2017年のマレーシア10大ニュース




2017年におけるマレーシアの10大ニュースを纏めました。北朝鮮の金正男氏暗殺という国際的なニュースで幕を開けたマレーシアですが、経済そのものは順調な結果を残した印象です。2020年まであと2年、ナジブ政権は高所得国家入りが視野に入ってきたことを国民にアピールし、来たる総選挙に向けた準備を進めています。とは言え、国民生活においては物価上昇に対する不満が高く、高所得国家入りを実感できていないとの声もかなり大きいです。

自動車産業では、好調な日本企業勢に対してプロトンが市場の信頼を大きく失い、マレーシア政府からも距離を置かれる状況の中、吉利が同社の株式を取得
したとのニュースが大きく報じられました。プロトンが普通の自動車メーカーとして立ち直れるのか、2018年がターニングポイントになりそうです。

また、華人団体のマレーシア中華大会堂総会が2017年の世相を表す漢字として『路』を選出しましたが、確かにMRT1号線全面開通、イースト・コースト・レール・リンク工事開始、KL-シンガポール間高速鉄道入札開始など、交通インフラに関するニュースが多かったのが特徴です。そして、この『路』には『一路一帯』も含まれており、マレーシア政府が中国との関係強化を展開していることが如実に表れた年でもありました。中でも、アリババグループのジャック・マー会長と推進するデジタル自由貿易区は、今後のマレーシア経済を牽引する存在になりそうです。

2018年は高速鉄道入札結果、そして総選挙が控えており、目が離せない年になりそうです。高速鉄道では、日本企業か中国企業かの勝負であることが注目されていますが、ナジブ首相と中国政府の密接な関係性、そして中国系マレーシア人が運輸大臣であることから、中国企業優位の印象です。総選挙に関しては、高齢であるマハティール元首相が政敵であったアンワル氏と和解、政権交代を目指しています。中国系マレーシア人の大多数、及び都市部のマレー系の票は野党へ流れると思いますが、あとは地方都市のマレー系がどのような判断をするかだと思います。
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ハラルハブを目指す多民族国家マレーシア

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ハラル事業向けに作成したプレゼンテーションから、開示可能なスライドだけを抜き取りました。



ハラル市場は最も成長が見込める食品・医薬品・コスメ市場であり、特にマレーシアは国家としてハラル輸出拠点としての地位を確立するため、様々な取り組みを展開しています。

統計情報によりますと、2020年にムスリム(イスラム教徒)の人口は19億に達し、4人に1人がムスリムとなることが予想されています。ムスリムは、基本的に他宗教への改宗ができないため、非ムスリムがムスリムと結婚するとイスラム教徒に改宗しなければなりません。また、ムスリムが多い国の殆どが発展途上国であることから出生率が高く、近い将来、ムスリム人口が世界の最大勢力となると言われています。

2014年の食品貿易額を見ても、ハラル食品は全体の20%を占めており、グローバルな競争においては無視できない存在となっています。そして2019年には、ムスリム向け食品・飲料市場規模はUS$2兆5,370億となると見られており、この市場でイニシアチブを取るために国レベルでの支援が行われています。実際、オーストラリアはハラルに準拠した牛肉輸出を基幹産業に育てあげ、一大拠点としての地位を確立しています。

また、近年はムスリム旅行者の増加も注目されており、非ムスリム国ではムスリム旅行者を受け入れられる環境整備が急がれています。マスターカードとイスラム教徒の旅行ウェブサイトHalalTripの報告書によると、2025年までにムスリム旅行者はUS$100億以上を費やすとされています。ムスリム旅行者のに人気の国は同じイスラム教徒が多いマレーシアやインドネシアとなっていますが、これに次いで日本やタイ、オーストラリアといった非ムスリム国が人気となっていますし、ムスリム旅行者も2020年までに1億5,600万人に、そして2060年までに約30億人に達するとの見通しがされています。

こうした将来性が非常に高いハラル市場に対して、最も注目されている認証機関がマレーシアのJAKIMであり、JAKIMのハラル認証によって世界40ヵ国・地域への輸出を可能としています。

マレーシアは国家戦略としてハラル産業を推進しており、国家戦略『Halal Industry Master Plan 2.0』では2020年を一つのターニングポイントに設定しています。

