などを助長しているだろう。さらに、違法労働者は警察官や役人の汚職・賄賂の温床となっている話も聞くし、人身売買も大きな問題として国際的にクローズアップされている。外国人労働者によって国内の労働者不足を補い、自国民は質の高い仕事に就くことが理想だが、バランスを取ることはなかなか難しいだろう。

あと最近のマレーシア政府の発表見ていて気づくのが、今回のバングラデシュ労働者受け入れや外国人労働者の人頭税引き上げなどのように、突如政策を発表して結果として業界団体や国民の反発から凍結や中止に至る事態が目立つ。よく言えば、柔軟性に富んでいると表現できるのだろうが、こうも続くと本当に国会で真剣に政策が審議されているのかと疑問を感じざるを得ない。

マレーシア、2016年予算案見直しへ

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2016年早々、ナジブ首相兼財務相から2016年度予算案の修正を行うと発表が行われた。記者会見において、石油価格の下落、リンギ安、中国経済減速が見直しの主因となっている。



昨年の予算案発表時、原油価格は1バーレル45ドルであったが、いまは30ドルにまで落ち込んでいる。国民は石油価格下落によってガソリン価格も安くなったことから、普段はRON95しか給油しない人達がRON97を利用するなど、歓迎ムードといった印象。しかし、石油価格の下落はペトロナスからの配当金や税金、ロイヤルティといった納付金が落ち込むことを意味している。5年程前だと、ペトロナスからの収益がマレーシア歳入の約40%程度を占めていたが、2014年には約30%にまで落ち込んでおり、今後はさらに依存度が低下していくことになるだろう。またクレディ・スイスの見通しでは、ペトロナスからの配当収入は今年がRM160億、来年はRM100億となり、GDP比で0.5%に相当する減少となる。

また、急速なリンギ安はマレーシア経済に大きな影響を及ぼしており、国民車メーカーを含む自動車メーカー各社は車体価格の値上げに踏み切っている。中国経済の減速に関しても、マレーシアの貿易において中国は最大のパートナーとなっているだけに、不安が広がっている。リンギ安で輸入原材料が上昇し、最大の輸出先である中国経済が減速という構図は、マレーシア産業界にとって痛手だろう。更に1-9月の投資認可額を見ても、2014年のRM1,800億から昨年はRM1,532億に減少、特に不動産セクターはRM529億からRM210億にまで落ち込んでいる。こうした状況から、世界銀行はマレーシアの2016年の経済成長が4.5%に減速すると予想している。



今回の予算案見直しでは、高速道路補助金削減、液化石油ガス料金補助削減、そして公的機関への交付金削減が予想されており、補正予算案の上程は1月28日に予定されている。ただ、こうした補助金削減策は、GST導入や各種値上げで冷え込んでいる消費者心理に追い討ちをかける可能性が高いだろう。また、財政健全化を目的として導入されたGSTについては、財政に与えた影響が限定的であったとし、格付け会社のMoody's はマレーシア国債のアウトルックを「ポジティブ」から、「安定的」へと引き下げている(『Moody's revises Malaysia's sovereign rating outlook to stable, affirms A3 rating』)。(連邦政府は引き下げではないと強調)



マレーシアの政府債務残高は2014年時点で54.8%とされており、これは法定上限の55%に限りなく近いことから、ナジブ政権では財政健全化を最優先事項としている。そのため、新聞などを読むと歳出削減に重点が置かれるといった見方が多い。外部環境の悪化に加えて、民間消費の鈍化、こうした中でどのような補正予算が組まれのか注目したい。

ナジブ首相、2016年度予算案を発表

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10月23日、ナジブ首相は下院議会において2016年度の予算案を発表(ナジブ首相スピーチ全文)。全体的に見ると、財政赤字の削減に重きが置かれている印象が強く、個人的には目を引く内容に乏しいように感じる。メディア各社の報道を見ても、2016年度予算の目玉が低所得者向補助金『1Malaysia People's Aid (BR1M)』の増額と指摘されており、年々注目すべき事項が少なくなっているようにも。






