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2017年におけるマレーシアの不動産事情

2018年5月に入って、2017年の不動産統計がいくつリリースされた。これまで投資案件としても活況を呈していたマレーシアの不動産市場だが、2017年下期に入ってから過剰供給と不動産価格高止まりによって停滞傾向となっている。

まず住宅総戸数については、2017年は前年から2.5%増となる5,428,053戸となっており、2018年には5,500万戸を超える見通し。特に2016年は前年から38万戸もの増加で大きく伸びている。また人口増加も続いているので、供給戸数はまだ増加を続けていくだろう。

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住宅種類別シェアでは、2~3階建てのテラスハウスが22.0%、平屋テラスハウス18.8%となっており、テラスハウスだけで全体の4割を占めている。コンドミニアムやアパートについては14.9%だけとなっており、こうした集合住宅はKL市などの都市部に集中している。やはり、マレーシア人の憧れは、コンドミニアムよりもテラスハウスのような土地付きの物件であると言える。ただ、新規物件では平屋のテラスハウスはあまり目にしなくなったので、今後、平屋だけは市場シェアが縮小していくと思われる。

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州別では、セランゴール州の住宅戸数が国内最大の1,494,222戸。これは全州の27.5%に当たり、またKL市内の総住宅戸数の約3倍にもなる。セランゴール州ではまだ大規模な住宅開発が進んでおり、住宅戸数はまだ増加していくだろう。同時に、KL市内或いはセランゴール州への通勤圏としてネグリ・センビラン州での住宅開発も大きく増えている。住宅価格も首都圏のクランバレーよりも比較的安価であり、十分な広さが魅力的となっている。

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2010年を100とした住宅価格指数では、2017年第2四半期まではほぼ右肩上がりで上昇続けていることが分かる。しかし、2017年第3四半期から横這い、或いは下落の傾向が見られており、市場がスローダウンしているとの見方が広がっている。2018年5月時点でも、状況が好転しているようには感じない。セランゴール州にある私自身の持ち家の不動産価格を調べてもらったが、1年前の価格と比較すると、やはり少し落ち込んできている。また、近所の方が売り家の広告を出しているが、数ヵ月待っても全然買い手が見つからないと言っている。3年程前であれば、同じ通りの家が売り家の広告を出すと直ぐに買い手が見つかっていたが、値下げをしても中々売れなくなってきている状況にある。不動産エージェントの知人も以前ほどの羽振りではなく、明らかに不動産市場が停滞していることを実感している。

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実際、売れ残り物件の推移を見ていくと、2017年は24,728戸、金額ベースでRM156億が売れ残りとなっている。この数字、2014年の売れ残り物件数で比較すると2.8倍にもなる。州別では、不動産開発を積極的に進めてきたジョホール州が全体の19.2%を占めており、物件別だとコンドミニアム/アパートが38.4%、テラスハウス38.4%となっている。価格別では、RM50万~100万の少し高級な物件が全体の22.7%を占めている。こうした状況を受け、連邦制は2017年12月に高額不動産開発の許認可を一時凍結する決定を出している。

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一般的な消費者は、世帯所得の上昇率よりも不動産価格の上昇率が高すぎること、併せて燃料価格上昇による物価上昇や補助金削減によって生活が以前より苦しくなったと感じており、不動産購入は慎重姿勢になっている。ナジブ政権下では、経済指標上はマクロ経済が好調であることが強調されていたが、一般消費者は景気が良いとは感じておらず、それが住宅市場にも大きく影響が及んでいたと言える。それでも、住宅購入を購入したい消費者はまだ多数存在しており、高級物件は過剰供給となっているものの、中間所得者向け住宅は不足していると感じる。今後、住宅価格がある程度落ち着き、マハティール政権下で世帯所得が目に見えて改善されれば、不動産市場は再び活発化すると考える。


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希望連盟がマニフェストを発表

今年は6月24日にマレーシア議会が任期満了を迎えるため、遅くとも8月22日まで総選挙が実施される。明確な時期はまだアナウンスされていないが、4月3週目か5月初旬など様々な噂が飛び交っており、総選挙に向け与野党共に徐々に動きが活発化している。また、アンワル元副首相の釈放が6月8日確定と発表されことから、その前に実施される公算が高そうでもある。