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また国内のハラル認定企業も順調に増加しており、2015年時点では6,548社がハラル認定を取得、以前はほとんど非ブミプトラ企業が認証取得企業でしたが、近年はブミプトラ企業も急増、同年には全体の40.9%を占めるまでに成長しています。

対マレーシアへのハラル向け投資額を見ても、海外からの投資が過半数以上を占めており、主な投資国は米国や日本、イタリア、台湾、英国、シンガポールといった非ムスリム国となっています。投資額自体も、2014年のRM380億から2015年にはRM420億と伸ばしています。

更に来年には、ハラル産業の集積化を進めるためにHalal Jayaを設立することがザヒド副首相から発表されています。現在でも、国内にはハラル集積地が設けられていますが、国内各地に点在(22ヵ所)していることから効率性が悪く、シナジー効果を高めるためにも中央集権化できる一大拠点を設けることが必要との見解に至っています。この他にも、国家予算において毎年ハラル産業向けに予算が割り当てられていますし、進出企業に対しても様々な優遇措置が適用されます。

日本のハラル市場も今後の成長が期待されており、日本在住のムスリム、訪日ムスリム旅行者、そして東京オリンピック需要を挙げることができます。ただ、日本国内ではハラルに対する理解に乏しく、関心も一部だけであることから、ハラル認証を取得している企業はそれほど多くないと感じます。食品製造や調理ではハラル認証が取得できても、食品物流や保管などでハラルを満たせないなど、日本国内の事業者から色々な問題を耳にしていますし、ハラル商品の取り扱い自体が分からないから話だけで諦める企業も多いです。政府レベルでは、JETROがマレーシア投資開発庁、及びマレーシア貿易開発公社と協力覚書を締結するなどの積極姿勢も見られますが、ミクロレベルはまだ発展途上と言えます。逆に言えば、これだけの巨大市場に対して参入企業がまだ少なく、フロンティアとして参入することでアドバンテージを得ることが可能とも考えられます。マレーシアでも中小企業や個人経営企業を含めて6,000社以上がハラル認証を取得できるのですから、日本企業のシステマテックなロジックであれば、ハラル認証取得自体は決して高いハードルではないと思います。

マレーシアにおける日本の品質神話

10月8日、国内鉄鋼第3位の神戸製鋼所がアルミ・銅製品における品質データに改ざんがあったことを発表した。その後、日産自動車において資格のない従業員が不適切な検査を続けていたことが明るみになった。これらニュースはマレーシア国内でも大きく取り上げられ、テレビやラジオ、新聞などの媒体でも詳細が紹介されている。

これまで、マレーシア国内では日本企業=高品質とのイメージがあり、現地の日本企業もそれを差別化戦略の骨子と置いて事業を展開してきた。産業用機械であれば、中国製や台湾製と比較すると販売価格は高額だが、長期的に見た場合のランニングコストや修理費用などを抑えることができ、長寿命であることがアピールされてきた。食品や日用品においても、日本品質だから中国製と比較しても安全性が高く、安心して使用できるなどが謳い文句となっている。実際スーパーに行くと、日本No.1を謳った製品を目にすることができる。

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しかし、実際に日本品質だからといってそれが販売に大きく影響しているかと言われると、これはかなり限定的な印象が強い。日本製品が強い市場としては、例えば自動車産業であれば非国民車市場では日本メーカーが上位を独占しており、品質に対する評価は高く、日本の品質神話が有効に働いていると言える。この場合の品質は、車両そのものの品質だけではなく、販売後のサービス品質も含まれており、消費者の満足度は高いと思われる。また、家電製品についても、日本製品は高品質との認識が定着しており、市場においては上位に位置付けられている。近年は、韓国や中国のメーカーが魅力的な商品展開を行っており、価格も日本製品よりも安価なことから、年々市場シェアは増加傾向にあるが、それでも日本の品質神話が消費者の購買意欲に影響を及ぼしていると感じる。