[低所得者向補助金の推移(RM)]
Budget2016_01.png
(*はBarisan Nasionalが2013年のマニュフェストで示した数字)

発表によると、2016年度の予算規模はRM2,672億となっており、2015年度からはRM65億の微増に。一般歳出はRM19億増のRM2,152億、開発支出がRM46億増のRM520億。また歳入はRM32億増のRM 2,257億の見込み。GST導入による政府収入はRM390億(2015年の目標額はRM270億)を見込んでおり、ナジブ首相は石油価格下落によるペトロナスからの歳入減などの外部環境の厳しさを説明、その上でGST導入は正しい選択であったと強調している。

以下に、今回の予算案発表で気になった項目を列挙している。

まず、2016年度予算の柱として、国民繁栄のために以下の5項目がプライオリティに据えられている。

1.経済回復力を強化
2.生産性、イノベーション、グリーン技術向上
3.人的資本のエンパワーメント
4.ブミプトラアジェンダを推進
5.国民の生活費緩和

次に、カテゴリー別に主要項目における予算割り当て内容を分類。

国内、民間部門の開発
-RM67億の価値がある9つの高インパクト国内プロジェクト
-化学産業、電気・電子機械、航空、医療機器、サービスの開発向けにRM7.3億。
- Aims for 30% women involvement in decision-making levels in public and private sector.
公共部門と民間部門において、意思決定レベルにおける女性の参加で30%を目指す。

経済
-観光でRM1,030億の寄与を期待(米国、中国、インドなど7ヶ国へe-VISA発給)。そのために、観光文化省へRM12億割り当て。
-農業の近代化のために、農業・農業関連産業省へRM53億割り当て。
-マレーシアは13ヶ国と自由貿易協定に署名しており、政府はTPPAを原則受け入れる。

中小企業と起業家精神
-2020年までにマレーシアの中小企業の寄与を41%に引き上げ。
-起業家を支援する中小企業銀行にRM5,000万を提供。
-変革プログラムTUKARとATOMへRM1,800万を割り当て。
-TEKUN、ブミプトラ向けにRM5億、インド人零細企業経営者へRM1億を拠出。
-零細貿易商、及び中国人事業家向けマイクロクレジットローンとしてRM9,000万。

インフラ
-マレーシアは引き続きインフラの改善を進める。物流パフォーマンス指数は160ヵ国中25位。
-200万人の住民に利益をもたらす新MRTプロジェクト向けにRM280億。MRTアンパンは2016年3月に営業開始予定。
-RM100億相当のLRT3プロジェクトは、2016年よりBandar Utama、Serdang、Johan Setia、Klangから建設開始。
-都市郊外のバスルート営業の改善にRM6,700万。
-NilaiからPort Dicksonを開発する『Aeropolis KLIA』発表。
-政府は高速鉄道事業でシンガポールとの交渉を継続。
-Felda集落の道路改善にRM2億。
-クアラルンプール市の渋滞解消にRM9億を割り当て。

教育
-Kedah州とPerak州へ新規学校設立計画など、教育部門向けにRM413億割り当て。
-『Dual language program』と『Highly immersive program』の促進にRM3.85億。更に学校教育での英語力強化を目指す。
-RM3,000以下の世帯に対してRM100の支援を継続。350万の生徒が享受。
-20万人の生徒向けにRM250相当の1Malayaiaブックバウチャー配布。
-MARA、高等教育における72,000名のブミプトラ学生向けにRM37億割り当て
-徴兵の改善にRM3.6億。

技術
-5Mbpsから20Mbpsへのインターネット速度改善にRM12億を割り当て。
-デジタル放送事業にRM2.5億。
-数10万人が利益を享受できるeRezeki、eUsahawanプログラム向けとして、通信・マルチメディア省がRM1億を拠出。