前回の総選挙では、得票数では与党連合を上回った野党連合だが、議席数では222議席中与党連合が133議席を獲得し、政権維持をするに至っている。前回が僅差の結果だったため、今回の総選挙では政権交代が実現するかどうかが注目されている。

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そうした中、マレーシアの野党連合・希望連盟がマニフェストを発表、100日以内に実現する10の約束と、5年内に実現する60項目で構成されている。全文がマレー語なので詳細は不明だが、現地英字新聞に記載されている内容を纏めると以下のような内容となっている。



まず100日以内に実現する10の約束として、

* GSTを廃止し、生活費削減の措置を講ずる
* ガソリン価格安定のために補助金導入
* FELDA入植者の債務を廃止
* 主婦向けEPFスキーム導入
* 全国の最低賃金平準化と引き上げ
* PTPTN返済の軽減。RM4,000以下の収入に対して返済延期。ブラックリストポリシー廃止。
* 1MDB、Felda、Mara、Tabung Hajiのスキャンダルに関するロイヤル委員会の結成。 政府機関の改革。
* サバとサラワクの権利を尊重。1963年マレーシア連邦成立協定見直しについて議論。
* プライベートクリニックからの治療を受けるB40グループにおいて、RM500までの資金を設定することが含まれるSkim Peduli Sihatの設立。
* 全ての大型案件の再検討。外国企業が獲得した大規模プロジェクトの詳細調査を開始。

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5年内に実現する60項目は、

* マレーシアの経済成長と競争力を促進
* 100万人分の新規雇用創出
* マレーシア人労働者優先、外国人労働者削減
* 手頃価格の住宅100万棟建設
* 高速道路通行料を段階的に廃止
* 公立大学の無料化を保証
* 最低賃金RM1,500を保証
* BR1M維持
* 主要機関の改革
* 汚職の根絶
* 2018年から連邦政府首相と州首相の任期を2期に制限
* 公共サービス強化
* サバとサラワクを分権化
* 穏健で尊敬されるマレーシアの創造

希望連盟はマハティール元首相を首相候補とすることを決定したこともあり、マニフェストは現実的な内容となることも予想されていたが、ナジブ政権での汚職や腐敗対策に重きを置いた内容のよう感じる。経済面では、国民経済負担軽減策が出ているが、前回総選挙で人民連盟が示した高速道路無料化や公立大学の無料化などを踏襲している項目も残っており、個人的な印象では目新しさがないようにも。

周辺のマレーシア人に話を聞いてみると、中国系の多くは与党連合支持はかなり少なく、ナジブ政権そのものに批判的な立場を示している人が多い。多分、中国系の票は前回の総選挙と同様に『Chinese Tsunami』が再来するように思われる。それでも、一部の事業経営者においては、国家運営をした経験のない野党連合が政権を取って果たして上手く国政をマネジメントできるのか不安を抱いており、現状維持を望む声もある。こうした不安を拭うために、希望連盟は首相経験のあるマハティール元首相を首相候補としているが、92歳という年齢的な問題はかなり大きい。
マレー系についてはあまり本音を語らない人達が多いが、知識層においてはナジブ政権を見限っている人達が多い印象がある。対して、ナジブ政権は公務員や低所得者、農業従事者等に補助金を出すことで人気を維持しており、政権交代となればこうした収入源が絶たれるといった危機感から、地方に行くほど現状維持を望んでいる人達が多いと言われている。

確かに、ナジブ政権においては公共交通機関拡充などの大型プロジェクトの履行、経済活動についてもGDP成長率は5%超を維持しているし、財政赤字も計画通りに削減が進んでおり、数字上では経済政策は順調であると言える。ただ、それに反して物価の上昇など国民の多くは生活が厳しい状況が続いていると感じているようであり、それがナジブ政権批判に繋がっている。また、国民はうやむやにされた1MDBの不正資金問題を忘れた訳ではないし、不動産購入や宝飾品収集といった贅沢三昧を噂されているロスマ・マンソール夫人に対する嫌悪感も無視できない。

では、ナジブ政権の支持率がどうなっているかというと、以前であればムルデカ・センターが定期的に政権支持率などの世論調査を行っていたが、ナジブ政権の支持率低下が顕著となったころから同調査は実施されておらず、現状把握ができない状況となっている。唯一、直近では今年1月にマラヤ大学が実施した次期首相に関する世論調査を実施しており、ナジブ首相が21%で首位となっている。ただ、マハティール元首相が18%と3%差で続いており、今後の選挙活動の内容次第では逆転の可能性も皆無ではないだろう。

