色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 – 村上春樹


色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
(2013/04/12)
村上 春樹

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マレーシアの書店でも、本書は特設コーナーが設けられて販売されていた。前作の1Q84よりもボリューム的にはかなり少ないが、一応長編ということらしい。

第一印象は、長くて不思議なタイトルだなと感じたが、それでも内容を読み進めていくとなるほどと納得できる題目。読み物としてはリズム良く、一気に読み進めることができる。ただ、途中でいくつか伏線が張られていたにも関わらず、最後まで触れずに謎のままで終わっていることも。また最後の部分も、ページが少なくなると同時に多分疑問のまま終わるのだろうなと思っていたら、やはりその通りに。続編?って思わせる終わり方とでも言うか。こうした疑問は結構フラストレーションになるから、たぶん、ここで好き嫌いが出てくるかなと思う。


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マレーシア新時代‐高所得国入り ‐ 三木敏夫著


マレーシア新時代‐高所得国入り‐ (創成社新書49)マレーシア新時代‐高所得国入り‐ (創成社新書49)
(2011/08/10)
三木 敏夫

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著者は、マレーシアが農業国から工業国へ移行する変遷を目にしてきた経験もあり、本書に中には私の知らなかった情報も多く見受けられた。特に、マレー人やイスラム教徒からの視点に重きが置かれており、この辺はマレーシアで仕事をする上でも参考になると思う。中でも、ブミプトラ政策に至る背景やその発展などの記述は興味深い。

ただ、マレー人からの視点が重要視されるあまり、中国人やインド人の国内での苦労や努力などがかなり薄い印象がする。あと、生活一般や市民生活などについては、情報に乏しいようにも…。例えば不動産に関して、KL市内であれば一ヶ月当たりRM5,000程度、郊外であればRM3,000程度の賃貸料とあるが、実際にはそんなにしない。KL市内だと、セキュリティーがしっかりしたコンドミニアムでも、スタジオタイプであればRM2,000台から見つけることができる。

また、著者はイスラム教のお陰でマレーシアは汚職や腐敗が少ないと指摘している。確かに、アフリカ諸国や中東諸国と比較すると少ないだろうが、マレーシアは決して汚職や腐敗が少ないカテゴリーには入っていないと思う。特に、政府役人や公務員の汚職や腐敗が酷く、その多くはマレー人で構成されている。私自身、イスラム教徒だから清廉潔白ということはないことを経験している。
あと、全体を通して文章の繰り返しが多かったり、話が突然変わったりとちょっと読みづらい部分が見受けられた。

日本製造業の戦略 - 萩平和巳


日本製造業の戦略日本製造業の戦略
(2011/08/26)
萩平和巳/ハイテク・イノベーション研究チーム(著)/高橋友紀/関口諭/加藤エルテス聡志/竹丸淳志/田中宏隆(その他)

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以前、私自身が製造業で働いていたこと、そして海外に住んでいて日本メーカーのプレゼンスが低下していることを感じたこともあり、本書を手にとってみた。

まず、最初の方は日本企業の近未来との題目で、2015年における成功シナリオと失敗シナリオが描かれている。分野は製造業のみならず、医療や農業など多岐にわたっているが、個人的には日本はネガティブな失敗シナリオに陥る可能性が高いように感じる。例えば、農業におけるRFIDタグの活用とクラウドの連携により、農産物の可視化を通じた「情報化農業」を成功シナリオの可能性として挙げているが、日本のRFID利活用はそれほど活発ではない。確かに、センサー技術とRFIDの統合などの基礎技術では高い技術力を誇っているが、実運用となると欧米や中韓と比べても寂しい状況にある。RFIDチップやタグ、或いは読み取り装置に関しても、日本メーカーは国際市場で苦戦しており、その存在をほとんど知られていない。どう見ても、RFIDを活用したシステム作りで国際市場を牽引するだけの競争力があるとは思えない。

また、著者は「無意識性」、「直感性」、「パーソナル性」、そして「感情性」というヒューマン・セントリックが重要と説明し、日本はその技術を有していると言う。ただ、技術力はあっても、実際にそれをビジネスとして活用することでは、日本はあまり上手ではない。

後半部分では、日本企業が世界市場で置かれている位置づけ、或いはなにが競争劣位であるのかが明確に示されている。私はマレーシアに住んでいることもあり、日本メーカーの競争力低下や存在感の低下を、日本にいるよりもはっきりと感じることができるし、多くの部分で著者の指摘に共感できる。ハード優先で市場要望があまり考慮されていなかったり、市場対応へのスピードが遅かったり、国際標準化における政治力での劣位等々。

マレーシア国内の家電市場の場合、韓国製と中国製が市場で強みを見せている。確かに、日本ブランドで市場の信頼性はまだ日本メーカーにあるものの、実際の財布の中身と必要な機能などを考えると、どうしても日本製は敬遠されてしまう。自動車市場はまだ日本メーカーが強みを見せているが、最近韓国メーカーが追い上げてきている。だからと言って、全てにおいて韓国製と中国製に人気が集中しているのかと言えばそうでもなく、ICT関連だとiPhoneやiPadなどの高額なデバイスに人気が集まっている。これまでにない経験、或いは先進性というものに対して、消費者は財布の紐を緩める傾向にあるのだろう。翻って日本の製品を見ると、中途半端なポジションに置かれており、厳しい競争を強いられている。