住宅
-175,000戸のPR1MA住宅建設(市場価格より20%安価)向けにRM16億を割り当て。
-1万戸の『Mesra Rakyat homes』建設向けにRM2億を割り当て。
-公務員向けに10万戸の住宅建設、2018年に入居可能
-『First home deposit funding scheme』向けにRM2億を割り当て。
-『Rakyat Housing Scheme』の下で、22,300戸のフラット、9,800戸のテラスハウス建設
-Felda向けに2万戸、最大価格をRM9万からRM7万へ引き下げ。
-市中心部のMRT駅周辺に、GLCによる『手頃価格の住宅』を800戸建設。
-LRT/モノレール駅近く10ヵ所に、5,000戸のRumah Prima housingとPPA1Mを建設
-公共の低コスト住宅維持、1Malaysia Maintenance Fund向けにRM1.55億。

農村部、及びコミュニティの福祉
-1万世帯を対象とした農村電化事業向けにRM8.78億。
-3,000戸を対象とした農村水道事業にRM5.68億。
-農村部道路700kmの改善にRM14億を割り当て。
-非経済的な農村部ルートの『MARA Bus Transport Project』へRM6,700万を割り当て。
-農村部の1.1万の貧困層の住宅改善にRM1.5億。
-農村部向けに国内線全線のエコノミークラスのGST免除。

オランアスリ、及びコミュニティ福祉
-オランアスリコミュニティー開発と福祉向けにRM3億を割り当て。
-オランアスリ向け住宅建設にRM6,900万。
-オランアスリ学生支援にRM4,500万。

サバ州、サラワク州
-サバ州とサラワク州のブミプトラ施設向けにRM1.15億。
-サバ州の電力供給改善向けにRM5.15億
-パンボルネオサラワク高速道が2021年に完成、総延長1,090km、コストRM161億。
-長期住宅建設向け無利子融資にRM7,000万、各戸最大RM5万融資。
-『1Harga 1Sabah』、『1Harga 1Sarawak』プログラム向けにRM2,000万。

ヘルスケア
-政府はPasir Gudang、Kemaman、Pendang、Maran、Cyberjayaに5つの病院を新規に建設。Kajang General Hospital改修。
-328の1Malaysiaクリニック向けにRM5,200万。
-公立病院でのワクチン接種、消耗品、医薬品向けにRM46億。
-1Malaysiaクリニック、新規に33ヵ所開業
-農村部の1Malaysiaクリニック向けに新たにボートや施設。

安全、防衛
-安全と国家安全保障改善向けにRM131億。
-腐敗と闘うMACCオフィーサー人員の増員。
-公共の安全改善のために警察官6,000名増員。RM3,500万相当のバイク500台、パトカー500台。
-ブラックスポットエリア60ヵ所における『Safe City Program』向けにRM2,000万。
-刑務所のセキュリティー改善向けにRM5,000万・
-戦闘用艦艇や戦車、エアバスA-400Mなどの購入を含む軍隊開発にRM173億。
-軍人向けに2,000戸の『手頃価格の住宅』を建設。
-サバ州のESSCOM向けにRM5.23億。
-海岸線警備用用巡視船の取得にRM8.64億。
-社会アメニティプロジェクト、及び洪水防止向けにRM6,000万
-災害管理向けにRM1.8億、洪水緩和プロジェクト向けにRM7.3億、洪水警戒システム向けにRM6,000万

政府援助
-RM2,000未満の独身者に対してRM400。
-世帯所得がRM3,001~RM4,000の家族はRM850。
-世帯所得がRM3,000以下の家族はRM950。
-所得RM1,000以下の全個人が、e-Kashイニシアチブの下でRM1,050受領。
-470万世帯向けにBR1Mを継続。