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とは言え、今回の選挙は希望連盟とPASが共闘しないことから、希望連盟とPASの野党2陣営が与党連合へ挑む構図となり、野党票が割れてしまう。その為、新聞報道などは総合的には与党連合優位との論調が大勢を占めている。いずれにしても、今年の総選挙はマレーシア国民にとって大きなターニングポイントであろうし、ナジブ政権下での経済政策の成功をアピールする与党連合が優位を維持できるのか、それともマハティール元首相を前面に出し、現政権の汚職追求を目指す希望連盟が躍進するのか注目される。

マレーシアの4Gはミャンマーやベトナムより低速?

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2018年2月にモバイル・ワイヤレスネットワーク調査分析会社『OpenSignal』が、2017年第4四半期における世界各国の4G・LTEサービスを比較した報告書をリリースしたが、マレーシアの通信速度がミャンマーやベトナムよりも低速であったことが国内で話題となった。

調査では世界88ヵ国を対象としており、4Gのカバーエリアと通信速度がランキング形式で纏められている。アセアン域内においては、シンガポールの4G速度が44.31Mbpsと最速、カバーエリアではタイの85.58%が最大となっている。マレーシアは4G通信速度が14.83Mbps、カバー率74.88%となっている。4Gカバー率はタイとシンガポールに次ぐ位置づけだが、4G通信速度は確かにミャンマー(15.56Mbps)とベトナム(21.49Mbps)を下回っているし、すぐ背後にカンボジア(13.90Mbps)が迫っている。

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マレーシアの経済規模から言えば、マレーシア人がこの結果に不満を抱くのは当然であり、それは政府の政策非難ともなっている。これに対して、ジャイラニ・ジョハリ副通信マルチメディア相は、各国ともアプローチ方法が異なるため単純に比較することは適切でないと指摘、更にマレーシアでは通信速度よりもカバー率に重きを置いていると言及している。

次に、2017年第3四半期における携帯キャリアー別の4Gカバー率と下り通信速度を見ると、YTLが提供するYes LTEが大きく躍進、カバー率93.18%は国内最大であり、4G通信速度(下り)は19.03Mbpsを記録している。また、通信速度全体(下り) でも、Yesは19.03Mbpsで国内最速となっている。

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数年前に知人がYesを使っていたが、首都圏であっても接続できない、速度が遅いとの理由から不満を漏らして解約していたが、最近になって改善されてきたのだろう。私自身はMaxisを使用しているが、他の携帯キャリアーと比較しても通信品質が安定しているし、速度も速いと感じる。首都圏内であれば概ね50Mbpsで利用できているし、場所によっては100Mbps超を記録することもある。マレーシア全土だと通信速度に差が出てしまうだろうが、都市部だけで測定すればかなりの速度が出ているのではないだろうか?

以下は、サイバージャヤと自宅のアンパン地区で測定した結果であるが、いずれも100Mbps超となっている。なので、私自身は都市部での利用においては、携帯端末であってもストレスを感じることはあまりない。

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更に面白いデータとして、Maxisが2017年第3四半期におけるモバイルデータ使用量を示しており、月平均で7.4GBを使用していることを明らかとしている。これは前年同期で41%増の数字であり、マレーシア人の携帯端末利用が高まっていることを理解できる。実際、マレーシア国内においても日本と同様に、若い世代ではパソコンよりもスマートフォンなどの携帯端末の利用頻度が高いし、パソコンそのものの需要も低下している。動画視聴やゲーム、SNSなど全てスマートフォンに依存しており、10代~20代では月収を上回るスマートフォンを所有している人も珍しくない。当然、データ利用量も多くなるが、これに対する出費は惜しまない傾向にある。

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また、こうした傾向から携帯キャリアー各社においても、通話やテキストメッセージのSMSは無制限として、データ量で差別化を図る戦略を採っている。ポストペイドであれば10GB以上のデータ量が一般的になっているし、キャリアーによっては特定の動画サイトやSNS、或いはアプリのデータ使用を無制限を提供している。さらに、TM社のunifi (旧Webe)はRM79で通話、SMS、データ量無制限というパッケージを出しており、携帯キャリアー間での競争が激しくなってきている。この他にも、MVNOのTune Talk、XOX、ookyo、redONEなども多彩なサービスを提供しており、消費者の選択肢が広がっている。