それ以外の市場においては、私自身、マレーシア国内で日本メーカーの産業用機械や工業製品の事業展開を支援したことがあるが、類似した製品を展開する競合が多い場合、日本品質はあまり通用しない印象が強い。確かに、安価な中国製品に手を出したために痛い目を見た会社も多いが、それでも中国製品は日進月歩で品質が向上しているし、技術的にも日本製品でなければ困るといったことも少ないと聞く。クライアントと交渉しても、価格を見ると大概は検討しますのレベルで止まってしまい、なかなか購入意欲を高めることができない。どれほど品質が優れていても、最終顧客の予算内でなければ意味がないし、マレーシア企業の場合はかなり価格にシビアな傾向にある。要求機能・仕様を満たすことができるのであれば、あとは実績や価格勝負となってしまう。いずれにしても、日本品質が購買意欲に大きく作用する市場は限定的であり、それだけを軸とした戦略だとマレーシアでは成功しないと感じる。

また、日本企業の場合、スピード感が他国に比べて遅いことを頻繁に指摘される。品質的は優れていても、いざ案件が動くとなると意思決定にかなりの時間を要してしまい、せっかくの機会を競合の中国企業や韓国企業、台湾企業に持っていかれることもある。こうした結果、マレーシア国内での日本製品やサービスの売り先が、現地の日本企業に限定されてしまったりすることもある。

今回、神戸製鋼のデータ改ざん問題や日産自動車の不正検査問題が取り上げられたことで、日本製品も中国製品とあまり変わらないといった声も聞こえており、これまで強みとしていた品質神話の有効性は徐々に疑問視される傾向にあるかも知れない。マレーシア国内で日本品質に対する認識が直ぐに変わることはないだろうが、こうした問題が続けば現地の日本企業も大きな影響を被ることになるだろう。

プロドゥアのBezza、高い人気に

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7月14日、プロドゥアが初めてとなる4ドアセダンを7月16日より予約開始すると発表。排気量1,000ccと1,300ccの2つをラインナップとし、市場ではProtonのSagaと競合する形となっている。

 

私自身、予約開始日にプロドゥアのショールームを訪れたが実車がなく、販売員はカタログと写真だけで説明してくれた。20代の中国系マレーシア人達と一緒だったが、彼等の評価は装備には満足だがデザインがProtonのSagaっぽくてカッコ良くないというものだった。

そして正式発表の7月21日、実車が国内181ヶ所のショールームに展示されることを受け、彼等が再度Peroduaのショールームを訪れた後、彼等の評価は大きく変わっていた。最上位のグレードは内装が革張りで、外観もエアロキットを装備するとスタイリッシュ、是非とも買い替えたい車種の一つになっていた。

実際、私自身も7月23日にショールームを再訪したが、やはり実車は写真の印象とは大きく異なっていた。ショールーム内はたくさんの来客で溢れており、販売員が足りないほどの盛況。数週間前、Protonの新型Perdanaを見にショールームに行ったが、来客は私一人と寂しい状況...。いまの国民車人気の構図を反映しているように感じた。

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プロドゥアの発表によると、予約受け付け開始から21日までの5日間で、Bezzaの予約は1万115台に達している。今年上半期では、Axiaが5万1,100台を販売して同社を牽引している状況にあるが、下半期はBezzaがどれだけの販売に寄与するのか楽しみでもある。因みに、プロドゥアは1ヶ月で1万5,000台の予約を予想していたので、この数字は軽く上回りそうな勢い。

 [2016年上半期のプロドゥア販売実績]
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今回、プロドゥアが販売において最もアピールしているのが燃費性能の高さであり、低燃費車両として21km/Lを実現している。ガソリン価格が安くとも、自動車での移動が中心のマレーシアにとって燃費性能は重要視されており、車種を選択する上でのキーファクターになってきている。また、アイドリングストップもマレーシアでは初めて導入されたことから、消費者の関心は高い。あと、低価格でありながらもスマートキーが実装されているのも、購買意欲を高める一因となっている。

[プロドゥアBezzaとプロトンSaga比較]
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価格的にはプロトンのSagaがまだ優位であるが、同じクラスでももう少し予算を増やすだけで、充実した最新の装備、優れた燃費性能、そして洗練されたデザインというメリットを享受できるのであれば、必然的に顧客はプロドゥアに流れていくだろう。

Bezzaが発表されたことにより、プロトンは同社の稼ぎ頭であるSagaの市場が脅かされることになる。Personaの新型車発表が控えていると言われているが、Bezzaが投入された後では市場へのインパクトはそれ程でもないように思われる。連邦政府はプロトンを支える態度を見せているものの、消費者の目はあまりプロトンには向いておらず、厳しい状況に変わりはないだろう。