障害者、高齢者、貧困世帯向け福祉
-障害者、高齢者、貧困世帯向けにRM20億。障害労働者向けに毎月RM350、非雇用の障害者向けに毎月RM200、寝たきりの障害者に毎月RM300。
-障害者の子供を持つ両親は、RM6,000の税金控除請求可能。もし子供が就学している場合、更にRM14,000を請求可能。
-障害者、高齢者、貧困世帯向けにとして、女性・家族・コミュニティ開発省にRM20億割り当て。
-貧困家族の子供支援にRM6.62億、月にRM100~RM450の支援。
-貧困高齢者向けとして月にRM300の支援。

最低賃金
-西マレーシア:RM900から2016年7月1日はRM1,000に。
-東マレーシア:RM800から2016年7月1日はRM920に。

税金
-M40グループ(収入がRM3,860~RM8,320)は、18歳未満のすべの子供向けにRM2,000の税控除。
-両親が60歳を超えている場合、同居していなくとも支援している子供たちはRM1,500の税控除。
-年収RM60万から100万の人達の所得税は25%から26%へ、RM100万以上は28%へ上昇。

公務員福祉
-全ての公務員へRM500、全ての政府退職者に対してRM250支給。双方の支払いはRM10億、2016年1月1日に支払い。
-公務員昇給:160万人の公務員に対して階級に応じて昇給、総額RM11億。
-6万人の公務員の最低賃金はRM1,200。
-5万人の退職者の最低年金は月々RM950。

青年とスポーツ
-青年・スポーツ省へRM9.3億割り当て。
-アスリートトレーニング向けにRM1.45億割り当て。
-トレーニング、SEAゲーム、新規スポーツコンプレックス向けにRM2.8億。

以上が主要な内容だが、以前から継続している政策やプロジェクトへの言及が多く、私自身は面白みやイノベーションをあまり感じることができないというのが第一印象。財政赤字の削減が最優先となっていることもあるだろうが、それに伴い魅力的な政策を打ち出せていないようにも感じる。実際、国内での予算案発表に対する注目度も低下傾向にあり、それ以前に国民としては1MDBからナジブ首相に渡ったとされるRM26億の真相解明に対する関心の方が高い。

同時に、公務員の福利厚生改善や国民への補助金支援、そしてブミプトラ支援の拡大政策などは、政府与党に対する国民の支持維持を狙っているようにも思われる。とは言え、2013年の総選挙以降、GST導入や公共料金値上げ、各種補助金廃止、交通機関の値上げなどが続いていることで、国民の政府に対する不満は以前よりも増しているのではないだろうか。また、ナジブ政権の目玉政策であった『1Malaysia』だが、総選挙で多くの中国系が野党支持であることが明らかになってからは、徐々にだがブミプトラへ偏重しているようにも感じる。さらに、企業のHR向けソフトウェアを開発している企業によると、マレーシア政府は外国人に対する所得税を28%とすることを来年年初に発表するらしいと言っており、外国人にとっても厳しい環境となることが予想されている。

最後にマクロ経済見通しに目を転じると、まず2016年の経済成長率は3.1%を期待、2014年の3.4%、そして2015年の3.2%からは徐々に減速していく傾向にあることが示されている。次に経常収支に目を転じると、2014年はRM473億、2015年はRM234億の黒字であったが、2016年は2015年から更にRM113億程度下回る見込み。また、失業率は政府が180万人の雇用創出したことで、1999年の3.4%から2.9%へ改善されているとしている。

財政赤字については、対GDP比で2014年が3.4%、2015年は3.2%、そして2016年には3.1%と縮小を継続することが期待されている。とはいえ、政府債務はGDP比で2014年の52.7%から2015年は54.0%へ微増することが予測されており、政府が定める上限である55%にかなり近づいている。

[予算案ブレイクダウン(2009年~2016年)]
Budget2016_02.png

いずれにしても、国民の不満が高まっている中で、ナジブ政権がどのようにして財政赤字を縮小しながらマレーシアを高所得国家へ押し上げていくのかが注目されるところだろう。


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