マレーシアの自動車産業動向 2018年2月

マレーシア自動車協会が発表した数字によると、2017年の国内自動車販売台数は576,635台となり、2016年比で3,489台の減少となっている。リンギ安の影響で各社値上げを実施した2016年以降は60万台を下回っており、市場は冷え込んでいる状況と言える。ただ、そうした中にあって、SUVの販売台数は前年比30.4%増を記録しており、各社とも車種の充実を図っている。特に、ホンダにおいては以前から発売していたHR-Vに続いて、昨年はBR-Vと新型CR-Vをリリースしており、好調な販売を記録している。プロトンもGeelyのBoyueをベースとしたSUVを今年中にリリースするとしている。
これまでは非国民車であれば1.5LクラスのVIOSやCITY 、ALMERAといったセダンが売れ筋であったが、このトレンドが徐々に変化してきているのだろう。2018年の販売台数については、前年比2%増となる59万台を予想しているが、マレーシア人の消費者心理としては値上げが続いている状況では買い控えが続くと思われる。

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次に各社の販売実績を見ていくと、プロドゥアが市場シェア36%となる204,887台を、続いてホンダが109,511台(19%)、プロトン70,991台(12%)、トヨタ69,492台(12%)、ニッサン27,154台(5%)となっており、上位5社は国民車メーカーと日系メーカーの構図となっている。

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まずプロドゥアについては、2017年11月にリリースした新型Myviが同社の販売を牽引、このクラスで全車にプッシュスタートとLEDライトを、また上位モデルにはアイドリングストップや追突防止システムを搭載し、燃費性能も32%向上するなど、大きな変更を行っている。結果、2018年1月単月の実績ではMyviは全体の51%に当たる9,029台を販売、国内市場シェアでもプロドゥアは40%を達成している。プロドゥアとしては、2018年の販売台数を前年比2.0%プラスとなる209,000台を見込んでいるが、好調なMyviによってこれを大きく上回る可能性が高いと思われる。





次に第一国民車であるプロトンについては、2017年5月に吉利汽車の親会社である浙江吉利控股集団がプロトンに49.9%を出資することで合意、同社の傘下に入って企業再建を進めている状況にある。9月には経営陣も刷新され、中国・東風汽車出身の李春栄氏がCEOに就任、早速プロトン再建に向けた10ヵ年計画が発表されている。

・ 2020年の生産台数を20万台、2023年に30万台以上、2027年に40万台
・ 国内の市場シェア30%、アセアン域内で10%とし、域内で上位3社の自動車メーカーを目標
・ 部品調達コスト30%低減
・ 2018年末に吉利汽車の品質基準満足
・ 輸出比率を25~30%に高める
・ 5万人の雇用創出、売上高RM 2,400億



1995年には市場シェア61%であったプロトンだが、2017年には12%にまで縮小している。以前の水準に回復することは不可能だろうが、再生するにはコストと品質の改善は急務だろう。ただ、私自身、買収後にプロトンのサービスセンターに行くことがあったが、スタッフの危機意識は薄いように感じられるし、サービス品質も以前と同様にあまり高くなかった。普通に売れる自動車を作ると同時に、サービスセンターの改善も必要だろう。

非国民車として首位のホンダについては、2017年の販売台数はこれまでの新記録となる109,511台を販売、昨年にリリースしたCITYとBR-Vがかなり貢献している。また、ホンダについてはSUVの選択肢が多いのが特徴であり、市場のトレンドに上手く合致している。ただ、顧客サービス指数が国民車メーカーを下回る最下位に転落。内訳を見ても、サービスイニシエーションとサービスアドバイザー、サービスファシリティの評価が圧倒的に低い。この評価に対する専門誌などの見解を見ると、急激な販売台数増加によって一時的に十分な対応ができなくなっているだけとしている。私自身もホンダの自動車を所有しているが、定期点検などは電話予約しても数週間待ちとなってしまう。とは言え、接客態度やサービス品質そのものについては特に不満はない。

こうした評価を受けてか、ホンダは2018年の販売目標を昨年の実績と同じ109,000台と設定するとともに、以下のような改善策を発表している。

・ 90分のファーストサービス提供
・ ディーラーシップ100ヵ所体制
・ アフターセールスポータルサイト開設
・ 自動車関連の大学とのパートナーシップ
・ コールセンターの営業時間延長