マレーシアへ日本の住宅メーカー進出

6月28日、パナホームマレーシアとトロピカーナグループの子会社が、セランゴール州で開発される戸建て建設プロジェクト請負で合意したことを発表。パナホームに限らず、積水化学や大和ハウスなど、最近は日系の大手住宅メーカーによるマレーシア進出が続いている。私自身、数年前に現地デベロッパーから日本のプレハブ工法を扱う住宅メーカーを紹介して欲しいと問い合わせを受けたことがあるし、マーケティング業務においても日本の住宅関連企業からマレーシアの不動産に関係する市場調査を依頼されることが増えている。





マレーシアの住宅市場はいまだ好調を続けており、マレーシア国内の住宅に関する統計を発表しているJabatan Penilaian Dan Perkhidmatan Hartaの数字を見ても、総住宅戸数は右肩上がりの増加を続けていることが示されている。ただ、毎四半期2万戸の増加であった住宅市場だが、2015年第3四半期と第4四半期は1.5万戸へと落ち込んでいることから、多少減速しつつあるのかも知れない。それでも、国内では住宅購入に対して高い需要を維持しており、日本企業にとってはまだ新規参入の機会が大いにあると見える。

[マレーシアの住宅総戸数推移]
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そして日本メーカー各社が発表しているニュース記事を読むと、工期短縮を最大の利点としており、国内デベロッパーよりも3ヶ月程度早く施工できることをアピールしている。実際、マレーシアの伝統的な工法ではコンクリートで柱を形成し、壁はレンガを積み重ねるもので、施工完了までにかなりの時間を要している。これは戸建てだけでなく、高層ビル建設であっても同じで、工事現場で膨大なレンガが積み重ねられている光景をよく目にする。

[マレーシアの建設現場]
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だが、工期の長期化は当然人件費に反映され、住宅価格にも影響を及ぼしている。ここ最近は、最低賃金が引き上げられたことにより、さらに住宅価格が跳ね上がっているし、材料費も高騰が続いている。そして、消費者が住宅を購入する上で価格は大きなファクターとなっているので、工期短縮で価格が抑えられるならば、高い需要が期待できるだろう。

しかし、この他に私が個人的に期待するのは、高耐久性とメンテナンスの容易性、機能性の3点。まず耐久性については、マレーシアの一般的な住宅は10年もすると外観の老朽化が激しいと感じる。壁のひび割れや床の歪み、タイルの剥がれなど、日本人の目からするとかなり驚くようなことがある。以前、5年程経過したある物件を見に行った時には明らかに地盤に歪みが生じ、壁の至るところに亀裂が走っていた。地震が少ない国だからあまり気にしないのだろうが、それでも万が一の時にはどうなるかと日本人の感覚からすると気になる。

次にメンテナンスだが、マレーシアで頻発するのが水回りのトラブルで、水道管からの水漏れトラブルは後を絶たない。しかし、この水道管はレンガに囲まれた柱の中に埋め込まれているため、水漏れが発生すると壁を取り壊して修理しなければならない。私自身、KL市内のコンドミニアムに住んでいた時に大規模な水漏れが発生し、寝室の壁を取り壊して修理していた。大掛かりな作業になるため、修繕費はかなり高額になるし、何より工期が1ヶ月近くに及んだ経験がある。当然、修理期間中は部屋が使えないため、不便な思いをさせられることになった。水周りのトラブル発生の確率が高いのだから、この部分はメンテナンスしやすいように設計すればといつも思うが、こうした部分は等閑にされている。

そして機能性については、マレーシアでは動線や収納をあまり考慮していないデザインが多いように感じる。もともと、マレーシアの住宅はスケルトンで販売されることが多いが、基本的に部屋の間仕切りしかなく、且つ収納スペースはほとんど考慮されていない。そのため、住宅購入直後にオーナーが壁を取り払ったり、増築したりと大掛かりな工事が行なわれている。あとは、日本のメーカーが得意とする限られた空間を有効に使うための細かい部分での工夫。マレーシアの都市部の住宅については、日本と比べても占有面積がそれ程広いわけでもなく、家具類に部屋の大部分を占拠されている光景もよく目にする。そのため、日本住宅の高い機能性は、マレーシアの住宅事情に合致している思う。

こうした部分において、日本メーカーの住宅は強みを発揮できると考えるし、マレーシア人消費者にとっても嬉しいメリットになるだろう。

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