ただ、本書を読んで感じたのは、やはり日本企業は確かな技術を有しており、完成度においては他を圧倒している事実。ほんの少しビジネスのやり方を変えるだけで、大きく躍進する可能性を有していると感じる。例えば、それは意思決定の方法であったり、グローバル市場への対応力であったりするのだろう。

グーグル ネット覇者の真実 - スティーブン・レヴィ


グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へグーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ
(2011/12/16)
スティーブン・レヴィ

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私がインターネットを始めた1990年代中頃、検索サイトといえばYahoo!やExciteなどのポータルサイトが主流であった。そうした中、Googleの検索サービスは精度やスピードの面で他を圧倒しており、強く印象に残っている。当時、検索サービスだけで利益を得られるのか疑問視されていたが、数年で世界的企業にまで成長するに至っており、存在感を示している。

更に、1990年代はマイクロソフトがIT市場においてイニシアチブを握っており、この帝国の繁栄が永遠に続くような印象さえあったが、Googleの登場によって業界の構図が大きく塗り替えられる結果となった。検索サービスからメールサービス、インスタントメッセージ、マップ、ブラウザー、ドキュメント等々、数多くのサービスが同社から提供され、世界中で利用されている。

本書では、そうしたサービスが誕生するまでの試行錯誤や失敗談、訴訟問題、葛藤なども紹介されており、興味深い内容となっている。また、成功と同時に多くの世に出なかったサービスや時流に乗り遅れたサービスがあることも紹介されている。初期の段階、Googleのビジネスモデルは柔軟性が高く小回りが利き、すばやくビジネスを展開できることを強みとしていた。さらに、社員の自由度が高く、仕事に集中できるオフィス環境は羨望の対象でもあった。しかし、そのGoogleも大きな組織となったことで、以前のような柔軟性やスピード感は失われており、本書でもそのことが明らかとされている。

それでも、数多くのサービスがGoogleのサイトから提供されており、私自身の仕事も結構Googleに依存している。これだけのサービスを、1社で提供できることは凄いと思う。

個人的には、記者会見やカンファレンスなどの動画、或いはGoogleについて書かれた書物でエリック・シュミット氏については知っているが、創業者であるラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏についてはあまり知りえなかった。本書では、この二人についても多く触れられており、面白く読み進めることができた。

あと、本書の最後の方にはSNSへの乗り遅れにページが割かれている。この部分を読んでいて、少し前までは時代の先端を走り、大手企業を猛追していたGoogleが、今では他のIT企業に猛追されている存在となっていることに気づかされる。IT産業においては変化の速度が速く、ドラスティックに構図が塗り替えられる状況にあり、Googleの優位性も永遠ではないのだろう。





新・堕落論 - 石原慎太郎


新・堕落論―我欲と天罰 (新潮新書)新・堕落論―我欲と天罰 (新潮新書)
(2011/07)
石原 慎太郎

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最近は、ダイナミズムを持った指導者が少なくなったように感じる。以前であれば、アジア域内において李登輝氏、リー・クアンユー氏、マハティール氏など、独自の国家ビジョンを持ち、国の発展に大きく貢献してきた指導者がいた。私自身、賛否両論はあるが、著者のオリンピック誘致や尖閣諸島購入などといった大胆な政策には興味を持っており、ダイナミズムを感じることができる。

本書では、「平和の毒」と「仮想と虚妾」の2つの章で構成されているが、全体を通して自我を持たない人間によって国家が荒廃していくことが強調されている。自我を持たないことで、ナイーブで幼稚な国民性が形成され、無頓着に国家や会社といった大樹に依存しなければ生きていけないということなのだろう。

また、本書の中では、米国における高性能軍用機のコックピットの殆どは日本製だが、米国のパーツメーカーの域を出ていないと指摘されている。確かに、いくら高い技術力を誇っていても、完成品において日本ブランドでない状況は寂しく感じるし、日本はその技術力に胡坐をかき、いまは国際競争力の低下を招いているように感じる。特に、家電においてその傾向は顕著な状況にあり、マレーシアにおいても日本離れが進んでいる。他にも、おサイフケータイによる小額決済システムを世界で初めて整備したにもかかわらず、最近はNFCをベースとした欧米企業のシステムが脚光を浴びている。カーナビにおいても、日本は随分前から世界的にも優れた技術を普及させてきた実績があるが、その優位性が世界的に普及するには至っていない。日本はせっかく優れた技術を保持しているのに、それが世界市場において後塵を拝している状況は悲しく感じる。

あと、本書において著者は多岐に渡るトピックを取り上げているが、全体的にボリュームが少ないように…。


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