トヨタについては、2017年の販売台数は少し回復しているものの、2012年と比較すると値上げの影響から下降傾向にある。他の日系メーカーよりも車種は多いが、国内生産能力の問題から一部車種はCBUとなり、価格競争力にも影響しているのだろうか。待望論のあったC-HRの正式販売も発表されたが、CBUということで価格はRM 145,5000とかなりの高めで、カムリ2.0とあまり変わらない価格帯。他メーカーの同クラスだと、ホンダHR-VがRM 98,060、BR-VはRM 83,210、マツダCX-3がRM 131,000となっており、割高感は否めない。マレーシア人は周辺諸国と比較しても価格に敏感な国民であるから、苦戦することが予想される。
ただ、昨年にトヨタはRM18億を投じてBukit Raja新工場建設を発表、最大で年間10万台の自動車生産が可能となり、国内生産比率を高めることが可能となり、巻き返しが期待されている。

今年は、『新国家自動車政策2018』が発表される予定とされている。これまでは、プロトン保護を柱とした政策が中心であり、突如のハイブリッド車優遇措置撤廃など不可思議な内容もあったが、どのような内容が発表されるか注目されている。


マレーシア市場での日本企業の評価

昨年は、現地企業の調査・交渉や現地日系企業と取引しているローカル企業との間に入って問題解決の折衝をいくつか手掛ける機会に恵まれました。

しかし、業務を遂行していく中で、日本では誰でも知っている大手企業がマレーシア国内の業界内において混乱をもたらし、過去の経緯から呆れられたり怒り心頭の現地企業が多数いることが明らかになっています。例えば、ブルサマレーシア上場企業のマネージメントと業務提携について協議している際に、過去に日本企業とプロジェクトを立ち上げたが期待した成果が得られず、そのまま放置状態にされていること。また、大手日系企業の依頼で資材調達を約束された現地中小企業が、現地での設備購入や提携先の紹介、日本での打ち合わせなどでかなりの投資をしたにも関わらず、その後約束が反故にされ、会社が危機的状況に陥ったこと。中小企業にとっては社運を賭けた事業であっただけに、そのダメージはかなりのものだったようです。他にも多々ありますが、全体的に共通しているのは、日本企業は現地企業に声掛けだけして実際には何も行わないし、その事に対する意思決定遅く、更に多数の競合にも話だけ持って行って業界内に混乱を招いており、結局何がしたかったのか分からなかったという話を現地企業の経営者から耳にしています。

私自身、市場・業界調査業務やコンサルティングという仕事柄、日本企業とマレーシア企業の間に入ることが多いですが、現地企業から最も多い苦情の一つは、上から目線でくる日本企業となっています。私たちは先進国から来ている、或いは世界中で知られている大手企業という驕りかも知れませんが、相手の都合や意見を無視した一方的な要望・要求を突き付けたり、してやっている的な態度で接する企業担当者もいるようです。他には、事業として立ち上がるまでに異常なほど時間を要するといったこともよく言われます。

1990年代は、プラザ合意の急激な円高の影響もあり、多くの日本企業が安価な労力を求めて東南アジアへ進出してきました。当然、マレーシアにも多くの製造業が日本から進出、第一次産業中心であったマレーシアは第二次産業へ転換し、急速な経済発展を遂げることに成功しましたし、日本企業の技術力や経営体制に対して高いリスペクトがあり、日本企業との仕事であれば歓迎される環境が形成されていました。

そして2000年代に入ってからは、マレーシア企業は労働集約型ではなくハイテク産業の誘致に政策を転換、更に近年は第三次産業が国の経済をけん引する産業構造になってきています。それに伴い、国民所得も大きく伸びてきており、多くのグローバル企業を輩出、事業規模だけでいえば日本の大手企業を凌駕する企業も輩出されています。

しかし、一部の日本企業では、相変わらずマレーシアは発展途上の小国であり、一つ格が違うといった認識でいることが伺えます。そして、悪い事例ほど業界内に及ぼす影響力は強く、あたかもそれが日本企業全体であるように見られてしまいますし、それによって日本企業の信頼そのものにも波及しています。そのため、現地では以前ほどに日本企業をリスペクトする姿勢は見られませんし、逆に日本企業との取引は難しいと敬遠する企業も増えており、欧米諸国の企業へ重点を置いている傾向が見られます。

マレーシアは親日国として知られていますが、こうした変化が生じていることは理解しておく必要があると思います。

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